Aぇ! groupの佐野晶哉さん「夢中でいられるのも才能。無邪気な“好き”に導かれて。」
映画『トリツカレ男』で佐野晶哉さんは一度は“ 邪魔 ”に思えた幼い日のミュージカル経験を軽やかに解放し、“ 好き ”に夢中であり続ける主人公の姿に声を重ねた。声と人生が響き合う、彼の軌跡。
photo_MEGUMI styling_Katsuhiro Yokota(YKP) hair & make_Nao Hanai(JOUER) text_Hazuki Nagamine
佐野晶哉
さの・まさや/2002年3月13日生まれ、兵庫県出身。アイドルグループ・Aぇ! groupのメンバー。出演作に、映画『か「」く「」し「」ご「」と「』、ドラマ『Dr. アシュラ』など。今後、映画『おそ松さん 人類クズ化計画 !!!!!?』、連続テレビ小説『風、薫る』がある。
「夢中でいられるのも才能。無邪気な“好き”に導かれて。」
声優は2度目。初めての声優業で思いがけない楽しさが心に刻まれた。佐野晶哉さんは再び、渇望していた声の世界に戻ってきた。
「舞台やドラマとも違う、マイクの前での芝居。細かい息づかいや小さな感情の揺らぎでキャラクターが生きるかどうかが決まる。責任感もありましたけど、繊細でしびれる緊張感にすっかり夢中になってしまって。声の仕事をもっとやりたい、終わってしまったのが寂しいほどで」
その〝寂しさ〞が、思いがけず次の出会いを呼び寄せた。

「今回のお話をいただいたときは即答。すぐにでも挑戦したいと思っていた夢が現実になった瞬間でもありました」
原作小説を読んで感じたのは「切なさと優しさが同居する物語」。佐野さんが声で命を吹き込んだのは、〝トリツカレ男〞と呼ばれる青年・ジュゼッペ。何かに夢中になるとほかのことが一切目に入らない純粋な性格の持ち主だ。演じる役への愛着は、自己との共鳴から生まれた。
「僕も何かにハマると形から入るタイプで、とりあえず道具をそろえて知識を吸収していく。満足したら急に手放してしまうところもあって(笑)、ジュゼッペの熱中の仕方や癖に共感できる部分がたくさんありました。可愛げのあるキャラクターだけど、何かにとりつかれたときの異常なまでの愛をどう声や歌で届けるかが難しい挑戦でした」
一方で、作品を通して、佐野さんが長く抱えていた葛藤から解放されるきっかけも訪れた。
「ミュージカルで育んだ歌い方や芝居の大きさは、映像の世界ではオーバーになりがちで、切り離さないといけないと必死に抑えていました。でも今回は逆で、自分が培ってきたことを全面に出していい現場と出会えた。面に出していい現場と出会えた。ずっと消そうとしてきた自分の一部を、肯定できたんです」
その表情はとても晴れやか。今、仕事を離れた日常でも、夢中を謳歌できる時間があるという。
「ピアニストの友人と歌がうまい友人と、よく3人で集まるんです。夜中にカラオケに行くくらいのノリで楽譜を探して、僕はギターを弾いて一緒に歌う。それがめちゃくちゃ幸せな時間です。誰に見せるわけでもなく、ただ、夢中で遊ぶだけ。そういう瞬間こそが宝物です」
記憶のなかの旅・食
「年始恒例の家族旅行で台湾へ。市場を歩いているときに出会ったレンブという台湾フルーツがおいしかった!祖母が特にどハマりして、高齢だし市場を歩くのはしんどいだろうに、『もう一回食べる!』と一人で出かけるほどトリツカレてました(笑)」
いしいしんじの原作小説をミュージカルアニメ化。何かに夢中になるとほかのことが目に入らなくなるジュゼッペが、思いを寄せるペチカの心配事を解決しようと奮闘する。
声の出演:佐野晶哉、上白石萌歌ほか。
配給:バンダイナムコフィルムワークス 11月7日(金)より全国ロードショー
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