食いしん坊の娘がやはり食いしん坊の義母をエスコートしてきたのは? #母を連れて行きたい銀座の店 ウー・ウェンさんとFARO
特別な日に、母を連れて銀座に行こう。
銀座は母にとっても昔からのハレの街。
今日だけはちょっとお洒落して、贅沢に、行ってみたかった憧れの店へ。
格別な空間で、料理に舌鼓。
2人の会話がいつもよりも弾んで、普段言えないありがとうの気持ちも伝わる気がする。
ウーウェン「真佑からお招きなんて、 ほんとうにありがとう♡」
料理家のウー・ウェンさんちに来た井上真佑さんには、小さな企みがあった。「先生を食事にお連れしたい」。おかあさんと呼ばず、先生と呼んでいるのは、普段、ウーさんのクッキングサロンのアシスタントをしているからだ。ウーさんは食いしん坊で、高級店からB級まで、まんべんなく知り尽くしている。ビックリしてもらえるようなところ、ないかな、と案外悩んだ。そして見つけたのが、東京銀座資生堂ビル10階の〈FARO(ファロ)〉だった。先生は、〈資生堂パーラー〉はご存じでも〈FARO〉は案外ご存じないのでは。そう思って、お出かけ日和のうららかな春のある日、2人してやって来た。
「ここに来たのは、初めて。素敵なところね。日本じゃないみたい」とウーさん。作戦大成功である。真佑さん、してやったりと、ちょっとドヤ顔。
「先生が喜んでくださって、 私もすごくうれしいです」井上真佑
ここ〈FARO〉は、日本の食材や文化を核にオリジナリティあふれる鮮烈なイタリアンで知られる、ミシュラン一ツ星店。能田耕太郎シェフのパッションが込められた料理は、ピュアでやさしく美しい。最先端のヴィーガンのコースがあることでも知られる。デザートを担当するのは、昨年、フランス発のレストランガイド『ゴ・エ・ミヨ』で、ベストパティシエ賞を受賞した加藤峰子シェフだ。
ウーさんも真佑さんもおしゃれが好き、食べることが好き。3年以上のおつき合いゆえ、お互い、よくわかっている。一緒にお花を習っているという仲良しさんだ。銀座でデートってことで、2人ともおめかししてきた。真佑さんはウーさんにもらった素敵なブラウスで、ウーさんは長年愛用の黒のワンピースで。
シャンパーニュで乾杯したところで、「ブダイのカルパッチョ カンパリ風味」が登場。凜と美しい皿だ。続いて、「ぼたん海老のタリアテッレ」。アメリケーヌソースに、百合根、イタリアンパセリ、そして柚子胡椒。「おいしいねー♡」と顔を見合わせる2人。幸せな時間が流れる。メインは「メジナのソテー サフランソース あやめかぶと」。サフランは佐賀産だそうだ。
そして、真佑さんがどうしてもウーさんに味わってもらいたかったのが、ジャジャン!加藤シェフのスペシャリテ、「花のタルト」だ。ランチコースには入っていないのだが、真佑さんが特別にお願いしたものだ。色とりどりの花やハーブが花束のよう。「まぁ、なんてかわいいの!」とウーさん、目を見張る。実は、真佑さんもこれは初めて。加藤シェフの説明を聞いて、フムフムと頷く2人。「ありがとう」とウーさんも大満足。母と“新入り娘”の仲睦まじい銀座ランチデートは、大団円となった。