沖縄の素材の個性を引き出す〈萌菓〉のお菓子づくりとは?
独特の気候風土と歴史から生まれた、沖縄のスイーツ。素材の個性を引き出し、皮や種も生かすお菓子づくりをするのは〈萌菓〉の西尾萌美さん。カーブチー、ピバーツといった亜熱帯ならではの素材の魅力に夢中になっています。2月28日発売1218号「沖縄」特集よりお届け。
お菓子から見えてくるのは、その土地の文化や歴史背景。
素材の個性を引き出し、皮や種も生かしきることにこだわってお菓子を作っている〈萌菓〉の西尾萌美(めぐみ)さん。沖縄に住む今は、シークワーサーやカーブチーなどの柑橘や、ピパーツ、月桃といったスパイスなど、亜熱帯の素材に夢中。
「このお菓子はなんでできたんだろうと考えてみると、気候風土が由来していることが多いんです。沖縄は高温多湿なので、お菓子がいたまないようにさまざまな工夫がされているのが興味深い。例えば、サーターアンダーギーという沖縄式の揚げ菓子は、日持ちさせるために油で揚げています。抗菌効果のある月桃の葉で包んでから蒸しているのは、カーサームーチーという伝統的な餅菓子。本島より稲作が盛んではなかったから、沖縄のお餅は餅米ではなく、米粉を蒸して作られているのも特徴です。バターではなく植物性油を使ったお菓子が多いのは、牛は暑さに弱く、牛乳の生産量が多くなかった土地だからかもしれません」
サトウキビの産地であることから、黒糖を使ったちんびん(沖縄風クレープ)やタンナファクルー(素朴な焼菓子)という郷土菓子もある。そして諸外国の文化が交ざっていて異国情緒が感じられることも沖縄らしさ。
「ちんすこうや冬瓜漬け、クンペン(ピーナツ餡の入った焼菓子)といった琉球王国から続く伝統菓子は、台湾や中国との交流の中で生まれたといわれています。王冠をモチーフにした鶏卵糕(ちいるんこう)や縁起菓子である松風(まちかじ)のように、赤やピンクがあしらわれているのは、中国でおめでたい色とされているから。また、ビッグサイズのケーキやパイといったアメリカンスイーツも、沖縄の人たちが子どもの頃からなじんできた味です。ざっくり混ぜて焼くだけでおいしくできるというところも、おおらかな県民性に合っているのかもしれませんね」
〈萌菓〉について
オンラインショップ。不定期で販売している季節ごとの菓子便の詳細はInstagramで案内。
Instagram:@houka_meguminishio
HP:https://shop.houka-meguminishio.com/