今、新潟ワインコーストがアツい!
ブドウ畑を臨むレストラン兼ワイナリー〈フェルミエ〉

LEARN 2023.11.14

新潟県新潟市の市街地から車で約30分。日本海の海岸地帯にワイナリーが連なり、それぞれの造りを貫きながら産地の個性を形成している。日本産プレミアムワインの産地「新潟ワインコースト」にある〈フェルミエ〉を、ワインバー&ビストロ〈uguisu〉と〈organ〉でオーナーシェフを務める紺野真さんと、紺野さんの一番弟子的存在で〈サプライ〉のオーナーソムリエールである小林希美さんが訪ねた。

新潟のテロワールを世界に伝える、砂地のアルバリーニョ

ワイン産地、新潟。ワイナリーの数や生産量では、長野や北海道に及ばないが、際立った特徴がいくつかある。その一つが、周遊・滞在が可能な5軒のワイナリーが連なる「新潟ワインコースト」があること。もう一つが、〈フェルミエ〉の本多孝さんが造るアルバリーニョがあることだ。

「クリーンで緻密で、ナチュラル。品種とテロワールの個性が詰まったワインだと思います」

と、紺野真さん。本多さんとの出会いは5年前、新潟市内のワインバーでポップアップイベントを開いたとき。元銀行マンの本多さんは39歳で脱サラして故郷・新潟でワインメーカーの道を歩み始めた。老舗ワイナリー〈カーブドッチ〉でワイン造りやワイナリー経営を学び、同ワイナリーが栽培に着手したアルバリーニョの畑を譲り受け、2006年に〈フェルミエ〉を設立した。

自社畑はワイナリー周辺に広がる。写真はカベルネ・フランとアルバリーニョの畑。ほか、新潟市南区東萱場と北海道余市町の契約栽培農家のぶどうも使用する。
自社畑はワイナリー周辺に広がる。写真はカベルネ・フランとアルバリーニョの畑。ほか、新潟市南区東萱場と北海道余市町の契約栽培農家のぶどうも使用する。

2023年9月、紺野さんが久しぶりに訪れた〈フェルミエ〉は、収穫のただ中。初訪問となる小林希美さんは「こんなに細やかに手入れされた畑は初めて見ました」と、感嘆の声を漏らした。

2005年に植えられた“日本で一番古い”アルバリーニョの畑からの収穫。9 月初旬から段階的に行われるが、近年は異常気象も加味して判断している。
2005年に植えられた“日本で一番古い”アルバリーニョの畑からの収穫。9 月初旬から段階的に行われるが、近年は異常気象も加味して判断している。

スペイン北西部、リアス・バイシャス原産のアルバリーニョは欧州系品種の中では湿気に強い。

「この辺りは砂地で水はけもよく、海岸まで1キロで、海風の影響を受ける環境もリアス・バイシャスに似ている」と本多さん。

その可能性に賭け一年一年を積み重ね、新潟の〝海のアルバリーニョ〞を世界に誇る品質に育ててきた。所有する2ヘクタールの畑ではほかにカベルネ・フランやピノ・ノワール、ピノグリなどを栽培している。

畑が見えるテイスティングルームやレストラン、ショップを併設し、ワイナリーツアーも開催 (要予約) 。
畑が見えるテイスティングルームやレストラン、ショップを併設し、ワイナリーツアーも開催 (要予約) 。

「今年は梅雨の雨量が尋常でなく、ベト病が深刻で。と、思ったら7月後半からは若木が枯れるほど雨が降らず、ハードな年でした」と、酷暑で枯れた木々で赤く染まった角田山を指さしながら話す。気候変動による異常気象は、ヴィニュロンには脅威だが、それでも除草剤や化学農薬なしのぶどう栽培を貫く。「対処していくしかない」という本多さんの言葉を噛みしめるように、紺野さん、小林さんも山を見上げた。

発酵の過程で、タンクの上部にたまった果帽(果皮や果肉、種など)を攪拌するピジャージュの作業。本多さんが専用の作業着を着て、自ら行う。
発酵の過程で、タンクの上部にたまった果帽(果皮や果肉、種など)を攪拌するピジャージュの作業。本多さんが専用の作業着を着て、自ら行う。

〝細やか〞な仕事は、セラーでも同じ。「発酵は酵母に任せ、酵母が働きやすいコンディションを整えることが大事」と、果実から液体まで、重力を利用したグラヴィティ・フローで移動し、温度管理も徹底。設備への投資も手間も惜しまないのは、ぶどうが蓄えた「土地の味」をそのまま液体にするためだ。「とにかくぶどうや液体に負荷をかけないようにと、とことんデリケートな仕事に頭が下がるばかりです」と、紺野さん。

計12種類の試飲会
計12種類の試飲会

その後、テイスティングに移る。初めに畑や仕立てに応じて醸造されたアルバリーニョ3種に加え、陰干しの甘口ワイン、赤のフラッグシップであるカベルネ・フランや、北海道余市町の契約栽培農家のケルナーが続き、計12種類にも及んだ。

「白はもちろんですが、赤も、特にピノ・ノワールが印象に残りました」と、小林さん
「白はもちろんですが、赤も、特にピノ・ノワールが印象に残りました」と、小林さん

「品種や造りは違っても、すべて本多さんの味。やっぱりクリーンで緻密。今回、試飲をして、アルバリーニョに苦みを合わせてみたくなりました。山菜や鮎、牡蠣、かぼすなどの柑橘の皮とか。今のタイミングでお邪魔でき、いい刺激になりました」
 
紺野さんは、本多さんと近い再会を約束しつつ、駆け足の滞在をそう締めくくった。

WINERY & RESTAURANT FERMIER

住所:新潟県新潟市西蒲区越前浜4501
TEL:0256-70-2646
営業時間:11:00~17:00(レストランは15:30LO、ディナーは完全予約制)
定休日:火休ほか不定休あり
HP:https://fermier.jp/

フェルミエを訪問したのはこちらのお二人

photo_Satoshi Nagare text_Kei Sasaki

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