あなたはどう思う? 精神科医・星野概念のあまから恋わずらい No.12「チョコと恋」
Hanako本誌で連載中の精神科医・星野概念さん「あまから恋わずらい」を掲載。今回は、1169号「チョコレートと冬の男。」特集よりお届けします。
今回のテーマは、「チョコ」と恋。
今回のHanakoの第一特集は「チョコ」。完全にバレンタインデーに照準を合わせた特集にあたり思い出すのは小学校2年の時の2月14日。当時、相撲部屋の体験稽古で「君、筋がいいな!」と勧誘されるほど相撲に見合った体型だった僕ですが、「飛ばない○○はただの○○」でおなじみ、映画『紅の豚』の主人公ポルコのように、むしろ人生で一番モテていた記憶があります。そんなポルコにとって、2月14日はいくつのチョコをもらえるのだろうと楽しみな日。しかし、なんと学校ではゼロ。うーん、きっと家に届けに来るに違いない。夕方。やはりチョコはゼロ。そろそろポルコとしての矜持を保てず、元ポルコに成り下がりかけた僕。母が情けのチョコを渡そうとしたその時、「ピンポーン」。キタ?ドアの直前までダッシュ。その後余裕のある表情を作りドアを開けると、なんと当時好きだった女子が立っています。キ、キタ!やっぱり俺はポルコだ!その女子が差し出すチョコを興奮して受け取ろうとすると「星野は2番だから遅くなっちゃった」と一言。え……?外を見ると1番の男が既にチョコを手にして待っています。本命と一緒に2番のところに来るなんてどれだけ小悪魔なんだ!僕はヤケになってそのチョコを一気に食べましたが、まさかのウィスキーボンボンで、人生初の泥酔を経験しました。泣きっ面にチョコ。さすが小悪魔、ていうか悪魔!
星野概念 ほしの・がいねん/精神科医として総合病院に勤務。雑誌・webでの執筆業や、音楽活動も行う。いとうせいこう氏との共著『ラブという薬』が発売中。
(Hanako1169号掲載/illustration : Misaki Tanaka text : Gainen Hoshino)