晩酌をもっとおいしく!娘と父で学ぶ『お酒の学校』 ビールの味わいに合わせた、最高のコンビニフードおつまみとは?~『お酒の学校』ビール編その2~
唎酒師の資格を持つ、日本酒大好き娘・伊藤ひいなと、酒を愛する呑んべえにして数多くの雑誌、広告で活躍するカメラマンの父・伊藤徹也による、“伊藤家の晩酌”シリーズが、さらに拡大!いつもと違ったお酒の楽しみ方やいままで知らなかったお酒の知識などを、お酒のエキスパートの方々に教えていただきます。今回は家飲みの代表格ビール編。後編は、ビールのスタイルを学びながら、それに合うおつまみ選びの法則を教えていただきます!
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色や味わいごとにちがうビールの種類「ビアスタイル」を知ろう!
ビールのおいしい注ぎ方を学んだ前編から引き続き、ビアジャーナリスト・フードペアリングインストラクターのくっくショーヘイにご登場いただきます!
後編は、一般的なラガービール以外にもたくさんあるビールの種類をマスターし、次にそのビールに合うおいしいおつまみとのペアリングの法則を知ることで、さらに家飲みがおいしくなることを目指します!
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くっくショーヘイ(以下、ショーヘイ)「日本酒に純米酒や純米吟醸といった種類があるように、ビールにも種類があるんですが、何種類あると思いますか?」
父・徹也(以下、テツヤ)「黒、ラガー、ペールエールで3種類…?」
娘・ひいな(以下、ひいな)「IPAもあるよね」
テツヤ「フルーツ系もあるね」
ひいな「15種類!」
テツヤ「8種類!」
実は、国内外合わせて150種類以上もあるといいます。このビールの種類のことを「ビアスタイル」と言い、年々、新しいスタイルが増えていっているのだとか。
とはいえ、150種類ものビアスタイルを覚えるのは大変ですが、スタイルは違っても、味わいが似ているものも。たとえば、黒ビール。見た目が黒くてローストした香りがあるものを黒ビールと一般的には言いますが、厳密には「スタウト」や「シュバルツ」などさまざまなビアスタイルを総称して使っている場合がほとんどなんだそう。
そこで、くっくさんは味の傾向別に大きく分類した、8種類のカテゴリー分けを提唱しています。
●8つのビアスタイル
淡色ラガー:なかでも普段飲んでる一般的なラガーのほとんどはピルスナーと呼ばれるビアスタイル。すっきりとした味わいで、香りもエールに比べるとおだやか。
淡色エール:IPA、ペールエールなど、クラフトビールの代名詞的存在がこちら。エール系は香りも味わいもふくよかで、ラガーに比べると飲みごたえがあるものも多い。
白ビール:ベルジャン・ホワイト、ヴァイツェンなど、色が白っぽくにごっている。苦味が少なめで、香りフルーティなタイプ。
琥珀色ビール:赤みを帯びたものやブラウン系の見た目。アルトやレッドエールなど、ビスケットやカラメル、ウーロン茶のような香ばしさを感じる。
黒ビール:一番知られているのはスタウト、ラガー系はシュバルツ、エール系はポーターなども。見た目は真っ黒! ローストしたフレーバーが感じられる。
フルーツビール:フルーツを使ったビール。甘み、酸味、フレーバーなどにフルーツを感じられる。最近は、ゆずを使ったものも多い。
長熟・濃厚系ビール:バーレーワインなど、アルコール度数が高くて、長期熟成された濃厚なビール。香りや味わいが複雑でゆっくり飲んで楽しめる。
個性派ビール:上記7つのどれにもあてはまらないもの。酸っぱかったり燻製風味がついていたり…なんでもOKな変わり種。
味わいの傾向に合わせて、おつまみをセレクトしてみよう!
8種類の味わいの傾向を学んだところで、コンビニでも簡単に手に入る5種(淡色ラガー、淡色エール、白ビール、琥珀色ビール、黒ビール)と、次はそれに合うおつまみを選んでいきます! くっくさんがおすすめする、コンビニで買ってきてすぐ食べられるもので手軽にペアリングを楽しむ「コンビニペアリング」を実践してみましょう!
くっくさん推薦のコンビニペアリングの食材を用意。それぞれのビールを飲んで味わって、そのビールに合うおつまみを選んでもらいます。父娘、それぞれまったく違う結果に!
ひいな「淡色ラガーって、ふだん飲み慣れているビールだから、何を合わせればいいのか迷うね」
テツヤ「牛塩ホルモン炒めとかね、居酒屋でふつうに頼む感じで選んでみたよ(笑)」
ひいな「うん、お父さんが好きそうなのばっかり(笑)」
テツヤ「ひいなは、スイーツ系を結構選んだんだね。あんこはちょっと…」
ひいな「黒ビールのコクとか香ばしさにどら焼きは合うかなと思って。あと自信があるのが白ビール×クラムチャウダー!」
テツヤ「俺は白ビールにはしめ鯖を選んじゃったよ。どっちもシーフードだけど(笑)」
(白ビール×しめ鯖を実食!)
テツヤ「これは合わないわ…。めちゃ後味に残るよ…」
ひいな「うん…ビール飲み込んだ後も、しめ鯖の存在感がすごいね。クラムチャウダーのほうは後味とすごくいい感じに溶け合ってる!」
テツヤ「琥珀色ビールにはスモークサーモンを合わせてみたんだけど、なんか引っかかりもせず、さらっと消えていったな…」
ショーヘイ「大手が出しているビールって基本的に大衆向けに造っているビールなので誰もがおいしく感じるバランスやライトめな仕上がりなものが多いんです。ですから、琥珀色ビールの特徴としては、キャラメル感やビスケット感を想像してもらえれば」
ひいな「だとしたら、フロランタンいい線いってるかも!」
(琥珀色ビール×フロランタンを実食!)
テツヤ「うん!?なんか変な苦味と酸味が出るな?」
ひいな「ほんとだね…。わかった!フロランタンは黒ビールと合う気がする。コーヒーみたいな感覚で」
テツヤ「確かに酸味のあるアイスコーヒーみたいな感じがしてきたよ」
父と娘、2人でも合う・合わないの感覚が違うように、くっくさんは前提として「人の数だけ正解がある」と話します。「マリアージュ」という言葉ではなく「ペアリング」と言っているのはそのため。人によって味覚も違えば、その日のコンディションも違ってきますし、同じ料理でも作っている人が違えば味は違ってきます。「これじゃなきゃダメ」という組み合わせはなく、あくまでも「本人がおいしいと思えばOK」。ですが、よりおいしいと思う組み合わせを見つけるための手がかりとなるのが、「ペアリングの法則」なのです。
組み合わせのヒントはこちら!ペアリングの4つの法則をマスターしよう!
「この法則を使うとおつまみ選びがもっと楽になりますよ」とくっくさん。
法則は下記の4つ。
①一緒の法則:香りが一緒、味が一緒、味の強さが一緒、濃い味には濃いビールなど、同じところを探して、合わせてみる方法。
例)色が濃いビール(麦芽を焦がしたもの)には、塩よりはタレのほうが合う。食材の色ではなくて、炒めた色、焼いた色など調理の色で合わせると良い。
②置換の法則:一般的によく見る「おいしい」組み合わせをヒントにしてみる方法。日常にたくさんヒントがあるので思い浮かべてみて。
例)レモンティを分解するとレモンと紅茶。レモンの香りと紅茶の香りは相性がいい。つまり、レモンの香りがするビールと紅茶を使った洋菓子は合う。
③味変の法則:甘み、塩味、苦味、酸味、うま味、渋み、辛味などの組み合わせによって生まれる、甘酸っぱさ、甘苦さなどのベストマッチを探ってみる方法。
例)苦いビールには甘みやうま味(出汁)を合わせてみると相性がいい。ラガービールに塩辛や出汁を使った和食など。
④対比の法則:温度差、味わいの差、のどごしの差など、ギャップを感じることで心地よいと感じるもの。いわゆる脂っこいものを食べたあとに水分をほしくなるのはリセット効果が働いている。
例)熱々の餃子とラガービール、苦いビールと甘いものなど。
これらの4つの法則のうち、どれかひとつでもOK。いくつか組み合わせればより親和性のある組み合わせを考えることができます。ペアリングで相性がよいものは、この4つのうち、いずれかの法則に当てはまっているはずです。
たとえば、2人が「合う!」と言っていた白ビール×クラムチャウダーは、まさに①一緒の法則。色が白で一緒、食感が一緒など共通点があるのがわかります。