東京喫茶店研究所二代目所長・難波里奈さんがナビゲート。 今、行っておきたい、文化遺産的喫茶店。#3
語り継がれるエピソードに触れる。

FOOD 2023.05.26

次々と消えつつある、古き良き昭和の純喫茶。店が紡いできた歴史と物語、人々の想いこそ、「文化遺産」そのものだ。そこで東京喫茶店研究所二代目所長・難波里奈さんが、喫茶店ラヴァーにはおなじみのお店、ビギナーも存分に楽しめるお店を厳選。「映画やドラマのロケに利用される店だけでなく、歴史に名を残す著名人とゆかりのある店も多数。彼らがそこでどんな時間を過ごしたのか。想像するのも楽しい」

1.〈コーヒー・ロン〉

“井上ひさしが、執筆活動の拠点・四ツ谷で日課として訪れていた喫茶店。”

学生時代に住んでいたこともあり、作家・井上ひさし氏の執筆活動の場は、決まって四ツ谷。午前11時に来店し、まずはタマゴサンドとミルクセーキで腹ごしらえ。1時間の散歩に出て再びお店へ戻り、コーヒーとお喋りを楽しんで帰るという日課だった、と二代目マスターの小倉洋明さん。井上氏の数多の名作は、この店を源に誕生したようだ。

2.〈Flor de Café 樹の花〉

“1979年夏、開店4日目にジョン・レノン&オノ・ヨーコがお忍び来店。”

窓越しに歌舞伎座を望む席に座り、ジョンはコロンビア、ヨーコはダージリンを注文。それぞれのオーダーを待つ間、二人はゆっくりと煙をくゆらせ、静かな時間を過ごしていたそう。いまもファンが訪れる“聖地”は、BGMも本棚もやはりビートルズずくめだ。

3.〈ブリッヂ〉

“向田邦子が駆け出し時代に足繁く通った店。”

開業時は近くに勤める編集者や記者が多く利用していた〈ブリッヂ〉。編集者時代の作家・向田邦子氏もその一人で、人が行き交うにぎやかなデパートの様子を眺めながら原稿の執筆をしていたという。

photo:Kenya Abe, Chihiro Oshima, Natsumi Kakuto text:Wako Kaneshiro, Moe Tokai, Ami Hanashima, Yoshie Chokki edit:Yoshie Chokki

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