朝食に焼き立てのパンを! 夜間に焼き上げ朝食までに配達!パン屋さん〈ぱん工場 寛〉が気になる!
焼きたてが命のパンを、朝食に間に合うよう夜間に焼き上げ、毎日自転車で配達する〈ぱん工場 寛〉。そんな世にも珍しいパン屋さんをご紹介します。
話題のパン屋さんがあるのは、雑居ビル内!?
まさかここじゃないでしょうねってトコにあるパン屋。都立大学の駅近く。カラオケスナックや居酒屋が並ぶ雑居ビルの2階。
ライトに「ぱん」と書いた紙が貼ってあるところが〈ぱん工場 寛〉だ。たった一人で開業してから、今年で丸12年になる。でも、なんでココ?
いまの〈ぱん工場 寛〉に至るまでとは?
店主・田中朋広さんのこれまでの道のりは、くねくね。
スタッフとしても参加。2006年都立大学に〈ぱん工場寛〉オープン。妻は薬剤師として勤務。
大学を出て大手企業に勤めていたが、5年で脱サラ。センスがなくても力仕事ならできると、なぜかパン屋を目指す。修業するうち、奧さんが将来に備え、調理師免許をとってくれた。ちょうどその頃、薬局の経営に誘われたため、いったんぱんの方は休止。その間に奥さんが大学に再入学、薬剤師の免許をとってくれた。何という快挙。すごい奥さんだ。ひと安心の田中さん、いよいよパン屋へと大きく舵を取ることに。
自宅近くに現在の場所を見つけ、工場を構える。わずか3坪、10 m2 ほどの場所に大型のパン焼きマシンがドンドンと2基。それだけでも暑苦しく、圧迫感があるが、ここが田中さんの戦場だ。
最初の頃はまったく売れず。向かいのスナックのママさんはじめ、同じビルのお店の人が買ってくれて、お客さんのおみやげにしてくれた。そのおかげで、少しずつ客が増えていった。
朝食に間に合うよう夜間に焼き上げ、配達し続ける。
パンは朝、焼きたてを食べてもらいたいからと、牛乳屋さんみたいに朝までに自転車で配達する。以前はこの工場での販売もしていたが、今は配達のみ。
食ぱんは1斤270円、丸ぱん5個180円、ぶどうぱん250円、バナナぱん1斤470円(各税込)。家庭の朝食に間に合うよう朝6時までに配達する。雨の日も風の日も、配達は休まない。
「うちのパンは油脂を使ってないんです。油脂が入ると食べやすいし、『しっとり』が長持ちするけど、あきやすい」。そこでたどり着いたのが、継続的にリピートしてもらうためにはシンプルなのが一番いいということ。愚直にパンを作り続け、配達し続ける日々。世にも稀なパン屋である。
(Hanako特別編集『おいしいパンのこと、すべて。』/photo:Taro Hirano text:Michiko Watanabe)