ランチで憧れのカウンターデビュー  大銀座から始まる東京小旅行
#お寿司、おまかせで! (後編)

FOOD 2023.05.06

銀座といえば寿司。2022年の後半頃から、銀座に寿司店の出店が増えている。それは街に活気が戻ってきた明るい兆しと言えるかも。新店舗の一つの傾向は、カウンター席中心の小体な店構えで、ランチにお値ごろで満足度の高い「おまかせ握り」を出すこと。ちらし寿司もいいけれど、大将と会話をしながら「おまかせ」を味わうのも大人の楽しみ。コース8,000円台までの、通える5軒を厳選!

前編はこちら

すし繁(はん)

ランチおまかせ握りコース (7,000円)

本日の握りより、スミイカ、イワシ、赤身のづけは和がらしで、桜鱒、コハダ、海老ミソが隠し味の車海老、甘鯛、煮ハマグリ、しめ鯖、ノドグロ、中トロ、煮穴子、ウニの軍艦巻の13貫、玉子焼。長崎産ノドグロ「紅瞳」は熟成してむっちり食感を引き出す。最後にシジミ汁と自家製カスタードを添えたイチゴ付き。

圧巻の充実度とお値ごろ感!
あずま通り沿いのビルの地階。白暖簾がかかった小体な入り口の引き戸を開けると、そこにはL字型の檜のカウンターが伸びる。カウンター8席のみの空間は数寄屋造りの端正な仕上がりで、数々の寿司の名店を手がける工務店の仕事だと聞き、納得する。

寿司の道に入って25年、店主の河野容得補さんは昨年10月、念願の銀座に自身の城を築いた。銀座の有名店をはじめ外資系の高級ホテル、香港の寿司店も経験。海外客の味の好みやコミュニケーション術も学び、銀座出店の目標へ向けて腕を磨いたという。

ランチは「おまかせ握り」7000円コース一本。これがすこぶるコスパがいいと寿司好きの間で評判だ。先付、握り13貫、まるでスイーツのような玉子焼、お椀、水菓子の流れ。豊洲の仲卸の直営ゆえ、魚の質も確かだ。

シャリは粒の大きさと美しさで知られる新潟の「新之助」。赤酢と白酢を合わせたキレのいい酸味とともに口中でホロリとほどける。木桶仕込みの天然醸造醤油を使い、甘鯛の骨を煮出した煮切りは、香りよくまろやかだ。バフンウニの軍艦巻まで入る大充実の13貫は、河野さん曰く「自分の寿司を知ってもらう名刺がわり」。その手加減なしの全力投球がなんともうれしい。福島の方言がチャーミングな店主の胸を借り、安心して銀座の寿司デビューを!

すし 徳うち山

すし会席コース(昼) (6,600円)

料理は先付、焼き胡麻豆腐、お椀、揚物、お造り、焼物の全6品。握り6貫は、この日は赤身、中トロ、かすご鯛、ヒラメ、平貝、穴子、そして玉子焼。トロたくの小丼と漬物、味噌汁、絹のようなプリンと充実の構成。和食に合う仏ワインが揃うので、ぜひ白と。グラス1,500円。作陶家・佐藤和次氏の織部の付け台も美しい。

美しい日本料理と握りの共演。
東銀座の日本料理店〈徳うち山〉が、昨年10月、寿司会席の店に生まれ変わった。店に立つのはオーナー・工藤淳也さんが営む〈銀座くどう〉で和食を、六本木〈鮨 由う〉で寿司を学んだ若き料理長・黒田直輝さん。構成は看板の焼き胡麻豆腐をはじめ〈徳うち山〉ならではの四季を映した6品と、江戸前6貫。唐津や備前、美濃など優美な器も目を楽しませる。まさに割烹と寿司の“いいとこ取り”。誰かを誘って味わいたい、華やかで欲張りな「おまかせ」の形だ。

築地青空三代目

おまかせコース(昼) (8,800円)

本日の握りより、ヒラメの昆布じめ、スミイカ、〈フジタ水産〉のマグロより赤身、中トロ、トロたく。しめ鯖、煮ハマグリ、車海老、穴子。その日の仕入れにより品数の変動あり。自家製のガリは写真の白酢と赤酢の2種類あり、これも酒のアテになる。秋田「花邑」など本日の日本酒も10種と豊富に。1合1,320円~。

「おまかせ」に特化した先駆者!
寿司のイメージが希薄な丸の内で、予約必須の不動の人気を誇る一軒。理由は名物店主・佐野正志さんの存在だ。昼も夜もおまかせ8,800円一択で、店主が毎朝豊洲で仕入れる選り抜きの魚を“築地価格”で出すのが信条。寿司界の名人たちも信頼を置く豊洲のマグロ専門卸〈フジタ水産〉のマグロを花形に、自家製の牡蠣の燻製など一品料理も酒飲みのツボを突く。厚めの刺身、大振りのシャリもインパクト大。日々「おまかせ」の品質とコスパに磨きをかける店!

photo : Shin-ichi Yokoyama text : Yoko Fujimori

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