おひとり様推奨!ある夜、学校の生徒17人が忽然と消えた。世界中で大ヒットを果たしたネタバレ厳禁ホラー・ミステリー『WEAPONS/ウェポンズ』の見どころ

おひとり様推奨!ある夜、学校の生徒17人が忽然と消えた。世界中で大ヒットを果たしたネタバレ厳禁ホラー・ミステリー『WEAPONS/ウェポンズ』の見どころ
おひとり様映画#15
おひとり様推奨!ある夜、学校の生徒17人が忽然と消えた。世界中で大ヒットを果たしたネタバレ厳禁ホラー・ミステリー『WEAPONS/ウェポンズ』の見どころ
CULTURE 2025.11.27
デートや友達、家族ともいいけれど、一人でも楽しみたい映画館での映画鑑賞。気兼ねなくゆっくりできる「一人映画」は至福の時間です。ここでは、いま上映中の注目作から一人で観てほしい「おひとり様映画」を案内していきます。今回は映画『WEAPONS/ウェポンズ』について。鑑賞後はひとりで作品を噛み締めつつゆっくりできる飲食店もご紹介。

今作がおひとり様映画におすすめな理由

WEAPONS/ウェポンズ

観賞後ネタバレ全開で語り合いたくなること間違いなしの衝撃作。ただ映倫がR18+となっている通り、中々過激な映像や展開も含まれているのが気をつけたいところ。一緒に行く人を間違えると思わぬショックを与えてしまう可能性もあるので、気兼ねなく物語を堪能するためにもまずはおひとり様での鑑賞がおすすめ。

1980年代が「ホラー映画の黄金時代」と呼ばれるなら、2025年はホラーが再び宝玉の輝きを取り戻した「ホラー映画のルネッサンス」と呼ぶに相応しい年だろう。ホラー映画で歴代2位の興収記録を叩き出した『死霊館 最後の儀式』を皮切りに、大人気シリーズの待望の最新作として公開された『ファイナル・デッドブラッド』や『28年後…』、『ブラック・フォン2』など興行的にも批評的にも成功を収めた作品が続出。シリーズやリブートのみならず、オリジナル映画として過去10年間で米国内最大のオープニング成績を樹立した『罪人たち』や『コンパニオン』などの“完全新作”も続々とヒットを果たす、史上稀に見る「ホラー映画のアタリ年」なのだ。

そして本年のホラー映画を語る上で欠かせない作品がもうひとつ。それが11月28日に待望の日本公開となる『WEAPONS/ウェポンズ』だ。こちらも原作を持たぬオリジナル映画だが、謎と伏線が張り巡らされた巧みな脚本と圧倒的な面白さが口コミで広がり、3週連続全米週末興行ランキングNo.1&世界興行収入380億円突破という大ヒットを果たした。米レビューサイト「Rotten Tomatoes」では批評家スコア94%と絶賛一色で、賞レースで冷遇されがちなジャンルながらもアカデミー賞のノミネート候補作として注目を集めている。では本作の何がそれほど凄いのか?その大きな要素の一つが、ポール・トーマス・アンダーソン監督作『マグノリア』(99)に影響を受けたとザック・クレガー監督が語る巧緻な語り口にある。

舞台はペンシルベニア州の小さな町メイブルック。小学校教諭のジャスティン(ジュリア・ガーナー)がいつものように学校に向かうと、彼女が受け持つクラスで出席していたのは寡黙な少年アレックスただひとり。他の生徒17人は昨晩の午前2時17分、一斉に自宅を抜け出し行方不明となっていた。前代未聞の失踪事件に狼狽する保護者たちからあらぬ疑いをかけられたジャスティンは、校長のマーカス(ベネディクト・ウォン)から強制的に休職を言い渡されてしまう。

一向に進展を見せない事件にいてもたってもいられなくなったジャスティンは、唯一失踪しなかったアレックスが事件の手がかりを握っているのではないかと彼へと接近する。だがアレックスは固く口を閉ざしたまま何も語らない。その頃、愛息が失踪してしまった父親アーチャー(ジョシュ・ブローリン)は独自の調査を始めるが、やがて謎を追う彼らの周囲でも不可解な出来事が起こるようになり——。

ホラー・ミステリー『WEAPONS/ウェポンズ』の見どころ

ザック・クレガー監督は前作『バーバリアン』(22)で馴染みある「家に何かがいる」系ホラーを、時間の異なる3つの視点を織り交ぜることで、ミソジニーや性的搾取といった社会的テーマと予測不能のエンタメ性を合わせ持つ新感覚ホラーとして再構築した。語り尽くされたと思われたジャンルにストーリーテリングの力で新風を吹かせたその試みは見事に成功。その語り口の特異性が、最新作『WEAPONS/ウェポンズ』では更に進化している。

「小さな町で起きた子ども17人の失踪」という大きな謎を、本作は6人の異なる視点のタイムラインを自由に行き来しながら紐解いていく。生真面目そうなジャスティンが思わぬ一面を持つように、視点が変わるごとに登場人物への印象も目まぐるしく反転。時に思わぬ人物の視点も交えながら断片的なエピソードが有機的に繋がり、情報を補完し合いながら駆動する物語はどの方向に転ぶか最後まで予測がつかない。やがてすべての謎が繋がった後には怒涛のクライマックスが待ち受けているのだが、あまりの突き抜けっぷりに筆者は思わず拍手しそうになったほど。

ホラー・ミステリー『WEAPONS/ウェポンズ』の見どころ

前作同様に選択している題材自体が新鮮という訳では決してないのだが、それを「如何に語るか」という点を突き詰めたことで本作は成功したと言えるだろう。2023年始めにザック・クレガー監督がこの脚本を各スタジオに一斉送付したところ、製作権をめぐる激しい争奪戦が起きたというが、確かにそれも納得の見事な内容である。ただもちろん本作の美点はそれだけではない。ダークなユーモアを交えつつも、不穏さと独創性を全編に宿す映像設計も非常に印象的で、子どもたちが真夜中に家を飛び出す瞬間のシンボリックな姿は鮮烈に頭に残る。

役者陣の名演も本作を更なる高みへ引き上げる。『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』(25)のシルバーサーファー役が記憶に新しいジュリア・ガーナーが静かながら強い意志で真相を追い求める若手教師を好演したほか、同性パートナーと仲睦まじく暮らす校長役のベネディクト・ウォンはこれまで見せたことのないぶっ飛んだ演技を披露。また『フィールド・オブ・ドリームス』(89)などで知られるベテラン俳優エイミー・マディガンも思わぬ役柄で登場。近年は目立たない役柄の多かった彼女だが、本作ではこれまでのイメージを刷新する姿で観る者を驚かせる。トリッキーながら、本作で最も映画賞が期待される彼女の怪演には要注目だ。

ホラー・ミステリー『WEAPONS/ウェポンズ』の見どころ

今年公開作の中でも「面白さ」という点では間違いなくトップランナー級で、観賞後ネタバレ全開で語り合いたくなること間違いなしの一作。ただ映倫がR18+となっている通り、中々過激な映像や展開も含まれているのが気をつけたいところ。一緒に行く人を間違えると思わぬショックを与えてしまう可能性も。気を遣うことなく驚きに満ちた物語を堪能するためにも、まずはおひとり様で鑑賞するのはいかがだろうか。

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ライター

1988年、奈良県生まれのライター。主に映画の批評記事やインタビューを執筆しており、劇場プログラムやCINRA、月刊MOEなど様々な媒体に寄稿。旅行や音楽コラムも執筆するほか、トークイベントやJ-WAVE「PEOPLE’S ROASTERY」に出演するなど活動は多岐にわたる。


公開情報
『WEAPONS/ウェポンズ』
『WEAPONS/ウェポンズ』


2025年11月28日(金)より、新宿ピカデリー他全国順次ロードショー

https://www.warnerbros.co.jp/movie/c8r-63sq936/

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