妊婦さんが注意しなければならない魚。メチル水銀のリスク。
魚は良質なたんぱく質が豊富で、特に青魚には脳や神経細胞の発育に良いと言われているDHAやEPAが多く含まれています。
私たちの食生活になくてはならない食材ですが、魚の種類によっては胎児の知能の発達に悪影響を及ぼす可能性のあるメチル水銀が多く含まれるということをご存知でしょうか。
妊婦さんが魚介類に含まれる水銀について注意しなければならないことは母子手帳にも載っています。しかし、まだ知らない人も多く、また母子手帳の情報だけでは詳しいことが分かりません。
そこで、今回は妊婦さんが食べても良い魚の種類や摂取目安量について、お伝えしたいと思います。
メチル水銀とは
水銀は水俣病の原因物質として知られる有害重金属で、特にメチル水銀は中枢神経に障害を起こすと言われています。
メチル水銀は自然界に広く存在しており、海中に存在するメチル水銀をプランクトンが吸収し、プランクトンを小魚が食べ、その小魚を大型の魚が食べ、最終的に私達人間がその魚を食べることによって、濃度が高まったメチル水銀を体内に取り込んでいます。
食物連鎖の最上位にいる私達は、魚を食べることでメチル水銀を体内に取り込んでいるのです。
注意が必要なのは妊婦
私達が魚を摂取して体内にメチル水銀を取り込んでも、通常は汗や便によって体外に排出されるので、心配する必要はありません。しかし、妊婦は注意が必要です。
胎児の発育は胎盤を通して母親から栄養が届けられますが、胎児はその中に含まれるメチル水銀を排出することができません。
そのため、お腹の中の胎児にメチル水銀が蓄積され、胎児の健康に影響を与える可能性があることが、これまでの研究で明らかになっています。
クジラ等の大型の魚を多く摂取するデンマークのフェロー諸島の国際的な調査では、妊娠時にメチル水銀が体内に多く含まれている母親から生まれた子どもは、注意力、言語、記憶において子どもの能力がわずかに低下したという結果が得られました。
妊婦が注意すべき魚と摂取量の目安
では具体的に、妊婦中はどのような魚をどれくらい食べても良いのでしょうか。妊婦さんが1週間に摂取しても良いメチル水銀の量は、体重1㎏あたり2.0μgです。
具体的には、キンメダイ、クロマグロ、メバチ、メカジキは1週間に1回(約80g)、
クロムツ、キダイ、マカジキ、ミナミマグロは1週間に2回(約160g)が目安です。
これらの大型の魚より食物連鎖の下位に位置するサケ、アジ、サバ、イワシ、サンマなどの魚はメチル水銀量が少なくなるので、それほど注意が必要ではありません。
しかし、キンメダイやクロマグロ等、普段食卓に並ぶなじみ深い魚が、1週間に1回しか食べられないとなると、やはり気を付けなければなりません。
ちなみに、母乳には赤ちゃんに影響を与えるようなメチル水銀は出ないうえ、胎児と違って赤ちゃんはメチル水銀を体外に排出できることから、赤ちゃんを産んだ後はしっかり魚を食べて問題ありません。
妊婦以外の人にも知ってほしい
日本でメチル水銀の摂取基準が定められたのは、2003年です。それから17年が経ちますが、大型の魚にメチル水銀が含まれていて、妊婦は注意が必要であることを知らない人も多いのです。また祖父母世代の人たちが子育てをしていた頃は、魚介類のメチル水銀のリスクは知られていなかったので祖父母が知らないのも当然です。
とは言え、妊娠時には夫や祖父母に家事や身の回りのことを頼むことも多いと思いますので、妊婦さんだけでなく、周りの人たちにも是非知ってもらいたいと思います。
参考文献:
魚介類にふくまれる水銀について(厚生労働省)
魚介類に含まれるメチル水銀について(食品安全委員会)