Town & City Guide  高円寺#1 ヴェネツィアと高円寺は似てる? エトワール通り〜パル商店街

TRAVEL 2023.09.12

多様な魅力を持つ東京・JR中央線の駅の中でも、ひときわ異彩を放つ高円寺。この町には14の商店街があり、小さくともセンスの光る店がひしめきあっている。世代を超え愛される名店から、これからをリードする新店までをご案内。

INDEX

多彩なセンスと才能が集まる東京のカルチャー玄関口。

高円寺 多様な魅力

古着やレコードを中心としたヴィンテージアイテムの宝庫で、個性豊かなファッションの人々が行き交う街は、いつも何かお祭りが行われているかのような賑やかさ。カレーの名店と銭湯も多数。

今回の案内人

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テリー・エリス(左)北村恵子(右)〈MOGI Folk Art〉オーナー。セレクトショップ〈BEAMS〉で海外バイイングを担当。レーベル「ビームスモダンリビング」「fennica」の立ち上げを経て独立。2022年10月、長年通い続けた町、高円寺に〈MOGI Folk Art〉をオープン。

高円寺に沖縄料理店が数多くあるのは有名だ。沖縄が本土復帰する前、1961年に開業した〈きよ香〉の故・高橋淳子ママを慕って、多くの沖縄出身者がこの地に身を寄せたからだといわれている。無一文の学生には、無料で料理を振る舞ったこともあったという、懐の深い沖縄の心。その後、古着、レコード、カレー……、そして、徳島の「阿波おどり」までもが、この町の景色となった。さまざまな事象を巻き込むチャンプルー文化。今回、店の案内人となってくれた北村恵子さんとテリー・エリスさんも高円寺のおおらかな空気に魅せられた人たちだ。二人は、元〈BEAMS〉「fennica」の名物ディレクター。彼らにとっての高円寺は、20年前から古着やレコードを買い求めに訪れていた、お気に入りの町。「商店街がある下町らしい雰囲気が好きです。そして高円寺に店を出そうと決めたのは、古着やレコードが好きでこの町を訪れるマニアックな人がいるから。彼らならば、自分たちがいいと思うものにも、きっと興味を持ってくれると思ったんです」(エリスさん)。2022年の10月に、二人はこの町にアートや民藝、古着を取り揃える店〈MOGI Folk Art〉をオープンした。

MOGI Folk Art(モギ フォーク アート)・民藝、アート、古着

優しくて愛おしい、多様なクラフトのまさに“宝庫”。
民藝のほか、各国のフォークアート、クラフト、ヴィンテージアイテムなど店主の北村さんとエリスさんが選んだ逸品が並ぶ。窯元に別注したオリジナルの商品も。ひとつひとつ手に取ってゆっくりと選びたい。

この地には、古着屋に新商品が出揃う土曜のお昼になると、お目当てを探し求める人々が日本中から集まる。古着を探し回って疲れた人は、すぐに帰ることなく、この町でひと休みするのが定番だ。感度のいい彼らはどこで休憩をするのか?高円寺で働き、そして近辺で暮らす恵子さんとエリスさんに、一日かけて楽しめるこの町の巡り方を尋ねると……。

まずは、エトアール通りに構える〈MOGI〉の隣の〈IL DOGE〉を紹介してくれた。彼らが開業前から通っている、なじみのイタリアンレストランがインスパイアされたのはヴェネツィア。金子紀彦シェフいわく「ヴェネツィアの町のおおらかな雰囲気は、高円寺と似ているんです。朝からお酒を飲んでいるところもね(笑)」。店内には立ち飲み席もあり、ふらっと入って飲み食いできるヴェネツィアのバーカロ文化も楽しめる。2022年2月には、現地ヴェネツィアに支店をオープン。その名も〈Koenji〉で、ロゴのデザインは、シェフと親交のあるミナ・ペルホネンの皆川明氏が担当した。

IL DOGE(イル ドージェ)・イタリアン

非日常感も魅力の高円寺が誇るイタリアンの名店。
イタリアのヴェネツィアをイメージした店内には立ち飲みスペースもあり、ちょい飲みから大切な日のディナーまで楽しめる。ヴェネツィアに〈Koenji〉という姉妹店も。

軽く飲んだあとは、近辺の古着屋〈anemone〉〈The words〉へ。

anemone(アネモネ)・古着

ヨーロッパを中心とした状態の良い逸品を目当てに大人が集う。
上質なヴィンテージ古着がレディス、メンズともに揃い、休日にはパートナーとそれぞれの服を選ぶお客さんの姿も。
特に〈バーバリー〉のコートの品揃えは高円寺でもトップクラス。革靴、バッグも充実のラインナップ。

The words(ザ ワーズ)・古着

時代や文化を象徴する服をこだわりをもって買い付け。
2016年にそれまで営業していたセレクトショップ〈MAD TEA PARTY〉からアップデートオープン。1970年代を中心に特にシルエットとカラーにこだわった服を直接アメリカから買い付け。10代から40代前後の男女が集う。

じっくり買い物を楽しんだあとは〈Atari〉に寄ってみてはどうだろう。ギャラリーとして、クリエイターたちに無料でスペースを貸している。小腹が減っているならば、人気のフードも楽しめる。麹ベースの「とり油そば」やヴィーガン料理など、ヘルシーなメニューが提供され、なかでもエリスさんがおすすめするのがバナナジュース。最初の口当たりは完熟の有機バナナの甘さがしっかり感じられる。豆乳ベースなので、サラッと飲めて、後味は爽快。

Atari(アタリ)・カフェ、ギャラリー

高円寺で貴重なヴィーガン対応フードも提供!
もともとはギャラリー。昨年夏から化学調味料を使わない料理を提供するカフェとしても営業中。テイクアウト可能なオーガニックのバナナジュースも人気。ギャラリーは約2週間ごとに展示が替わる。

続いては、近くのパル商店街へ。このストリートには多くのレコード店がある。その中で、イギリスで育ったエリスさんのお気に入りは、〈BE-IN RECORDS〉。ビートルズやローリング・ストーンズなど、1960~70年代に発売されたイギリスの貴重なレコードが揃う、マニア垂涎の店だ。

BE-IN RECORDS(ビーイン レコーズ)・ヴィンテージレコード

ここでしか手に入らないレア盤を求めて全国各地からファンが集う聖地。
〈MOGI〉のエリスさんも行きつけという、高円寺のみならず日本国内でも最大級のヴィンテージレコードショップ。イギリスの貴重盤、美品、レア盤がトップコンディションで揃う店内はファン垂涎の空間。

エトアール通り

photo_Tetsuya Ito (MOGI), Miyu Yasuda, Hikari Koki, Yuki Sonoyama illustration_Makoto Motomura text_Hanako

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