食べて、飲んで。3年の食日記は、みんなの3年の記録。 『まいにち酒ごはん日記』ツレヅレハナコさんインタビュー「書籍だからできる ボリューミーな内容に。」
未知の感染症により、世の中が変化した狭間の2018年~2021年。文筆家・ツレヅレハナコさんの最新刊『まいにち酒ごはん日記』は、そんな3年間に飲んで食べて旅したInstagramの記録をまとめた一冊だ。おいしいお酒や料理はもちろん、「自分でも驚いた」と語る新しい分野への挑戦についてなど、ツレヅレさんの変化が綴られている。
インスタの一番の魅力は、〝写真のツール〟であることです。人は楽しいときやうれしいときに写真を撮るからこそ、コメントもポジティブになる。私はこのハッピーなツールが好きで、投稿を続けています。ですが、インターネットは移り変わりも早く、流行ったツールも未来永劫続くものではありません。そう思ったとき、この記録を書籍というアナログな形で残そうと決めました。
そんな思いつきで始まった企画ですが、始めてみたら意外と大変! 3年間の膨大な投稿から、飲食店の情報やお家ごはん、当時の心境を綴ったものなどバランスよく厳選し、文章をリライト。我ながら仕事でもないのによくこんなに書いてたなと驚きましたが、思い出を振り返ることができて楽しかったです。ちなみに、見出しを新たに追加したのですが、記憶が曖昧になるほどたくさん書きました(笑)。ひと目でおもしろいと思ってもらえるよう考えたので、注目して読んでほしいですね。
誰にとっても激動の3年でしたが、私にとっては海外旅行に頻繁に行っていた生活から、行けなくなったという変化がその一つ。この書籍では、インスタでは軽く触れることしかできなかったインド、韓国、スリランカ旅行を新規コラムとして追加掲載しています。読んで海外気分を味わってほしいですし、いつかまた海外に気軽に行けるようになったときの参考になればと思います。そのほか、よく質問をいただく料理はレシピ化して巻末に。書籍だからできる情報を詰め込んだので、何度も読み返して楽しんでいただけたら。
私自身、コロナが流行る前はずっと忙しくしていたので、こんなに一人の時間が増えたのは久しぶり。家の新築や、興味のなかったスポーツ観戦に挑戦するなど、思ってもみなかったことが起きた〝ドラマチックな3年〟でした。「自分はこう」と決めつけるのはもったいないなと気付かされましたし、みなさんにも伝えたい。そんなタイミングに、書籍が出せたんだなと思います。
ツレヅレさんが影響を受けた食エンタメ3選。
Mook
写真・左/『 Smile Food スマイルフード 』
写真家、スタイリスト、編集者ら業界の名だたる方たちが“思わず笑顔になってしまう”一品を紹介するフードカタログ。当時、この本に載っているものを片っ端から食べに行きました。同世代の食いしん坊は絶対知っている一冊。(マガジンハウス/現在は絶版)
映画
写真・中央/映画『 ゴッドファーザー 』シリーズ
実家では毎年、正月に三部作を観る恒例行事があり、思い出深い作品。イタリア系アメリカ人一族の抗争を描いた話ですが、実はイタリアの風景や食も見どころ。特に1作目の結婚式のシーンは、長いテーブルにごちそうがずらりと並んでいて、幼いながらに憧れました。
映画
写真・右/『 バベットの晩餐会 』
初老の姉妹に仕えるメイドのバベットが、宝くじで手に入れた大金で姉妹にディナーを振る舞うというもの。大人になり、色々なフレンチを食べてきましたが、バベットの料理はいま観ても素晴らしい! DVDの解説ブックレットに携われたときはうれしかったです。
『 まいにち酒ごはん日記 』
2018年春から2021年夏までの記録を集めた、楽しく役立つオールカラーの日記本。Instagramに投稿した記事を中心に、全国にあるお気に入りのお店やお取り寄せ品、海外旅行コラムと盛りだくさん。巻末には、お酒のおつまみにぴったりな簡単レシピつき。(幻冬舎/1,760円)
ツレヅレハナコ
食と酒と旅を愛する文筆家、編集者。Instagram(@turehana1)などで日々の食事や晩酌、料理レシピを綴った文章が評判を呼び、ファンも多数。近著に『ツレヅレハナコのお取り寄せ』(立東舎)もある。