開業130周年〈帝国ホテル〉が一流であり続ける理由とは。8つの“おもてなし”を大解剖。
2020.10.09

〈帝国ホテル〉がずっと特別な理由。 開業130周年〈帝国ホテル〉が一流であり続ける理由とは。8つの“おもてなし”を大解剖。

日本の迎賓館として1890年11月に開業し、今年130周年を迎える〈帝国ホテル〉。もてなしの技は唯一無二。宿泊を通して、ホテルを支える一流の仕事を紐解きます。
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【理由.1】エレベーターのバラなど、 館内の花は生花だけ!

帝国ホテル
エントランスでゲストを出迎える「ロビー装花」は帝国ホテルを象徴する存在。季節で花が替わり、9月はケイトウに。約300本を使う装花は毎日メンテナンスされ、1本たりとも枯れているものはない。

ふんわりとした絨毯の感触を確かめながら〈帝国ホテル東京〉のロビーに足を踏み入れると、堂々たる佇まいの「ロビー装花」に出迎えられる。ケイトウの燃えるような深紅の色が、秋の訪れを告きらげている。装花の頭上で煌めくシャンデリア、奥に続く階段と、シンメトリーな美しさに改めて見惚れてしまう。

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エレベーター内に飾られるピンク色の一輪のバラ。1日3回の水やりなどエレベーター専任スタッフ・スターターの細やかな仕事により、可憐な開き具合を保つ。ホテル内で使う花はすべて生花であり、少しでも傷んだら交換。

さて、今日は念願の宿泊の日。ドアマンからベルマンへ、流れるような連携作業でスムーズにチェックインを済ませると、スターターと呼ばれるエレベーター専門スタッフが客室へと導いてくれる。エレベーター内には小さなピンクのバラが一輪。「このバラの美しさを保つのも私たちの仕事なんですよ」というスターターの言葉に、おもてなしは既にここから始まっていることを知る。

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生花の一部を再利用し、ゲストアテンダントによってポプリが手作りされ、アニバーサリープランのお土産などに活用されている。

【理由.2】もてなしの心を象徴する着物姿の客室スタッフ。

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インペリアルフロアの宿泊者を担当するゲストアテンダント。ウェルカムドリンクや客室の説明、荷ほどきなど手厚いケアをしてくれる。この着物姿こそ、日本の迎賓館として開業し、世界中のVIPをお迎えしてきたホテルの伝統と誇りなのだ。

本館16階のインペリアルフロアに到着すると、部屋の前で着物姿のゲストアテンダント(特別フロア専門のスタッフ)の女性が笑顔で迎えて下さり、感動してしまう。

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客室の壁一面の大きな窓からは日比谷公園が真正面に広がり、この場所が東京の一等地であることを再確認する。バスルームのシンクの水栓はピカピカに磨かれ、真っ赤なバラが一輪、さりげなく飾られている。品のいい開き具合は、エレベーターのピンクのバラと同じだ。

【理由.3】チェック項目は200以上!客室の守り神インスペクター。

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客室清掃係の清掃後、さらにインスペクターという客室点検のプロが20分かけて部屋をチェック。デスクの点検では着席してイスの具合も確認し、備品の懐中電灯を点けてベッド下の忘れ物をチェック…と1つの動作で2つの要素を手際よく確認。髪の毛1本も見逃さず、前の宿泊客の気配を消し去っていく。作業は靴を脱いで行うのもプロの心遣いだ。

〈帝国ホテル〉が長い歴史の中で研鑽してきたおもてなしの一つが、妥協なき掃除への姿勢。2人一組の清掃係が30分かけて丹念に掃除した後、さらにもう一度、「インスペクター」という客室点検の専門スタッフがくまなくチェックする。グラスの微細な欠けも見逃さず、落とし物がないか、カーテンのヒダやベッドの下も入念に確認し、テレビは必ずつけて適度な音量か確かめる。そのすべてが、宿泊客がストレスなく寛ぐための準備。

【理由.4】水漏れから灯りの番人まで、非日常を支えるプロ集団。

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ホテルには「施設運用課」という館内をメンテナンスする部署があり、23名が在籍。棚には膨大な種類のネジ類や水回りのパッキンなどが整然と収められ、不調があればすぐさま対応。なんとも心強い。

また、ホテル内には家具や水回り、照明などを修繕する専門部署があり、表舞台を支えている。だから誤ってシンクに指輪を落としたりしても、すぐに駆けつけてもらえるのだ。評判を聞いていたシャワーの水圧や水切れもさすがの快適さ。これも見えないところまできちんとメンテナンスされている証なのだ。

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そして館内で使われる約100種5万個(!)に及ぶ電球も毎日見回り、切れかけていたらランプチェンジャーという専用棒で交換する。この道32年の小笠原和彦さんが4mの棒で宴会場の電球を替える手際は職人技!

【理由.5】客室やレストランの家具は木工室で丁寧に補修・修繕。

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「施設運用課」内の木工室はいわば家具の駆け込み寺。ズラリと並ぶ鉋(かんな)や工具で、客室からレストラン、宴会場などの家具や調度品のメンテナンスを一手に担う。今や外注がほとんどの中、家具を自社で修理するホテルは希少だ。写真は〈ラブラスリー〉のイスの塗装をする小泉英和さん。家具が愛情を持って手入れされ、使い続けられている。

【理由.6】国内外の賓客を魅了するランドリーの凄技!

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来賓客が多く、ハイブランドのドレスや民族衣装など多様な依頼に応えるランドリー。スタッフは3年半をかけ、水洗いやシミ抜き、アイロンの技を習得する。シミには約20種の薬品を使い分け、水を噴霧するシルクガンと吸い取る吸引台で処置。4.5kgのアイロンで仕上げるアイロンがけの美しさも定評がある。
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ボタンが取れている場合は付けてお戻しするのもホテルの流儀。ワイシャツだけで約20種のボタンをそろえるそう。

〈帝国ホテル〉に滞在する日が来たら、やってみたかったことがある。それはクリーニングと靴磨きを体験すること。今年11月で開業130年を迎えるこのホテルは、「日本初」尽くしであり、ランドリーサービスはその筆頭。長旅を経て到着した海外客のために1911年に開設され、凄技のプロが常駐する。

【理由.7】アーケードの歴史と歩む日本最古のジュエラー。

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1923年、ライト館にアーケードがオープンした当初から営業する、1884年創業の〈ウエダジュエラー〉。ハンドメイドの美しさとつけ心地の良さが愛されている。大理石やライムストーンなど天然素材を多用した風格ある店構え。
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かつて販売していた銀製調味料入れ。細かな細工に感動。
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人気シリーズの「U-line WAVE」と「bon bon」。

地階に店舗が連なるアーケードもこのホテルが日本1第号。開業時から店を構えるジュエラーは、ソフィア・ローレンなど多くのスターが訪れた華やかな歴史を刻んでいる。

【理由.8】あまたのVIPの顧客を持つシューシャインの名人。

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1960年から本館地下1階の靴磨きコーナーで活躍する通称・キンチャン。リズミカルな作業はまさに熟練の技。水を含ませた布で表面にスッスと靴墨を入れていき、「革が栄養をもらってお腹一杯になったら」サッと磨くと、驚くほど輝きを放つ。自身も高級靴のコレクターであり、映画やジャズを愛する通人。作業の際の軽妙で粋な語り口もホテルの財産だ。
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そしてアーケードには、伝説の靴磨き職人がいる。大切な靴を名人に磨いてもらうのは、一人前の大人になれたようでなんだか誇らしい。

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朽ちない生花、一つの欠けもない完璧な照明…そうした集大成がホテルという非日常を生んでいる。この心地よさも高揚感も、365日、休むことのないプロの仕事に支えられている。帰り際、エレベーターのバラ一輪の変わらぬシルエットを見て、〈帝国ホテル〉が一流であり続ける理由に改めて気づくのだ。

〈帝国ホテル 東京〉

1890年開業、手厚いもてなしで知られる、日本を代表するホテル。130周年を迎え、記念プランも登場。1階には名匠フランク・ロイド・ライト建築のライト館(1923〜1967年)の歴史を辿る展示スペースも。
■東京都千代田区内幸町1-1-1
■03-3504-1111
■IN:14:00/OUT:12:00
■客室数:931室

(Hanako1189号掲載/photo:MEGUMI illustration:Mizumaru Kawahara text:Yoko Fujimori)

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