お役立ち法律情報をお届け。 「誹謗中傷コメントを削除してもらうには?」弁護士・菅原草子のお役立ち法律情報!【ネットトラブル編】
弁護士・菅原草子が、愛してやまない食の話とお役立ち法律情報、Hanako読者からきたお悩みを解決する連載「食いしん坊弁護士、そうこ先生のお悩み相談室」よりお届けします。今回は、ネットで起きたお悩み編です。意外とわたしたちの身近で起きる問題、法律で解決できることがあります。
お悩み:「ネット上で繰り返される誹謗中傷コメントに悩んでいます。対処方法はあるの…?」(K.T.さん アパレル店員)
被害に遭った場合、最初にK.T.さんが考えるのは、「誹謗中傷コメントを削除したい」ということだと思います。自分で削除依頼フォームなどから要請をしてダメであれば、弁護士に依頼して削除を求める、また裁判所から削除を命令してもらうこともできます。しかし、1つ1つアンチコメントを削除したとても、K.T.さんのように繰り返されることもあり、根本的解決にはならない…。ならば、より強い手段で相手と戦うこともアリです!戦うためには、まずアンチコメントをした相手を特定しなければいけません。ネット上では架空の名前でコメントできるし、どうやって?と思いますが、以下のように、発信者情報開示請求によって、相手の個人情報を特定することができます。
おおまかな流れとしては、
【1】投稿されたサイトの管理者等に相手のIPアドレス等の開示を請求。
【2】IPアドレス等から相手の利用するアクセスプロバイダ(インターネット接続サービスを提供する事業者)を特定。
【3】アクセスプロバイダに相手の個人情報の開示を請求。
という感じ。基本的に任意での開示は厳しく、裁判所の手続を用いることになるかと思います。
【ここで注意すべきポイント!】
・証拠のためにも、書き込みの内容や日時、サイトであればURLはスクリーンショットなどで保存しておくべし。
・アクセスプロバイダにおける情報保存期間は最短3ヵ月ほどなので(保存要請をしない限り)、書き込みを発見したら、早急に手続きを進めるべし。
無事に相手の個人情報を特定できたら、
【1】弁護士から警告文を送る。
【2】損害賠償請求をする(慰謝料や情報開示の費用等)。
【3】刑事告訴をする(名誉棄損罪等)。
といった方法でしっかりケジメをつけてもらうことが考えられます!
結論:「1人で悩まずに、戦うこともできます!Hanakoから始まるSTOP誹謗中傷運動!」
誹謗中傷を止めたい、泣き寝入りでは納得行かないと思っている方がいれば、やられっぱなしじゃないところを見せちゃいましょう!みんなで声を上げることで、少しでも誹謗中傷への抑止力になったらいいですよね。
お悩み: 「自分で撮影した写真を無断使用された!こんなときどうしたらいいの?」(O.I.さん 広告代理店営業)
結論としては、他人が撮影した写真の無断使用は著作権法違反にあたることがあり、その場合、撮影者であるO.I.さんは相手に使用の差し止めや損害賠償を請求することができます。写真に限らず、映画や絵画、音楽など、多くの芸術作品が著作権法で守られていて、創作した人が自由に使用できる権利をもちます。そのため他人が許可なく使用すると、原則としては違法です。
たとえば誰かが撮影した写真、創作した音楽を素敵だな、共有したいなと思っても、InstagramやYouTubeで無断使用することは、違法になってしまうことがあります(一部分を使用した「引用」に当たる場合などには例外もあり)。ただし権利者が「宣伝になるからいいや」と思っていればそれまで。見過ごせないと思えば責任を追及されるかもしれない、ということになります。著作権法には罰則もあり、罰金だけではなく、なんと懲役も定められています!が、こちらも多くは親告罪といって、本人が告訴しないと罪に問われないため、違法となった=ただちに罰則決定、ということではありません。いま急いで自分のインスタを確認した方々、ご安心を(笑)。
次に、今回O.I.さんが損害賠償請求が可能であるとして、その額が気になるところです。賠償額について、最近の裁判例ではペンギンの写真を無断使用された場合、1年あたりの利用料相当額が5万円と考えられる写真だったことから、5万×3年間の利用+8%(消費税)という計算により、16万2,000円の請求が認められたものがあります。
結論:「写真などの無断使用については、利用料相当額を請求できたり、告訴できる可能性があります。悪質な場合にはご相談を。」
かわいい写真、おしゃれな写真でインスタやYouTubeで自分の世界感を作りたい気持ちはわかりますが、他人の作品の無断使用にあたらないか、今後はアップする前にもう一度考えてみてもらえたらいいなと思います。
お悩み: 「ペットの写真を撮影され、ネットにあげられた!これって問題にならないの?」(H.Y.さん ライター)
犬を散歩しているときに「かわいい!」って話しかけてくれるのは嬉しいけど、勝手に写真を撮られたりSNSにアップまではちょっと…という人もいるのでは。よく耳にするのが、勝手に他人から写真を撮られたり、撮った写真を利用されない権利「肖像権」。これ、ペットたちにも認められるのでしょうか?実は、肖像権と明記している法律って存在しないんです。え、じゃあなんで肖像権って認められているの?というと、これは憲法に由来します。
憲法では国民の権利が定められていて、13条には、「幸福追求」の権利が記されています。簡単にいえば言葉のとおり、みんな幸せな人生を求めていいよってことです。そこから、勝手に写真を撮られたり、その写真を利用されたりしない権利が裁判所の判断上認められています。ですが、憲法が定めるのは国民の権利なので、ペットには認められていないんです…。
ただし近年、動物を含む物の経済的利用については、肖像権と同じように法律には明記のない「パブリシティ権」があるという議論や、無断使用が不法行為になるという議論がされているため、今後、売れっ子タレント犬のような場合には、無断撮影・掲載により利益が侵害されたとして損害賠償を請求できる時代が来るかもしれません。残念ながらペットに関する権利って、なかなか認められていないのが現状です。
結論:「ペットの写真の無断撮影・掲載は法的に取り締まりにくいのが現状。その場で声をかけて事前に防ぎましょう!」
ちなみに、自分で撮影したペットの可愛い写真や動画を他人に使用された場合は、現在の法律で著作権侵害といえることがあります。こちらはまた来月お伝えしますね。これにて閉廷!