連載〈HOME SWEET HOME〉 食のプロのセンスをインテリアから学ぶ。 CASE40 石原文子

LEARN 2025.12.11

おいしいものを作る人、おいしい場所をプロデュースする人。食に関わるプロフェッショナルのセンスを、プライベート空間のインテリアから学びます。

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家族の生活を基調に整えてゆく「一年生の家」。

がらりと変わった住環境も、少しずつ変化し続ける家族のあり方もポジティブに楽しむ。住み慣れた東京・世田谷区のマンションから、埼玉に移り住んだ石原文子さんに、家づくりについて訊いた。

すっきり整ったリビングで、12年連れ添う同居人(犬)、はなちゃんと。パッチワーク状のラグは「本意ではないけれど」と、はなちゃんの滑り止め対策。
すっきり整ったリビングで、12年連れ添う同居人(犬)、はなちゃんと。パッチワーク状のラグは「本意ではないけれど」と、はなちゃんの滑り止め対策。

俗にいう「移住」未満ではあるけれど、生活のリズムに大きな変化をもたらすのに十分な環境の違いがある。東京都世田谷区から埼玉県さいたま市への転居について、石原文子さんはそう話す。市町村合併で誕生した広いさいたま市は、「浦和駅界隈は、ほとんど東京と変わらない雰囲気だけれど、ここ(旧大宮市内)はもう少し田舎で、のんびりとしている」とも。夫の寛郎(ひろお)さんと高校生の長男、中学生の長女の4人暮らし。子供たちの進学の時機やクラブ活動を理由に決めた引っ越しで、数年ぶりに住まいづくりを一から考えた。

リノベーションは、採光と開放感を最大限に。

モダンなキッチンにも、柿材の古い家具を合わせて。
モダンなキッチンにも、柿材の古い家具を合わせて。

「引っ越してから、初めてマンションで畑を貸していることを知って。元々土が好きで、1階の庭付き物件や一軒家も候補に家探しをしていたから、すぐに借りることに。夏はトマトにオクラ、スイカなどが上手にできた。冬野菜も間もなく収穫です」

南向きで窓が広く、低層階。プラス、家族に必要な広さ、間取りの使いやすさ。内見して即「ここだ」と思えた家は、必要な条件を満たしていた。メゾネットタイプの3LDKで、上階を子供部屋に。下の階は、半独立型のキッチンをオープンにし、ダイニングと和室をつなげて約18畳のLDKにリノベーションした。南側に2部屋分の窓と、ベランダが連なり、さらに広く感じる。近くに高い建物も目に障る商業施設の看板もなく、空が抜けて清々しい。

写真家、松本祥孝さんの作品で彩りをプラス。
写真家、松本祥孝さんの作品で彩りをプラス。

〈monokraft〉のダイニングテーブルに古道具店で買った椅子、飾り棚として使う木の作業台など、家具はほぼ以前の家で使用していたものだ。

「夫も私も古い家具が好きで。それが似合う昭和なマンションに住んできたから、真っ白い空間にはまだ慣れなくて」と、話すが、キッチンに並ぶ器を筆頭に、工芸の店を営む文子さんの目で選ばれた暮らしの道具やアートピースが、真新しい空間と家族の生活になじんだ家具とを自然につないでいる。システムキッチンは〈toolbox〉のラワン仕上げで、足場板を使った棚は寛郎さんのDIYだ。

子供の成長で変わる家の形と生活を見据えて。

3.ベッドルームにも大きな窓があり、外に四季折々の景色が広がる。ペイントは石垣島時代の友人でアーティストの作品。
3.ベッドルームにも大きな窓があり、外に四季折々の景色が広がる。ペイントは石垣島時代の友人でアーティストの作品。

子供も中高生ゆえ、個を尊重し、親子の空間を緩やかに分けるのも新居のテーマ。ただし、帰宅後、一度は顔を合わせられるよう、キッチンの入口に、ガラス入りのドアを配した。

転居後に、新たな家族も加わった。長女たっての希望で迎えたミニチュアシュナウザーのペーターくんだ。が、結局、クラブ活動で忙しいという理由で、世話は石原さん夫妻が担うことに。「まだ幼くやんちゃだから、低い場所に置くものを工夫したりと大変。まるで3回目の子育て」と笑うが、人生初の犬との暮らしを楽しんでいるようだ。

郊外型の生活には車が必須と、ペーパードライバーを脱するべく、運転の練習も始めたという。世田谷にある店への通勤はやや時間がかかるようになったが、それ以外は「緑豊かで広々とした公園があったり、直売所で朝採れの野菜を買えたりすることがうれしい。あと、植物も驚くほど安く買えて」と、満足度は上々のよう。室内を大小の観葉植物が彩り、ベランダのプランターでハーブも育てている。

住空間へのこだわりはもちろんあるけれど、先行するのはスタイルより暮らしの中身。場所が変わり、家族で歳月を重ねれば、生活の変化は必然で、ハコである家は、それに合う心地よいものであれば。夫妻のそんな考えが伝わる家は、とびきりのプロダクトがあっても緊張を強いないリラックス感がある。工芸品が持つ、土地の人々の暮らしの中で培われた美に光を当てながら「使ってこそ」と紹介する店の身上は、プライベートの空間にも潔く貫かれていた。

74 m<sup/>2 の1LDK。70 m<sup>2</sup> 以上となると、部屋が分かれたファミリータイプが多い中、広い1LDKの間取りも理想だった。築23年。外周などのパブリックスペースも整備されている。
74 m2 の1LDK。70 m2 以上となると、部屋が分かれたファミリータイプが多い中、広い1LDKの間取りも理想だった。築23年。外周などのパブリックスペースも整備されている。

【TODAY'S SPECIAL】大人も、食べ盛りの子供も喜ぶ味。

食のプロの インテリアとセンス 中村裕子

「最近よくつくるもの」として教えてくれたのが“サケマヨ”。「中華の海老マヨを生サケでアレンジしたもので、サンドイッチやタコスにすると子供たちも喜ぶんです」とのこと。大人の酒のつまみとしてもうってつけ。自家製梅シロップのソーダ割りも、2人の子供の好物だそう。大人は泡盛などで割ってカクテルに。

ESSENTIAL OF -FUMIKO ISHIHARA-

趣味も実用も大らかに、気持ちよく。

( CRAFT )
古いもの、手仕事のもの。
家具に関しては「世界の民芸品、経年の味があるものが好き」と石原さん。写真は台湾先住民族のスツール。花器は〈倉敷堤窯〉武内真木さんの作品。


( WASHROOM )
吹き抜けの明るい洗面所。
集合住宅では珍しく洗面所にも自然光がたっぷり射し込み、洗面台に加え、掃除・洗濯に便利なシンクも。新居で密かに気に入っている場所だ。


( GREEN )
ベランダのグリーン。
観葉植物からハーブ類まで、ベランダをグリーンが彩る。サンセットタイムのベランダ晩酌は「わんぱくペーターが大人になるまでおあずけ」だそう。


photo_Taro Hirano illustration_Yo Ueda text & edit_Kei Sasaki

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