【幡ヶ谷】テーブルを囲む幸せ。ビールとワインの垣根を越える〈SENNE〉のひとり飲み時間

【幡ヶ谷】テーブルを囲む幸せ。ビールとワインの垣根を越える〈SENNE〉のひとり飲み時間
今日は、あの街で一人呑み vol.13
【幡ヶ谷】テーブルを囲む幸せ。ビールとワインの垣根を越える〈SENNE〉のひとり飲み時間
FOOD 2025.12.03
よそ行きの私”に少し“”が混ざったような、どっちつかずの自分で楽しむ時間は外呑みならでは。そんな外呑みの醍醐味、たまには “ひとり”で味わいませんか。誰にも気を遣わなくていい。自分と対話をする。いつもじゃない人と出会う。知らない世界に飛び込めるひとり呑み、女性ひとりでも気負いなく楽しめる場所を、お酒業界の広報歴14年の児島麻理子さんが“あの街”で探索します。今回の街は幡ヶ谷
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児島麻理子
児島麻理子
株式会社TOAST 代表

お酒にまつわるプロデューサーやライターとして活躍。出版社、洋酒会社での広報の経験を生かし、お酒の楽しさを日々発信している。趣味は世界の蒸留所を巡ること。これまでに世界7か国国以上の蒸留所とバーを巡る。ハナコラボパートナー。2025年、お酒に特化したPR会社のTOASTを立ち上げ。Instagram:@mariccokojima

今回の街飲みは、幡ヶ谷。新宿まで2駅というアクセスの良さがありながら、老舗の多い「幡ヶ谷六号坂通り商店街」、約100店舗が並ぶ「幡ヶ谷六号通り商店街」、代々木上原に伸びる「西原商店街」など、世界でも類がないほどに商店街がひしめく、活気ある街です。

海外オーナーのバードッグフレンドリーなお店など、すべての人に優しい多様性があるのも魅力的。今回は住民たちの新しいコミュニティスペースにもなりそうなビアダイニングを紹介します。

大テーブルを囲み、ビールとワインの魅力を共有できる場所

一人のみにぴったりな幡ヶ谷の〈SENNE〉

ひとつの大きなテーブルで、その場に居合わせた人で料理を囲む“ターブルドット”という食事のスタイル。

本来はホテルの主人が料理を作り、ゲストとともに大きなテーブルで食事をしながらもてなすものですが、近年、各国のダイニングでそのスタイルが取り入れられるようになってきました。初めて出会う人とも、温かい繋がりを感じられる大テーブル。幡ヶ谷に誕生したのは、ビールとワインの垣根も越えて人を繋ぐ、画期的なターブルドットです。

一人のみにぴったりな幡ヶ谷の〈SENNE〉の店内
一人のみにぴったりな幡ヶ谷の〈SENNE〉のワイン
滋賀県の湖西にある〈中川木工芸 比良工房〉で作られたオリジナルのボトルクーラーには、ボトルビールとワインが。

店名の〈SENNE〉(セネ)とは、ベルギービールで有名なランビックの起源となる地域にあるゼンヌ川に由来します。ビールを揃えているからこその店名ですが、ここはただのビアレストランではありません

「日本だと、ビールとワインの造り手って分かれている印象があると思います。ですが、ヨーロッパだとワインの造り手がビールを作ったり、垣根はもっと曖昧。僕たちが扱うものも、ビールでありながらもワインのような味わいのものなど、その“間”にスポットを当てています」とドリンクをセレクトする木村駿吾さん。

一人のみにぴったりな幡ヶ谷の〈SENNE〉のスタッフ
ドリンク担当の木村駿吾さん

ヨーロッパでは新たな生産者も熟成系の「ボトルビール」に取り組むなど、食に合わせたビールの可能性としてひとつのムーブメントになっています。お店で揃うボトルビールは、熟成による豊かな酸味や果実感がワインとどこか共通する味わいです。〈SENNE〉では、ワイン派の人もビールを試したり、お酒のジャンルを超えたクロスオーバーが生まれています。

一人のみにぴったりな幡ヶ谷の〈SENNE〉のワイン
地下にはワインとビールのセラーが。今後はテーブルなども置いて、気軽に飲み比べができるような空間にしたいそう。

同じテーブルで料理を作るのは、総料理長の相川高志さん。「ビールとワインの垣根を超えることをコンセプトにしているので、お料理もどちらにも合わせられるもの。そのなかで、どんな組み合わせが美味しいかを、ゲストの皆さんと一緒に探っていけたらという気持ちで作っています

一人のみにぴったりな幡ヶ谷の〈SENNE〉の料理長
総料理長の相川高志さん

スパイスや酸のあるフルーツを使い、とにかく相川さんが美味しいと思うものを。イタリアンや中華などで分けられるものではない、ジャンルレスな創作料理を早速紹介していきます!

店のスペシャリテから、ストリートフードまで。至高の一皿に舌鼓

今日の一杯目は、ボトルビールとエビの組み合わせからスタート。ひとつずつ丁寧に開かれた甘えびはオイルに浸り、まるで美しい絵画のよう。〈SENNE〉のお料理は、盛り付けの美しさにもセンスが光ります。

ビールもワインも注がれるのは、短めステムでカジュアル感のあるワイングラス。テーブル上はどちらを飲んでいるのかわからないのも面白いところです。1杯ごとにワインとビールを変えても、酸の加減をきれいに合わせて、違和感なく繋いでくれます

一人のみにぴったりな幡ヶ谷の〈SENNE〉のフード
「赤海老のマリネ ライムリーフ」1,700円、ボトルビールは、Antidoot「The Lamb Ran Away With the Crown」1,500円

海老は唐辛子パウダーやディルを添え、ライムリーフオイルを。海老の甘味とハーブの爽やかさが広がります。ここに合わせるビールは、なんとタンポポ(!)とオレンジを使ったベルギービール。酸味もあるので、海老の料理にライムを絞ったような感覚。そこにタンポポ由来のフローラルな香りも重なります。味が深いながらも軽やかなボトルビールは、まさにワインを飲んだような飲後感。

「熟成系のボトルビールの造り手は、ワインの造り手のように自分たちで農園を持っていることも多くて、土地柄が反映されます。一方でたんぽぽを入れてしまうというような自由さもあるところが魅力的なんです」と、木村さん。なるほど、ボトルビールの魅力が分かってきました。

一人のみにぴったりな幡ヶ谷の〈SENNE〉
シェフとソムリエのふたりと同じテーブルを共有。ほかの方が注文したものを横目で気にできるのも、ターブルドットのよいところです。

続いて出てきた「ひよこ豆とチーズのフリット」はヨーロッパの屋台であるようなストリートフード。絶妙な水分量の配合で、カリっ、ふわっと仕上げています。感覚としては軽いチーズのサブレ。永遠に食べられるおつまみです。

一人のみにぴったりな幡ヶ谷の〈SENNE〉
「ひよこ豆とチーズのフリット ハリッサマヨ」880円
一人のみにぴったりな幡ヶ谷の〈SENNE〉
合わせるのは、2~5年熟成のビールをブレンドしたオランダのオーガニックビール、Tommie Sjefの「Saaz」1,500円。さきほどのビールから一転、味わいの深さがありチーズの旨味が増します。

この日の「本日のパスタ」は、定番で出すことが多いトマトベースのアラビアータ。そこにボジョレーの赤ワインを。唐辛子のスパイシーさとトマトのうまみが効いた上にたっぷりのペコリーノチーズをかけたパスタは、イタリアの食堂で食べているようなパンチのある味わいです。締めに欲しいものを分かってくれています。

一人のみにぴったりな幡ヶ谷の〈SENNE〉
本日のパスタ(1,600円~)と、Romuald Valotの「CHENAS」1,300円
一人のみにぴったりな幡ヶ谷の〈SENNE〉

幡ヶ谷でオープンしてから約2か月。幡ヶ谷は“共存の街”という印象だそう。

「街も昔からあるお店も新しいところも共生している感じがありますし、おじいさんも若者もフラットに楽しみながら、色々な方が暮らしている。そんな街でこのテーブルを色んな人に囲んでもらいたいです」(相川さん)

さまざまな人が暮らす幡ヶ谷にあるターブルドット。この街だからこそ、ここから始まる広がりに期待が持てそうです。

一人のみにぴったりな幡ヶ谷の〈SENNE〉
information
SENNE
SENNE
幡ヶ谷

場所:東京都渋谷区幡ヶ谷2-47-1 1F/B1F
営業時間:15:00〜23:30
定休日:なし(月、火はバー営業)
TEL:03-6300-7444
公式インスタグラム:@senne_hatagaya

“ターブルドット”の楽しみ方がもっと分かる〈SENNE〉の魅力をまとめたYoutubeも必見です。

text_Mariko Kojima photo_Miyu Yasuda

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