【清澄白河】女将のカウンターでしっぽり過ごす。“かまびすしい”小料理と蒸留酒の粋な出合い

【清澄白河】女将のカウンターでしっぽり過ごす。“かまびすしい”小料理と蒸留酒の粋な出合い
今日は、あの街で一人呑み vol.12
【清澄白河】女将のカウンターでしっぽり過ごす。“かまびすしい”小料理と蒸留酒の粋な出合い
FOOD 2025.10.10
よそ行きの私”に少し“”が混ざったような、どっちつかずの自分で楽しむ時間は外呑みならでは。そんな外呑みの醍醐味、たまには “ひとり”で味わいませんか。誰にも気を遣わなくていい。自分と対話をする。いつもじゃない人と出会う。知らない世界に飛び込めるひとり呑み、女性ひとりでも気負いなく楽しめる場所を、お酒業界の広報歴14年の児島麻理子さんが“あの街”で探索します。今回の街は清澄白河
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児島麻理子
児島麻理子
株式会社TOAST 代表

お酒にまつわるプロデューサーやライターとして活躍。出版社、洋酒会社での広報の経験を生かし、お酒の楽しさを日々発信している。趣味は世界の蒸留所を巡ること。これまでに世界7か国国以上の蒸留所とバーを巡る。ハナコラボパートナー。2025年、お酒に特化したPR会社のTOASTを立ち上げ。Instagram:@mariccokojima

今回は清澄白河にやってきました。〈東京都現代美術館〉に象徴されるアートや、サードウェーブコーヒーの先駆け店といったカフェもひしめき合う文化的な街ですが、実はお酒の街でもあります。

都市型ワイナリーの先駆けの〈フジマル醸造所〉をはじめ、近年クラフトビールジンの蒸留所ができるなど、お酒文化は年々成熟。今日はそんなお酒の街で、蒸留酒に特化した小料理屋でひとり飲みです。

カウンター8席の小さな空間で、酒と食が織りなす大人時間

招き猫に和菓子のお道具の板に描かれた看板。入口から可愛らしく出迎えてくれるのが、門前仲町清澄白河の間にある〈かまびす〉です。

清澄白河のかまびす
清澄白河のかまびす

〈かまびす〉は蒸留酒と小料理のワンアンドオンリーな組み合わせを見せてくれる名店です。女将で料理人モミさんと、チーママちひろさんに会いに、いざ扉をオープン。

清澄白河のかまびす
オーナーの奥様でチーママの一場ちひろさん

このお店でよく聞かれるのは“かまびすしい”という言葉。「”かまびす(噌)”とは、一言でいうと賑やかな状態。味噌の噌ですが、象形文字としては『口+曾』で『言葉が積み重なる』という意味です。イメージとしては、いろいろな人やお酒が入り混じって、微生物のように醸しあうようなお店になったらと思っています」(ちひろさん)

その言葉通り、お店はいつもカウンター越しも、お客様同士もとても賑やか。ひとりで来ていても、“かまびすしかった!”と思いながら帰ることもしばしばです。

清澄白河のかまびす
オーナーが蒸留家を務める「虎ノ門蒸留所」のクラフトジン

蒸留酒をテーマにしたのは、オーナーが蒸留家であることから。クラフトジンや本格焼酎などの日本の蒸留酒に特化しているので、流行りであってもメニューには“ナチュラルワイン:ないです。”と一言添えるほど。その潔さ通りに、カウンターには東京素材を中心にさまざまな花やハーブをボタニカルに使用したジンが並びます。

進化する焼酎、ジンのお湯割りまで!? 女将のペアリングセンスが光る

女将のモミさんの料理にあわせ、ちひろさんが蒸留酒と飲み方をセレクト。そんなピッチャーとバッターのようなやりとりをカウンター越しで見るのも、とても楽しい時間です。さて、今日の一球目は?

清澄白河のかまびす
前菜3種盛りとジンのお湯割り

この日の前菜には、クミンやシナモン、アジョワンなど、カレーに使うスパイスはほぼ入っているような味付けの、自家製ラッキョウ発酵白和え、そしていちじくバター。それに合わせて、ちひろさんが選んだお酒は、なんとジンのお湯割りです。

清澄白河のかまびす
女将であり、料理担当のモミさん

 「お料理は季節の食材を使っていて、スパイス自家製オイルもよく使っています。蒸留酒はドライなので、お料理にはコクと味の深さがある重めなイメージのものを作っていますね。前菜も最初から焼酎のロックでも受け止められるような、しっかりした味のものも入れていますよ」(モミさん)

清澄白河のかまびす
ジンも焼酎もお湯割り推し。ここでお湯割りに目覚める人も多いとか。

「北海道の赤丸薄荷(あかまるハッカ)という原生和種のハッカを使ったジンのお湯割りです。温かいのに清涼感があって、なんだかサウナに入ったような気分になりませんか?合わせて、いちじくバターを口の中で溶かしながら食べるととてもおいしいですよ」(ちひろさん)

夏バテした体に優しいお湯割りですが、このハッカジンのお湯割りは、暑い季節に飲むお湯割りの最高峰! 体を温めながら、爽やかに冷やしてくれるまさにサウナな一杯。ちひろさんの表現力はメニュー上でも光っていて“アンバサのような芋焼酎トニックソーダ”、“紅茶のような芋焼酎ソーダ”など、蒸留酒はじめての方でも想像しやすいドリンク名が並びます。

清澄白河のかまびす
8席のカウンターだからこそ、注文は気軽に相談しながら。

さて、2球目のお料理は「静岡釜あげしらすとピーマン ハーブオイルあえ」です。

バゲットの上には、細く繊細に切られたピーマンとしらす、そしてモミさん自身が育てたというカレーリーフが乗せられています。オイルはさまざまなハーブを漬け込んだ自家製のハーブオイル。ピーマンの苦みとハーブが絶妙な相性で、オリエンタルな雰囲気もある一皿です。

清澄白河のかまびす
静岡釜あげしらすとピーマン、ハーブオイルあえ 1,100円

これに合わせるちひろさんのお酒は「キンモクセイのジンのソーダ割り」。

「お花のジンって食事に合わないと思う方も多いのですが、花もハーブと思ってもらえると、こういうお料理に合うことを感じてもらえると思います」(ちひろさん)

ちなみに、使用されているキンモクセイは東京・青梅にある小学校で摘まれたもの。お酒からその風景が見えてくるのも、ジンの面白いところです。

最後の投球はお互いがこの組み合わせしかないよね、と語る「手割りフライドポテトとMOTO(ジャガイモ焼酎)の水割り」。

清澄白河のかまびす
手割りフライドポテト900円、MOTO水割り1,000円

ジャガイモは品種の違う4種類の芋をブレンド。水分量が違い、触感や味が微妙に異なるので、食べ飽きない一皿です。そこにジャガイモ焼酎をあわせると、芋のうまみがさらにアップ。フライドポテトにこれ以上合う組み合わせは、もはや想像ができません。

清澄白河のかまびす

「料理とお酒の香り同士が手を繋ぐようなイメージで作っています。食べた人が自分なりの発見をしてもらえたら嬉しいなと想像しながら作っています」と語るモミさん。今日のお料理もしっかり手を繋いでいました。

清澄白河のかまびす

門前仲町と清澄白河の間にあり、街の人の距離感が近く“清澄村”とも呼ばれるこのエリア。お料理とお酒同様、街のみなさんとも手を繋ぎながら、今日も“かまびすしい”夜が繰り広げられています。

〈かまびす〉
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場所:東京都江東区深川1-8-12 パーソナルハイツ門前仲町
営業時間:17:00〜22:00
定休日:日・月曜
TEL:070-8957-5794
公式インスタグラム:@kamabisusii

記事には載せきれなかった、かまびす流ペアリング体験はまだまだたくさん!よりお店を深掘りしたYoutube動画もチェック。

text_Mariko Kojima photo_Miyu Yasuda

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