東京にもファン多数。 札幌・狸小路のレストラン〈GRIS〉、ベテラングルメライターをも魅了する理由とは?

FOOD 2019.12.12

北海道札幌にある〈GRIS〉は東京にも多数のファンが。清潔感あふれるやさしい料理に、すっかりファンになったPさん。「誰もがまたすぐに訪れたくなる、ほんとうにいい店でした」

“素敵に軽やか”な料理の数々。

炙りさんまのせいろご飯 1,200円。だしと返しで炊いたご飯に皮目のみ焼いたさんまをのせ蒸したもの。
炙りさんまのせいろご飯 1,200円。だしと返しで炊いたご飯に皮目のみ焼いたさんまをのせ蒸したもの。

あれれ、消えた。さっき食べたはずの「炙りさんまのせいろご飯」がどっかに。しょうがないなぁ、麺食べちゃおうか……なぁんて気になる、ここ〈GRIS〉の料理。

余市の水タコとシャインマスカットの和え物 1,050円。コラトゥーラ(魚醤)入りのドレッシングで。
余市の水タコとシャインマスカットの和え物 1,050円。コラトゥーラ(魚醤)入りのドレッシングで。
カリフラワーのフリットの黒酢あん 980円。カリフラワーの新しい一面を知る一品。フリットうまし。
カリフラワーのフリットの黒酢あん 980円。カリフラワーの新しい一面を知る一品。フリットうまし。
ピスタチオのプリン 500円。お皿かと思う人続出。緑の蒸しプリンはクセになる。意外とたっぷりの量。
ピスタチオのプリン 500円。お皿かと思う人続出。緑の蒸しプリンはクセになる。意外とたっぷりの量。

満足感はあるのに、するするっと吸収されて、いつの間にか消えてしまう。素敵に軽やかなんである。

夢を見ているような気分になるお店。

カリカリと削ったような看板がしゃれてます。
カリカリと削ったような看板がしゃれてます。

札幌・狸小路の古いビルの4階。とことこ上がって辿り着く。食いしん坊仲間からさんざん話を聞かされ、まだ行けてない〝劣等感〞を抱えて生きてきたが、へへん、やっと来たぜ。ドキドキしながら扉を開けて中へ。

ウッディな空間の要所要所に白が効いている。
ウッディな空間の要所要所に白が効いている。

この一歩は小さいが、私という人類にとっては大きな一歩だ。と浮かれていたが、この店の澄んだ静けさに、気持ちがすっとなだらかになった。小野城碁さんが奥様の理恵子さんと2人で営むこの店には、夢を見ているような不思議な浮遊感がある。満席でにぎわっているのに空気はピュアなままなんである。

白い器のコーナー。器はついつい買ってしまう。
白い器のコーナー。器はついつい買ってしまう。
ハンガーも白。白で統一感を出すインテリア。
ハンガーも白。白で統一感を出すインテリア。
古い棚や器を上手にとり込んだキッチンの中。
古い棚や器を上手にとり込んだキッチンの中。
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大きな窓から差し込む光を受けて、キッチンに立つ城碁さんのシルエットが浮かび上がる。次々と注文をこなす彼のまわりを、やさしい風が吹く。

タイマーは素材別にかけるので、数が必要だ。
タイマーは素材別にかけるので、数が必要だ。

信頼のおける農家から届く野菜を見極め、それぞれ、ふさわしい火入れをするために、調理台の脇にはタイマーが5つ。これだけで丁寧な仕事ぶりがうかがえる。

城碁さんは学生時代から、「なるべく長くふらふらしたかった」。アルバイトで叔父の割烹を手伝ったりもしたが、カナダ・バンクーバーで大学へ。しかし、日本のことを知りたくなって1年で帰国。札幌の中国料理や創作料理の店で働いたのち、店を開くことに。「できることをやってきただけ」というが、こうなるべく、道が敷かれていたに違いない。そうか、中華も学んだから、メニューにしゅうまいや今日の春巻がある。

新しい料理は「うちの人がおいしいと言ったものしか出さない」と城碁さん。横で、理恵子さんが笑う。いいね、この雰囲気。明日もあさってもここにいたい。すみません。仕事、しばらく休みます。

〈GRIS〉

大根のたまり漬け 350円、野菜のピクルス 450円などの作りも丁寧。滝川産鴨の焼き浸し 2,400円などもぜひ。
■北海道札幌市中央区南2条西8-5-4 4F
■011-206-8448
■15:00~21:30LO(日祝20:00LO) 火、第1月休(不定休あり) 
■18席/禁煙

(Hanako1179号掲載/photo : Norio Kidera text : Michiko Watanabe)

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