財も福も熊手でかっこめ。江戸から続く酉の市へ。

財も福も熊手でかっこめ。江戸から続く酉の市へ。
開運担当歴16年ライターHのご利益道しるべ|運気が上がる私の参拝ルート#13
財も福も熊手でかっこめ。江戸から続く酉の市へ。
FORTUNE 2025.11.23
11月、酉の日に開かれる酉の市は、晩秋から冬にかけての風物詩。大判小判に大福帳、福々しいおかめの面に”めでたい”の鯛…。賑々しい縁起物満載の熊手を商う露店が門前や参道に並び、あちこちから威勢の良い掛け声と商談成立の手締めが聞こえてきます。
「お手を拝借、イヨォー!」や「商売繁盛、ますます繁盛 よぉ〜お」など掛け声は様々ですが、いずれも粋でいなせ。これぞ江戸の風情です。
浅草・長國寺
浅草・長國寺の大きな縁起熊手。

酉の市は良い正月を迎えるための最初の祭礼。江戸っ子がこぞって訪れ、松尾芭蕉の弟子である宝井其角たからいきかくも「春をまつ ことのはじめや 酉の市」と詠みました。

1年の無事を感謝して次の1年の開運招福を祈る。この節目に気持ちを区切って、未来に目を向けるのは私たちにとっても大切なこと。暦のめぐりで今年の酉の市は2回、二の酉が連休最終日の11月24日にあたります。縁起熊手や熊手守りで財も福も良縁もたっぷり掻きこみ、2026年に向けて運気を上げていきましょう!

その一 かみさま&ほとけさまの両参りで、福を授かる浅草酉の市。

露店の規模も参詣客の数も日本最大とされるのが浅草酉の市。毎年、隣り合う長國寺ちょうこくじ鷲神社おおとりじんじゃに市が立ち、大変な人出で賑わいます。

江戸時代の鷲神社おおとりじんじゃは鷲大明神とも呼ばれて長國寺ちょうこくじと境内を共有しており、田圃を挟んで吉原の遊廓とご近所さん。酉の市の日には、いつもは閉じている通用門が開放され、見物客の通り抜けが許されたのだとか。そのおかげもあってか浅草酉の市は盛況を極め、その様子が多くの浮世絵に描かれました。

浅草・長國寺
酉の市帰りの3人連れを描いた錦絵。田んぼの中の参道先に幟旗や鳥居が見え、参詣の人々が列をなしている。広重、豊国『江戸自慢三十六興 興の丁銘物くまで』(国立国会図書館デジタルコレクション)より。

酉の市の由来には諸説あり、一説によれば江戸近郊の花又村(現在の足立区花畑)の鎮守・鷲大明神に収穫の感謝を捧げる祭礼が起源だとか。氏子が鷲大明神に奉納したニワトリは、祭礼の後で浅草寺まで運び観音堂前で放してやったのだといいます。花又の酉の市は社前で辻賭博が開帳されたこともあって、江戸市中から人々が訪れ盛況となりますが、その後賭博禁止令が出たこともあり、やがて酉の市の賑わいは鷲大明神が勧請された浅草長國寺に移りました。

それから現代に至るまで、浅草酉の市は江戸の賑わいを伝えています。

浅草・長國寺
浅草・長國寺の酉の市。晩秋にもかかわらず、集まる人の熱気で額にじわりと汗が浮かぶほど。

長國寺ちょうこくじでは、古くから開運招福の熊手守りがあります。その名も「かっこめ熊手守り」。小さな熊手に稲穂と御札がついたもので、江戸っ子たちは髪や襟首に差して粋を気取ったのだとか。今も変わらず酉の市限定で授与されています。

浅草・長國寺
昔ながらのシンプルな「かっこめ熊手守り」。このほかに「金運かっこめ守り」や
「開運大熊手守り」なども授与。
長國寺

東京都台東区千束3-19-6
http://otorisama.jp/

明治政府の神仏分離策により、鷲大明神は鷲神社となり長國寺と分割されます。鷲神社によれば酉の市は、神代の昔に日本武尊が東征の勝利を天日鷲命あめのひわしのみこと(=鷲大明神)の社に祈願し、その御礼参りした日が11月酉の日だったことに由来するとされます。

浅草・長國寺
巨大な縁起熊手とたくさんの提灯を掲げた参道。

鷲神社おおとりじんじゃの酉の市は午前0時の一番太鼓を合図にスタート。「鷲舞ひ」が奉納され、熊手御守の授与が始まります。なんでも、祭礼の始まりとともに熊手御守を最初に手にした人は、一番札をもらえて24金の純金小判根付と交換してもらえるのだとか。但し、どの御札場から一番札が出るかはヒミツで限定3本のみ。ハードルは高いけれども、トライする価値はありそうです。

information
鷲神社

東京都台東区千束3-18-7
https://otorisama.or.jp/

その二 酉の市のルーツはここから。花畑・大鷲神社。

酉の市発祥の地とされ「花畑おとりさま」の別名でも知られる神社。室町時代に御祭神の日本武尊やまとたけるのみことの命日とされる11月の酉の市に祭礼が行われ、農具や農産物を売る市が立つように。これが後に酉の市になったといわれます。その賑わいは、参詣の人々の重さで千住大橋が下がるほどだったとか。

花畑・大鷲神社
棟札に寛永元年(1624)9月上棟と記された、権現造の拝殿。

いつの頃からか熊手に稲穂と御札のついた「かっこめ」が授与されるように。今も「かっこめ」は「開運扇」と共に酉の市限定の授与品です。

花畑・大鷲神社
大鷲神社の「かっこめ」と「開運扇」。「かっこめ」は運を掻き込むように熊手の形をしているとも、社名になぞらえ幸運を鷲掴みにするよう鷲の足をかたどっているとも伝わる。

その三 新宿・花園神社。祭りの賑わいは靖国通りや明治通りにまで。

新宿の総鎮守・花園神社の酉の市は別名「大酉祭」。関東三大酉の市のひとつとして知られています。境内いっぱいに熊手の露店が所狭しと並び、参詣の人で溢れんばかり。酉の市名物の切り山椒を含む食べ物の屋台は境内だけでなく靖国通りや明治通りにまで続き、お祭り気分を盛り上げます。

新宿・花園神社
花園神社の酉の市では熊手の露店が60以上、参詣の人手は毎年60万人とも。

新宿ゴールデン街や歌舞伎町が近いこともあり、海外からの観光客も含めて夕方以降は一層賑やかに。お参りの後に御守りや熊手を手に入れてから、おでんと熱燗を楽しむのもオツなものです。

information
花園神社

東京都新宿区新宿5-17-3
http://hanazono-jinja.or.jp/

これを機に縁起熊手を求めようと思っているなら、まずは小ぶりなものを! そこから年々、大きくしていくのが吉といわれます。サイズもデザインも店によって様々。じっくり見て周り、これぞ!という熊手を見つけましょう。そして帰り道は、より大きな福をかっこめるよう、熊手を正面に向けて高く掲げて意気揚々と進むべし。

向こう1年、運を開き福を呼び込む相棒として大切に。来年の酉の市で大きな熊手を求められるよう精進しましょう。

Videos

Pick Up