やちむん、琉球ガラス、紅型など、今注目の沖縄作家の工房へ。

やちむん、琉球ガラス、紅型など、今注目の沖縄作家の工房へ。
やちむん、琉球ガラス、紅型など、今注目の沖縄作家の工房へ。
CULTURE 2025.07.14
沖縄には、土地の風土や文化に根ざした、今注目の作り手たちがいます。やちむんをはじめとする工芸やアートの分野で活躍する、沖縄発の作家たちを紹介します。
photo_MEGUMI(FUCLAY), Tsunetaka Shimabukuro(Chinen Bingata), Wataru Oshiro text_Masayuki Sesoko

1. 赤土から生まれるシンプルな暮らしの器、「やちむん」を探すなら〈FUCLAY〉

沖縄でやちむんを探すなら〈FUCLAY〉
〈FUCLAY〉の代名詞ともいえるゴブレットは、一つひとつ形が異なり、ゴールドに発色する釉薬の質感も美しい。各5,060円。

シンプルでありながら、どこか気品を感じさせる洋食器のような佇まいは、一般的に想像する沖縄の焼き物〝やちむん〞とはかけ離れているかもしれない。読谷村(よみたんそん)の窯元で修業したのち、今帰仁村(なきじんそん)に工房を構えた福岡周三さん、沙紀さん夫妻。沖縄らしい古民家の傍に工房を構え、日々二人で作陶している。

沖縄で〈FUCLAY〉を立ち上げた周三さんと沙紀さん
共に出身の滋賀県から沖縄県へ移住し〈FUCLAY〉を立ち上げた周三さんと沙紀さん。

やちむんのイメージにとらわれず、自分たちらしさを追求していくうち「シルエットがきれいで、置くだけでも素敵な器」に辿り着いた。沖縄の赤土を使い「金属っぽい質感を出したかった﹂という、こだわりの釉薬は自分たちで配合する。シンプルだけど、ほかにはない佇まいのやちむん。〈FUCLAY〉のような新しい感性を包含して、やちむんはその文化の深みを増していくのだと思う。

information
FUCLAY

住所:沖縄県国頭郡今帰仁村謝名27
営業時間:10:00~17:00
定休日:火水木金休
Instagram:@fuclay.2022

やんばるの小さな集落にある古民家。その傍に工房を建て、週に3日だけオープンしている。多肉植物などに似合う植木鉢も人気。

2. たくさんの人に愛される無色透明な再生ガラス、「琉球ガラス」を探すなら〈ガラス工房ブンタロウ〉

沖縄で琉球ガラスを探すなら〈ガラス工房ブンタロウ〉
コロンとしたかわいらしいフォルムから、ガラスという素材の個性が垣間見える。一輪挿し(中)各2,750円、同(小)1,500円。

「誰にでも気にかけてもらえるようなデザインを心がけています」。そう話すのは北中城村(きたなかぐすくそん)に工房を構える壷内文太(つぼうちぶんた)さん。廃瓶を利用して作る「琉球(再生)ガラス」の作り手だ。琉球ガラスというと気泡が多く入ったものや、カラフルな色が付いたものをイメージする人も多いだろうが、文太さんの作品はどれも無色透明。「手作りのガラスに触れるきっかけになってほしい」という気持ちから、独立当初は手に取りやすく、どこにでも置ける「一輪挿し」ばかり作っていた。

琉球ガラスの〈ガラス工房ブンタロウ〉の壷内文太さん
小さな窯が設置された工房。気温や体調、その日のコンディションを見極めながらガラスと向き合う。

「多くの人に手に取ってもらえているのは僕が楽しんで作っているのが伝わっているからだと思う」。現在はゴブレットなど作品の幅を広げていて、「ガラスの魅力をもっと知ってもらいたい」という思いで今日もガラスという素材と向き合っている。

information
ガラス工房ブンタロウ

住所:沖縄県中頭郡北中城村安谷屋1022
Instagram:@buntaroh_g

店舗として使用していたスペースの脇に小さな工房がある。月の制作期間は14日ほど。イベントへの出店も多いので工房見学はDMで要問い合わせ。在庫があれば購入可。

3. 今の暮らしに寄り添い歴史を継いでいく「琉球びんがた」を探すなら〈知念紅型研究所〉

琉球びんがた
祖父の代から工房に伝わる帯の図柄「蘭と七宝」(右)と「ぶどうに竹」(左)。どちらも繁栄や実りの願いが込められている。

扉を開けると奥に工房が見える。中に入ると11人ほどの職人が、着物や帯など、呉服屋や個人からの数百の注文を抱え、いくつも張られた反物に向き合い、それぞれ色差しなどの作業を行っていた。「紅型(びんがた)」とは沖縄の自然や文化を、鮮やかな色使いや図柄で表現する、伝統的手染物のこと。〈知念紅型研究所〉は琉球王朝時代に士族以上の階級が着用する紅型を制作する特権を与えられていた「紅型三宗家」の一つ「知念家」にルーツを持つ紅型工房だ。

琉球びんがたの〈知念紅型研究所〉の知念冬馬さん
柔和な物腰の知念冬馬さんだが、由緒ある工房を支え、確かなビジョンで紅型業界を牽引する存在。

若き10代目の知念冬馬さんは、忙しい制作の合間を縫って帯や着物の図柄の新作にも取り組む。それは紅型の歴史が続き、文化としてさらに根の深いものになるようにとの思いから。「着るものとして喜んでもらえる、今の時代の紅型を作りたいと思っています」

information
知念紅型研究所

住所:沖縄県那覇市宇栄原1-27-17
TEL:070-6590-8313
営業時間:見学10:00~16:30
定休日:土日祝休 ※見学は希望日の4日前までにHPから要予約。
HP:https://www.chinenbingata.com/

那覇空港から一駅、赤嶺駅近くにある工房。

4. 自然を身近に感じるつながりの一部となる「布と紙」を探すなら〈kitamio〉

沖縄で布と紙を探すなら〈kitamio〉
端切れで作ったコットンペーパーに、漂流物をあしらったオブジェ各3,500円。綿繊維ならではのやわらかな質感が目をひく。

草むらの間を入った先にある工房は、もともと山羊小屋だった。kitamioさんは、大学入学時に奈良県から移住。その頃ある展示会で沖縄の植物染めブランド「kitta」の作品に感銘を受け、飛び込みで訪ねて働かせてもらえることに。染めの工程や縫製などを学んだのち昨年独立。衣服を作るときにどうしても端切れが出てしまうことが気になり、その綿繊維を使ってコットンペーパーも作るように。

紙漉き用の桶(おけ)に映る空を見るkitamioさん。
元山羊小屋の工房はとても質素だけど感じが良い。紙漉き用の桶(おけ)に映る空を見るkitamioさん。

「紙漉すきをしていると、水面に空や植物が映るんです。それを掬(すく)い取って形にしている感覚。生活の中に、そういう自然との接点を作れたらいいなと思っています」。植物で衣服を染めることも、綿繊維で紙を漉くことも、絶え間ない自然の中の連鎖を表現するkitamioさんの、手段の一つなのだ。

information
kitamio

住所:沖縄県国頭郡今帰仁村字玉城16はなれ小屋
営業時間:11:00~16:00
Instagram:@kitami_o

染色や縫製、紙漉きなどを行う工房を不定期でギャラリーショップとしてオープンする。オープン日はInstagram をチェックして。

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