月経前のメンタル不調とどう付き合う? まずは自分の症状を知ることからはじめよう。
おがわ・まりこ/女性医学・女性ヘル スケアを専門とし、女性のライフステ ージ全般にわたる健康問題について情 報発信を行う。2024 年より福島県立医 科大学ふくしま子ども・女性医療支援 センターの特任教授に就任。
「なんとなく不調が続く」「気分が浮き沈みする」など、女性のほとんどが経験のある月経前の不調。これらは(月経前症候群)と呼ばれ、ここ数年ではプレゼンティーズム(心身の不調を抱えながらの就業による作業効率の低下)にも影響する症状として挙げられるほど、働く女性の健康課題として世界的に注目されている。
「PMSの症状は個人差も大きく、症状も多岐にわたります。毎月のことだから…と誰にも相談せずやり過ごしてしまいがちですが、家族やパートナーに理解してもらいながら付き合って行くことも大切です」と語るのは、女性医学を専門とする小川真里子先生。そもそも、なぜは起きるのか。そのメカニズムを教えてもらった。

「PMSは二つの女性ホルモンの変動によって引き起こされます。一つは、幸せホルモンと呼ばれるセロトニンの生成と関係し、排卵前に増加するエストロゲン、そして不安を和らげる物質を作るプロゲステロンです。月経周期に伴い変動し、月経前に女性ホルモンが大きく下がることでが起きます。
PMSはホルモンの乱れから来るものと勘違いされがちですが、ホルモンがきちんと働いているからPMSが起こる=排卵、月経周期が正常に毎月来ている、という証拠です。実は、女性は男性の約2倍うつ病になりやすいというのも、と同様ホルモンの変動が原因。結婚、出産、介護など環境の変化が多いため、産後うつや更年期障害などライフステージによる影響を受けやすくなっています」
PMSの諸症状のうち、特にイライラや気分の落ち込みといった精神的な症状が著しい場合は(月経前不快気分障害)という精神疾患に値するケースもあるという。「生活に支障が出るほどPMSの症状が重い場合は、ためらわず産婦人科やメンタルクリニックなどの医療機関で受診してほしい」と小川先生。
「PMSは治療を受けられるので、相談しやすいかかりつけ医を見つけておくことは重要です。ホルモンのゆらぎをおさえてPMSの症状を落ち着かせてくれる低用量ピルや、血液を循環させ、むくみにアプローチする漢方薬、抗うつ剤など症状に応じて最適なものを処方してくれます。もう一つお願いしたいのが『症状日誌』をつけること。見開きで1カ月の変化を見渡せるノートがおすすめ。続けることで月経や排卵周期と、症状との関連が把握でき、自分の体調と仕事や家族行事などの重要なスケジュールをうまく折り合いをつけて管理できますし、病院での問診の参考にもなります。今回は、緩和への近道になるセルフケアのヒントもちりばめたので、チェックしてみてください」
月経前症候群(PMS)とは?
繰り返し月経前に起こり、月経が始まると症状が軽くなったり消えたりする、心身の不調全般を指す。排卵から月経までの黄体期に分泌される女性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)の変動が要因とされている。
CHECKLIST 自分の症状を知る。
200種類以上の症状があるというPMS。月経3~10日前に現れる主な不調の例を見ていこう。

①PMSの精神的な症状
⬜︎ ゆううつ
⬜︎ 怒りっぽい
⬜︎ イライラ
⬜︎ 混 乱
⬜︎ 不 安
⬜︎ 人と会いたくない
上記の症状が重い場合は、PMDDの可能性も。毎月繰り返し起きるか経過観察をして、症状が重い場合は迷わず婦人科や精神科の受診を検討してみて。
②PMSの身体的な症状
⬜︎ お腹がふくれる
⬜︎ 乳房が痛い
⬜︎ 頭痛
⬜︎ 関節や筋肉が痛い
⬜︎ むくむ
⬜︎ 体重が増える
女性ホルモンの変動に伴う、体温や血行の変動、体内の水分を保持する動きなども活発化。特に20代、出産経験のない女性は身体的な影響を受けやすい。
※「Nappi, et al. Endocrines 2022, 3(1), 127-138」より




















