さあ、行くわよ? きゃりーぱみゅぱみゅの 「大人なLADYになるわよコラム」第28回〜『私は一人じゃないわよ』〜
きゃりーぱみゅぱみゅが「大人なLADY」を目指す日々を綴る連載。おかげさまで、話題沸騰です。第28回は「コーチェラ」のお話。
『私は一人じゃないわよ』
皆さま、ごきげんよう。アメリカの世界最大規模の音楽フェス「コーチェラ」に3年越しでやっと出演できると思ったら、まさかのビリー・アイリッシュの裏(ついでに21 Savageも裏)だった、きゃりーぱみゅぱみゅです。
日本でいうと、サザンとミスチルに挟まれたようなものです。ギリギリになって発表されたタイムテーブルを見ながら、はい死んだー、誰が私のステージを観にくんねんって思ったんですけど、現地入りしてから追い打ちでさらにショックを受けることになりました。
会場にいる人たちが、とにかくみんなちょーイケてるんです…。なんかもうおっしゃれーなお姉さんとか意識の高い人たちばかりでキラキラ眩しすぎて、このうちの何人が当日私のステージまで来てくれるのか?と考えると、だんだん胃が痛くなってきてしまいました。世界の壁というやつですね。
その時の私は多分、不安のせいで目つきとか表情とか、はたから見てもおかしくなっていたんだと思います。そんな様子を見かねて、ライブ前日にダンサーさんから励ましのメッセージが送られてきました。
私はベッドで横を向いてスマホをいじってたんですけど、両目からあふれてきた涙が横に落ちて一本になるのを感じました。そうだ、自分は一人じゃないんだ。
「私も今、おそろいのイヤーカフつけてるよ。一緒にいるから緊張しないでね」
Perfumeのあ~ちゃんからも写真が送られてきました。日本を出る前に、お守りとして水色の石のついたイヤーカフをくれたんです。
そんなわけで気を取り直して迎えた、本番当日。だけど出番は夜中の11時50分。コーチェラは朝からやってるのに誰がくんねんという深い時間だし、いよいよ出番が近くなって自分のステージへ向かったんですけど、同じ方向へ向かっている人が誰もいない…。みんなビリー・アイリッシュや21 Savageのステージのほうに流れていっています。
まるで大河のような本場アメリカンパリピの流れに逆らって進んでいく私。これはほんとに人がいないかも…。再び胃が痛くなってきました。
でももうここまで来たので、あとはやるしかありません。そう思ってドキドキしながらステージの上に立ってみると、目の前には私の想像を遥かに超えるたくさんの人たちが…! しかもさっきのパリピたちとは違って、マスクを着けている人も多くて、この会場のどこに今までいたの?と思ってしまうような平和~な感じのお客さんばかりです。
おかげさまでライブはめっちゃ盛り上がって、ベストなパフォーマンスもできました。終わったあとも達成感というか、ついウルッときてしまいまして、ライブの配信を観てくれていたあ~ちゃんと大号泣しながら電話しました。
まあ、そんなわけで私のコーチェラは無事に終わった……わけじゃありません。コーチェラって2週にわたって開催されているので、もう1回ステージがあるんです。しかも、1週目のあとにやったLAのワンマンライブ以降、体調不良者が続出。ダンサーさん4人のうち3人が、ステージに立てなくなってしまったんです。
結局、2週目のライブ前日という土壇場になって、私とダンサーさん1人というわけにもいかないので、私だけで出ることが決まりました。え~~~~まじか~~~~。普段ならそう取り乱してしまうところですけど、でも不思議と落ち着いていた私。というのも、1週目のときにダンサーさんが言ってくれた言葉がうれしくて、ずっと頭にあったからです。
明日は一人だけど、みんなでステージに立っているんだ。
そんな気持ちを何かで表したくて、マイクを握る左手にダンサーさん4人の名前を書いてステージに立ちました。そして最後は、みんなでエア手つなぎしてお辞儀。ステージに一人で立つのはデビューして11年間で初めてのことだったし、そのおかげでいかにダンサーさんが普段のライブを盛り上げてくれているのかを痛感できましたし、仲間の大切さやチームワークというものを、今回のコーチェラですごく学ぶことができたように思います。
なんか今回のコーチェラは、“私の甲子園”という感じでしたね。ちなみに1週目の配信でちょっと話題になっていた、私の曲で踊りまくるバンダナおじさん。2週目もいて楽しそうに踊っていました。それならLAのワンマンライブも来てくれたらよかったのに~。
あ~ちゃんは2回とも配信を観てくれて、どっちもずっと泣いていたんだそうです。出国前には「あっちで飲んでね」とインスタントの味噌汁を大量にくれたり、帰国後にはコーチェラの無理がたたって1週間ほど寝込んでいたら、玄関先にフルーツをごんぎつねのように置いていってくれたりと、あ~ちゃんにはまじで足を向けて寝られません。聖母マリアに見えました。もはや、ま~ちゃんです。
私は数年前まで嫌なやつだったのですが(?)、あ~ちゃんから優しさを学ぶことがたくさんあって、以前より相手のことやチームのことを思いやれるようになった気がします(どうですかね、周囲の皆さん?)。プレゼントでいただいた石のイヤーカフも、人に優しくなれるという意味もあるとこのことで、死ぬまで耳に装着して生きていきたいと思います! ちっす⭐
私も「一人じゃないよ」と、誰かに言えるLADYでありたいです。