語り出したら止まらない!私の最愛料理本。ミュージシャン兼シェフ・長塚健斗
料理好きなら誰もが持っている“バイブル”的な存在を長塚健斗さんに聞きました。レシピに刻まれた思い出のエピソードとともに語られた、その“推し”の理由とは?
MY BEST COOKBOOK:『 VEGETABLES 』 Ferrandi Paris
唯一無二の味を追い求める僕の、 料理人としての独創性を高めてくれる一冊です。
ミュージシャンと料理人という2つの顔を持つ、長塚健斗さん。料理上手な母のもとで育ち、大学時代にはイタリアンやフレンチレストランで修業、ビストロの料理長も務めていた。「常に“おいしい”の一歩先にある忘れられない一皿を模索している」という彼にとって、料理本は新たなメニューを生むインスピレーションの源。「魅せ方や調理法など、僕の料理におけるアイデアの宝庫」と見せてくれたのは、英語で書かれているこちらだ。
「フランスの名門料理学校〈フェランディ〉による野菜の専門書で、さまざまな野菜の基本的な調理法や処理の仕方が詳しく解説されています。きちんと基礎が備わっていてこそ自分ならではの料理が生み出せると思うので、この本はその大切さを再確認させてくれる存在。パラパラと写真を見ているだけでも料理のイメージが膨らんできますし、引き出しが増えていく感覚が楽しいんですよ」
レシピも載っているが、その通りに作ることはしないのだとか。
「そのままではおもしろくないので、工程の一部を抽出して新メニューを構築したり、盛り付けのバランスを参考にしています。印象的だったのは、リンゴとキャベツをビールで煮てからキャベツの葉で包む温菜。煮汁を鹿肉のローストのソースに使ったりキャベツだけ煮てみるなど、さまざまにアレンジしてきましたね」
いざ人に振る舞う際は、ストックしてきたアイデアのピースを引っ張り出しながら、即興で調理する。
「スーパーで食材を見て、前菜からデザートまでの流れだけを漠然とイメージしてキッチンに立ちます。いわば、一人で即興のライブをしている感覚に近いかな。どう作ったか覚えていないことも多いんですが(笑)、これからも新たなアプローチを探求しながら、いい料理を作っていきたい。そう強く思った時に手に取るのは、やっぱりこの本なんです」
MY FAVORITE RECIPE:「赤キャベツの小包とリンゴのビール煮」
「どのレシピも作り込まれていますが、リンゴやキャベツをビールで煮る発想自体が珍しいので、工程一つ一つが興味深い一品です」