まちをつなげるパン屋さん by Hanako1181 アメリカ西海岸の経験を群馬に。ベーカリー〈CROFT BAKERY〉が地元若手生産者と作るパンとは。
パンラボ・池田浩明さんによる、Hanako本誌連載「まちをつなげるパン屋さん」を掲載。今回は、群馬県前橋市にある〈CROFT BAKERY〉をご紹介します。
前橋の食を耕すローカル素材のパン。
アメリカ西海岸でベーカリーのシェフを務めた久保田英史さん。この10年、現地で起こったパンの革命的進化を目の当たりにした。地元産小麦を、地元の製粉所で挽き、フレッシュなうちに使う。パンは飛躍的においしくなり、農業や地域経済が活性化された。「日本でも、なにかおもしろいことができるんじゃないかってわくわくしました」希望とともに、久保田さんは故郷に帰還した。群馬は昔からの麦どころ。おもしろい若手生産者と出会い、彼らの作る素材を、西海岸仕込みの技術でパンにする。
高崎の〈すみや農園〉から届けられる無農薬の「農林61号」全粒粉は「パンコンプレ」に。ふすまをお湯で処理してからパンにするので、イメージに反して食べやすい。藤岡市の〈福田農園〉では自然栽培でファッロ(古代小麦)が作られる。これにキヌアやアマランサスも加え「古代穀物のパン」にする。群馬という土地柄から新しいパンも生まれた。北関東ならではの素材である鞍くら掛かけ豆まめや花豆を使ったパン。群馬のご当地パンである「みそパン」も独自解釈で作る。それらは世界を俯瞰しながら作られる「ローカル」なパンだ。
西海岸の人たちがローカルを大切にする姿勢はこんなところにも。「同じパン屋に2回行けばもう顔なじみ。『今日はどうしたの?』って声をかけてくれる」そんな接客を久保田さんも実践したいと努める。「僕らは素材屋。『こんなチーズ買ったんだけど』って訊いてもらえれば答えたいし、そのためにいろんな食事パンをそろえたい」開店から7年。
「〈クロフトベーカリー〉のパンでなくては」という人が増え、前橋の食は確実におもしろくなった。〈クロフトベーカリー〉に在籍したこともある磯いそ沙さや佳かさんの〈café le cocon〉も食を通じた仲間。広瀬川のほとりにあって、ギンガムチェックのクロスがかわいい。丁寧に焼き上げられるクレープは、ブルターニュのローカルフードのおいしさに目覚めさせてくれる。
〈Café le cocon(カフェル ココン)〉
本場ブルターニュで修業した磯沙佳さんによるおかず系のガレットにおやつ系のクレープも供するクレプリー。
■群馬県前橋市千代田町3-2-12
■027-888-6138
■11:00~18:30LO(日~15:30LO)月、第1・3火休ほか不定休
■20席/禁煙
〈CROFT BAKERY〉
バゲット、パン・オ・ルヴァン、じゃがいものパンなどバラエティに富んだ食事パン、〈ぐろーばる〉のハムなど良質な地元素材使用の惣菜パン、奥さんが作る焼き菓子。
■群馬県前橋市日吉町2-5-1 みずき館 1F
■027-257-9052
■10:00~18:00日 月木休
池田浩明 いけだ・ひろあき/パンラボ主宰。パンについてのエッセイ、イベントなどを柱に活動する「パンギーク」。著書に『食パンをもっとおいしくする99の魔法』『日本全国 このパンがすごい!』など。 パンラボblog
(Hanako1181号掲載/photo:Kenya Abe)