今、新潟ワインコーストがアツい!
ブドウ畑を臨むレストラン兼ワイナリー〈フェルミエ〉
新潟県新潟市の市街地から車で約30分。日本海の海岸地帯にワイナリーが連なり、それぞれの造りを貫きながら産地の個性を形成している。日本産プレミアムワインの産地「新潟ワインコースト」にある〈フェルミエ〉を、ワインバー&ビストロ〈uguisu〉と〈organ〉でオーナーシェフを務める紺野真さんと、紺野さんの一番弟子的存在で〈サプライ〉のオーナーソムリエールである小林希美さんが訪ねた。
新潟のテロワールを世界に伝える、砂地のアルバリーニョ
ワイン産地、新潟。ワイナリーの数や生産量では、長野や北海道に及ばないが、際立った特徴がいくつかある。その一つが、周遊・滞在が可能な5軒のワイナリーが連なる「新潟ワインコースト」があること。もう一つが、〈フェルミエ〉の本多孝さんが造るアルバリーニョがあることだ。
「クリーンで緻密で、ナチュラル。品種とテロワールの個性が詰まったワインだと思います」
と、紺野真さん。本多さんとの出会いは5年前、新潟市内のワインバーでポップアップイベントを開いたとき。元銀行マンの本多さんは39歳で脱サラして故郷・新潟でワインメーカーの道を歩み始めた。老舗ワイナリー〈カーブドッチ〉でワイン造りやワイナリー経営を学び、同ワイナリーが栽培に着手したアルバリーニョの畑を譲り受け、2006年に〈フェルミエ〉を設立した。
2023年9月、紺野さんが久しぶりに訪れた〈フェルミエ〉は、収穫のただ中。初訪問となる小林希美さんは「こんなに細やかに手入れされた畑は初めて見ました」と、感嘆の声を漏らした。
スペイン北西部、リアス・バイシャス原産のアルバリーニョは欧州系品種の中では湿気に強い。
「この辺りは砂地で水はけもよく、海岸まで1キロで、海風の影響を受ける環境もリアス・バイシャスに似ている」と本多さん。
その可能性に賭け一年一年を積み重ね、新潟の〝海のアルバリーニョ〞を世界に誇る品質に育ててきた。所有する2ヘクタールの畑ではほかにカベルネ・フランやピノ・ノワール、ピノグリなどを栽培している。
「今年は梅雨の雨量が尋常でなく、ベト病が深刻で。と、思ったら7月後半からは若木が枯れるほど雨が降らず、ハードな年でした」と、酷暑で枯れた木々で赤く染まった角田山を指さしながら話す。気候変動による異常気象は、ヴィニュロンには脅威だが、それでも除草剤や化学農薬なしのぶどう栽培を貫く。「対処していくしかない」という本多さんの言葉を噛みしめるように、紺野さん、小林さんも山を見上げた。
〝細やか〞な仕事は、セラーでも同じ。「発酵は酵母に任せ、酵母が働きやすいコンディションを整えることが大事」と、果実から液体まで、重力を利用したグラヴィティ・フローで移動し、温度管理も徹底。設備への投資も手間も惜しまないのは、ぶどうが蓄えた「土地の味」をそのまま液体にするためだ。「とにかくぶどうや液体に負荷をかけないようにと、とことんデリケートな仕事に頭が下がるばかりです」と、紺野さん。
その後、テイスティングに移る。初めに畑や仕立てに応じて醸造されたアルバリーニョ3種に加え、陰干しの甘口ワイン、赤のフラッグシップであるカベルネ・フランや、北海道余市町の契約栽培農家のケルナーが続き、計12種類にも及んだ。
「品種や造りは違っても、すべて本多さんの味。やっぱりクリーンで緻密。今回、試飲をして、アルバリーニョに苦みを合わせてみたくなりました。山菜や鮎、牡蠣、かぼすなどの柑橘の皮とか。今のタイミングでお邪魔でき、いい刺激になりました」
紺野さんは、本多さんと近い再会を約束しつつ、駆け足の滞在をそう締めくくった。
WINERY & RESTAURANT FERMIER
住所:新潟県新潟市西蒲区越前浜4501
TEL:0256-70-2646
営業時間:11:00~17:00(レストランは15:30LO、ディナーは完全予約制)
定休日:火休ほか不定休あり
HP:https://fermier.jp/