繊細に香りが調和する、新たな味覚の冒険へ。 毎月3日間限定!幻のデザートコース。新しいデザート体験が話題のレストラン〈UN GRAIN〉へ。
近頃にわかに増えているのが、デザートコースを楽しませる店。 今回は一流レストランで修行したパティシエ昆布智成が手がける〈UN GRAIN〉で、シェフズカウンター(4,090〜5,910円)をスイーツライターのchicoさんに体感していただきました。
香りを重ねて導き出す、食材の知られざる味わい。
「蜜柑」に「苺」......シンプルすぎるメニュー名に、いやおうなく想像を掻き立てられてしまうけれど、実際出されたお皿は想像をはるかに超えてきた。「柿」の一皿は柿×アボカド×いぶりがっこが前代未聞のフュージョン。口に運べばカリコリふわり。デザートで味わったことのない食感の中で、柿の素朴な甘さといくんこうぶりがっこの燻香がのどかに広がり、心地よい甘じょっぱさごとアボカドが優しく包み込んでいく。
「岩手のかっしがきいぶ甲子柿(燻し柿)を食べて、柿と燻製の香りの相性に気づいたんです。食感の楽しみと味のバランスからいぶりがっこを合わせてみました。それに柿はチーズみたいな油脂感とも合うので、アボカドクリームもいいかなと思って」と、シェフパティシエの昆布智成さん。〈ピエール・エルメサロン・ド・テ〉では、いち早くパプリカもわさびもお菓子に使っていた彼だけに、自由な素材使いはお手のもの。
一見突拍子もなく思える組み合わせも全てこんな風に、食材を生かすべく緻密に計算して生み出されている。だからインパクトがありつつ食べると違和感なく、それどころか、おなじみの果物の知らなかったおいしさに出合わせてくれる。「洋梨」の皿の香りの重ね方も見事。昆布シェフはラ・フランスの「青み」に着目、ディルとミントで作ったハーブオイルを纏わせることで、青みを清々しさとして表現してみせた。さらに柚子の黄色い爽やかさも添えることで、清爽はどこまでも奥行き深いものに。一皿に湧き立つ香りが次々と重なり、最高に調和する一瞬を味わう。これこそアシェットデセールの醍醐味!
1.蜜柑
ジャスミンのブランマンジェにみかんのマーマレードとコンポート、栗をのせて。各所にライチを香らせることで全体が格段に調和。華やかな香りの中で栗がほっこり感を添える。
2.柿
アプリコット香るアボカドと柿のクリームに、いぶりがっこ、真空冷凍して完熟感を醸した柿を、塩味チュイル、日本酒ジュレと。甘いコースの中でうれしいサラダ感覚の皿。
3.洋梨
柚子チーズケーキに、ディルとミントで作ったハーブオイルで和えたラ・フランス、牛乳アイス、クランブル、メレンゲ。さらにハーブと柚子を散らして、食感も香りも鮮やか。
4.苺
ティムットペッパー香るイチゴに、赤い果実香を持つ〈カカオハンター〉の「シエラネバダ」のガナッシュ、〈ウーフ〉のアールグレイのアイス。イチゴチュイルとシソの葉と一緒に。
5.小菓子
この日はパッションと杏のパートドフリュイ、ヴィエノワショコラ、土佐ベルガモットのチュイル。コーヒーor和紅茶(アッサムティーに似た高知県「べにふうき」)と。
*価格、メニュー共に回により異なります。
〈UN GRAIN〉
ミニャルディーズの人気店でありつつ、毎月3日間のみ月替わりのデセールコースを開催(不定期)。要予約、会員限定(会費無料。電話で仮登録後当日入会可)。
■東京都港区南青山6-8-17 1F
■03-5778-6161
■11:00〜19:00 水休
■3席/禁煙
Navigator/chico(ちこ)
スイーツトレンドに精通し、記事の執筆や企画を行うほか、ギフトセレクトショップやECサイトのスイーツ監修も。共著に『東京最高のパティスリー』。
(Hanako1181号掲載/photo:MEGUMI text:chico)