古城をDIY、電力を自給自足…… YouTubeで世界の暮らしツアー。
丁寧な暮らしに田舎暮らしに古民家DIYにミニマリスト……。自身の生活をドキュメントする「暮らし系」YouTube。あまたある番組の中、アゼルバイジャン発『Country Life Vlog』は群を抜いて面白い。
「趣味と生活を突き詰めたら最先端になってた人たち」
アゼルバイジャンは西アジアと東ヨーロッパが交わる場所に位置する小さな国。このYouTubeはそんな小さな国の小さな村で暮らす中年夫婦の日々の記録だ。とにかく映像が美しい。ナレーションやBGMは一切なく、自然音や生活音だけで構成しているのが秀逸。撮っているのは夫婦の息子(彼は登場しない)。彼は首都のレストランで働いていたがコロナ禍で閉店、故郷の両親の自給自足生活を撮って世界中にシェアしようと思いついたという。動画のメインは料理上手なお母さん。ピザや惣菜パン、煮込み料理に保存食。お母さんは毎回工夫を凝らした料理を作り、それがなんともおいしそうで、手際のよさも気持ちいい。しかも、ガスや水道といったインフラが整っておらず、かろうじて電気がある程度なので調理はすべて薪ストーブやかまどで行う。家はハイジが暮らすような山小屋だし、庭は季節の草花が咲き乱れ、ニワトリや七面鳥、アヒルや犬や猫が戯れる。そして、畑で穫れた作物や、家畜の乳や肉、野山で摘んだ野草や拾い集めた木の実などを調理。めちゃめちゃファンタジックなのだ。まるで『ロード・オブ・ザ・リング』のホビット族の生活のよう。もしも天国があるのならきっとこんな風景だろう。
アゼルバイジャンの夫婦は村というコミュニティで生活しているが、人里離れた山の中の〝ポツンと一軒家〞で「オフグリッド」生活をする人たちもいる。近年注目を集めている暮らし方で、インフラに頼らず、電気も自分でまかなうというもの。カナダ発『My Self Reliance』は、50代と思おぼしき男性が誰の手も借りず1人きりで森を開拓し、伐採した木でログハウスを建て、猟や釣りをしながら生活する様子をセルフィー動画で見せてくれる。相棒はゴールデンレトリバー1匹という渋さ。たま〜に女性の影が映るけれど。
ログハウスで焚き火が男の夢なら、お城のバルコニーでアフタヌーンティーは女の夢。ボロボロの古城を買い取ってリノベしながら「シャトー生活」を送る人たちもいる。フランス発『How To Renovate A Chateau』や『The Chateau Diaries』などがそう。日々どこかしら修理せねばならず落ち着かないが、城に住むというのは永遠に修理を続けること。彼らはそれも楽しんでいる。そして、シャトー仲間で中世の衣装をまとい「晩餐会」を開くのも楽しそうだ。
それにしても、どれもプリミティブでスローな生活なのだが、それをまるごとYouTubeで配信して「稼ぐ」のは最先端の暮らし方。ちっともユルくない現実もあるのだ。