運を味方にしたければ。去年の凶を今年の吉に取り替える、天神さまゆかりの鷽替 (うそかえ) 神事へ。
鷽替神事は福岡の太宰府天満宮発祥。ウソという小鳥をモチーフにした木彫りの像、木鷽(きうそ)を手に参集した人々が「替えましょ、替えましょ」の掛け声のもと互いの木鷽を交換する神事で、文政年間に江戸や大阪に広まったといわれます。「鷽」が同音の「嘘」に通じることから、「去年の悪しきはうそ(鷽)となり、まことの吉にとり(鳥)替えむ」と伝えられ、これまでの凶事を嘘にして吉事に取り替えるのだとか。
木鷽のモデルはウソという野鳥。スズメより少し大きめで頭が黒く背中がグレー、オスは頬から喉が紅色です。その姿を写した木鷽は素朴でかわいらしく、少しとぼけた表情が魅力的。見ていて飽きません。
今年の初天神の日には亀戸や春日、湯島の由緒ある天神さまにお詣りして、今年の吉運を祈りましょう!
その一 広重も描いた江戸の名所、【亀戸天神社】のかわいい鷽鳥(うそどり)

江戸っ子がこぞって出かけた花の天神さま、亀戸天神社の歴史は長い。社伝によれば、菅原道真の末裔である太宰府天満宮の神官・菅原大鳥居信祐が、この地にあった祠に飛梅の枝で彫った天神像を祭ったのが起源。「振袖火事」とも呼ばれる明暦の大火後、幕府によってこの一帯が復興拠点と定められ、その鎮守として今の社地が寄進されたのだとか。そして寛文2(1662)年、太宰府天満宮に倣って社殿や楼門、心字池や太鼓橋が造営され、東の宰府として「東宰府天満宮」とも呼ばれるように。

今も昔も梅と藤の名所として名高く、中でも心字池に映る藤の花の見事さは見事。広重をはじめ多くの絵師が錦絵に描いて、さらにその名を広めました。
亀戸天神社の鷽替神事が執り行われるのは、1月24日と25日。「去年の悪(あ)しきはうそ(鷽)となり、まことの吉にとり(鳥)替えん」の言い伝えにより、木彫りの鷽が授与されます。


木彫りの鷽は大小様々で、お守りのように肌身離さず持ち歩ける小さな懐中鷽も。いずれも神職の方の手で丁寧に彩色され、一つとして同じものはありません。

亀戸天神社
住所:東京都江東区亀戸3-6-1
公式サイト:https://kameidotenjin-sha.jp/
その二 春日【牛天神北野神社】で、鷽替え神事とねがい牛のご利益にあずかる。
源頼朝が創建したと伝わる牛天神北野神社の鷽替え神事も、1月24日と25日の2日間。朝9時から鷽鳥の木彫りが授与されます。ころりと丸いフォルムの鷽鳥は、羽毛を膨らませて寒さを防ぐ冬のウソを思わせます。天神さまゆかりの梅鉢のご神紋も相まって、なんとも愛らしいものです。

また、1月24日と25日の2日間は初天神の記念御朱印も。書き置きではなく、ひと筆ひと筆、書き入れてくださるのでご朱印帳を持参しましょう。少し時間はかかりますが、有り難さはひとしおです。

今年は例年より早く境内の梅も綻びはじめているとのこと。牛天神北野神社の梅の木は9割が紅梅で、中には貴重な品種の枝垂れ梅も。鷽鳥の木彫を授かって、少し早い梅見を楽しめるとは、なんと縁起の良いこと!

また、境内の「ねがい牛」は、願いを念じながら頭を撫でると願いが叶うとか。源頼朝が奥州攻めの途中に、この地にあった牛の形の自然石のもとで休息を取った時、夢の中に菅原道真が現れて願いが叶うことを告げ、その後の戦で勝ったことが由来。天神さまにとどくよう、心を込めて祈るべし。かわいらしい鷽と霊験あらたかなねがい牛、遠からぬ春を告げる梅。一石三鳥のお詣りを楽しみましょう。
牛天神北野神社
その三 東京随一の古社【湯島天満宮】の味わい深い木鷽。
湯島天満宮の創建は、なんと雄略天皇2(456)年! 社伝によれば、勅命により天之手力雄命を御祭神に創建され、時代が下って菅原道真を勧請。文武2柱の神を祀るお社として身分を問わず崇敬され今に至ります。


不忍池を望む高台にある境内は、古くからの梅の名所。また幕府公認の富くじ興行が行われ、大いに賑わったとか。男坂・女坂を登り切った鳥居前からの風景を、広重は好んで画題としています。

1月25日は初天神祭が催行された後に、木鷽が授与されます。樹皮を残した枝の先を削って赤と黒で彩色したデザインは実にシンプル。なんとも言えない味わい深さを感じさせます。足元に白で描かれた梅鉢のご神紋もかわいらしいものです。

初天神の頃は、境内の梅が花を咲かせ始めるタイミング。白梅を中心に300本もの梅が咲き誇ります。お詣りをして木鷽をお迎えしたら、梅林で可憐な花を愛でたり、境内の露店をのぞいたり。のんびりと不忍池まで足を伸ばすのも楽しいものです。


湯島天満宮
お散歩がてらお出かけ、吉をもたらす鷽鳥と素敵な春を迎えに行きませんか。
text_Mutsumi Hidaka


















