街の良さもパンも充実の一途。埼玉・大宮の〈kico〉&〈Blanc à la maison〉/池田浩明のまだ見ぬパン屋さんへ。

FOOD 2023.03.01

「住みたい街ランキング」で上位にランクし、パンも充実の一途。緑多き氷川神社&大宮公園はパンを食べるのにうってつけ。さいたまスーパーアリーナのイベント後などに絶対訪れたい名店がそろう。パンラボ・池田浩明さんによる、Hanako本誌連載「まだ見ぬパン屋さんへ。」からお届け。

〈kico〉得意の食パンを広げた、いい素材のパンの可能性。

町の中をまっすぐな緑の道が貫く。約650本もの樹々が、聖域である氷川神社へ人々を導く、氷川参道の目の前。そこに埼玉県幸手の〈cimai〉がディレクションした〈kico〉がオープンしたのは昨年4月。なぜ大宮で新たなプロジェクトをはじめたのか。cimai=姉妹のひとり三浦有紀子さんは振り返る。
「ここを最初に見にきたとき、氷川参道がすごく気持ちよくて。店に来る人も、働く人も、みんないい気分でいられるだろうなと思ったのが、きっかけなんです」
三浦さんが得意とする食パンを中心に、それを使ったフルーツサンドや同生地のあんバターを展開。みんなが集まる場所にふさわしい、誰もが大好きなパンをそろえた。

フルーツサンドには農薬不使用のものなど生産者から届いた季節のイチゴや桃を。クリームとともに、食パンの衣装を着せて晴れやかだ。素材とパン、両者ともハイレベルなこんなフルーツサンドめったにない。「素材のおかげで、私たちパンが作れてるだけですから」
と姉の大久保真紀子さんと2人して笑う。いや、素材や生産者や土地の思いをパンで私たちに通訳してくれる2人はシャーマンのようだ。
ハイセンスであることは変わらないが、木のアンティークを置いた〈cimai〉と打って変わって、趣はより都会的。打ちっぱなしの床に、真鍮の窓枠やくすんだ鉄の陳列棚。ふんだんに光が差し込む大ガラスにそってカウンターがしつらえられ、静寂の中でパンが楽しめる。参道の樹々が作り出す厳かな雰囲気と相まって、気持ちも整う。

〈kico〉について

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住所:埼玉県さいたま市大宮区高鼻町2-1-1 Bibli 1F │ 地図
電話番号:048-776-9656
営業時間:11:00〜17:30
定休日:月、木曜
席数:6
氷川神社、大宮公園に向かう参道の途中。コーヒーも楽しめるカウンターあり。

〈Blanc à la maison〉パン屋からレストランと、おいしさを集めた店。

人呼んで「Blanc長屋」。手前から、フレンチ、パティスリー、パン屋と3軒が並んでひとつの〈Blanc à lamaison〉を構成する。2016年、虎ノ門で、ベーカリー併設のワインビストロを創業。料理人の大谷陽平さんとパン職人の和田尚悟さんの出会いによって生まれた新しいスタイルだ。
同じ厨房に料理人とパン職人がいて、さまざまな食材がある。それら刺激しあい、偶発的に出会って、料理のようなパンが次々と生まれてくる。

この日は「知床牛と菜花とグリュイエルチーズのタルティーヌ」。レストランで使用する貴重な「知床牛」の端材を有効活用、アドリブ的に旬の菜花と合わせた。パンは、グリュイエルチーズをなんと50%も入れた、ぷにぷにとした新食感のもの。さらに、地元・埼玉県岩槻のネギを使ったネギ味噌をソース代わりに。元料理人でもある和田シェフらしいクリエイションだ。
「普通のパン職人だったらやらないようなことをやりたいです」
トンカ豆を使ったクリームパンもテレビで大ブレイク。連日行列ができた。パンの最先端は、東京より、意外に大宮にあるのかも。

〈Blanc à la maison〉について

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住所:埼玉県さいたま市中央区上落合8-3-26 │ 地図
電話番号:048-708-0455
営業時間:8:00〜18:00
定休日:火曜、ほか不定休
2019年に東京・虎ノ門から移転。パン職人、料理人、パティシエが結集、パン、菓子、料理店を併設。

photo:Kenya Abe text:Hiroaki Ikeda

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