【福岡】世界遺産の地で出会う、再始動した300年超老舗酒蔵と茅葺き屋根レストラン。
2026年、福岡で改めて訪れたいエリアが宗像だ。2017年に「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」が世界文化遺産に登録されてから、まもなく10年という節目を迎える。
宗像大社をはじめとする神話の舞台。その歴史的価値は言うまでもないが、今この地を訪れたい理由はそれだけではない。ここで今静かに進行しているのが「老舗の進化」だ。歴史を守りながら更新する姿が、宗像に新たな魅力を生み出している。
福岡空港から公共交通機関で無理なくアクセスできる距離感も、このエリアを旅先に選びやすい理由のひとつだ。
300年の歴史を受け継ぐ開かれた酒蔵〈福岡 宗像 酒蔵 伊豆本店〉。
創業は江戸時代。宗像の地で長く親しまれてきた酒蔵〈伊豆本店〉は2年の休業期間を経て、2026年1月にリニューアルオープンした。
その歩みを支えたのが、同じ福岡県に拠点を持ち、「茅乃舎だし」でも広く名を知られる〈久原本家〉グループだ。同グループの社主・河邉哲司さんにとって、〈伊豆本店〉は母方の実家という縁もあり、志を継承する形で新たなスタートを切ることになった。

新しくなった蔵は、歴史を繋ぎながら、醸造蔵見学、酒蔵BAR、甘味など5つの体験エリアを備え、予約なしでも立ち寄れる“魅せる酒蔵”へと進化した。
基本的に自由に出入りできる開かれた空気がありながら、昔ながらの酒蔵の風景はきちんと残されている。
地元の米と水に向き合い、醸される新銘柄「宗像」。
今回の蔵の再興を象徴するのが、新銘柄「宗像」だ。原料は福岡県産の酒米と、新たに掘られた井戸から湧く清らかな地下水。この地の水は、発酵の後半になっても勢いが衰えず、しっかりと「食いきる(発酵を進める)」力強さを持つ。
酒造りを任された杜氏の若山健一郎さんはこう語る。
「300年続く歴史の流れを自分の代で切ってはいけない。ここは単においしい酒を造るだけでなく、いろんな人の思いのリレーを繋いでいく場所なんです」
「最初の4本(「宗像」3種と「亀の尾」)を出すにあたって大切にしたのは、お米と真っ直ぐに向き合うこと。例えば『寿限無(じゅげむ)』という米は蒸すと独特の甘みが出たりと、それぞれに面白い発見がありました。微生物の声を聞きながら、その個性をどう生かすか手探りで醸した結果、四者四様の味わいになりました。飲んで幸せを感じたり、心に寄り添えるようなものにしたい。この4本は、私たちがこれからどう進んでいくかを示す宣言であり、覚悟なんです」(若山さん)
未来へ繋ぐという情熱が込められた一滴。宗像の風土を映す酒を味わいたい。

目当てにしたい、ふわもちの「宗像 花酒まんじゅう」。
そして「宗像」の味わいを手軽にその場で楽しめると評判なのが、甘味の「宗像 花酒(はなさか)まんじゅう」。ひと口食べると、ふんわり。そしてもっちり。「宗像 純米 夢一献」の酒粕の優しい香りに、生地とあんこの柔らかな甘みが重なる。

もともと〈伊豆本店〉の蔵開きの名物として愛されていた酒まんじゅうを、現代の感覚にあわせて再構築。これを目当てに訪れたくなるおいしさだ。
もうひとつの「継ぐ」。
さらに「継ぐ」という点で見逃せないのが茅葺き屋根だ。この〈伊豆本店〉の茅葺の歴史が、次項の〈御料理 茅乃舎〉へと受け継がれていく。

住所:福岡県宗像市武丸1060
電話: 0940-32-3001
時間:10:00〜17:00(甘味は〜15:00)
定休日:不定休
公式サイト:https://www.kubara.jp/sp/izuhonten/
「茅乃舎だし」の原点。茅葺き屋根を守る〈御料理 茅乃舎〉へ。

宗像からほど近いエリア、久山町の里山に佇む〈御料理 茅乃舎〉。〈久原本家〉が営み、「茅乃舎だし」誕生のきっかけとなった料理屋だ。初夏には蛍の柔らかな光に包まれる、自然豊かなロケーション。その中でいただく丁寧に供されたお料理やスイーツは、特別な日にふさわしい。
ここでまず目を奪われるのが、2025年に20年ぶりの葺き替えを終えたばかりの壮大な茅葺き屋根。西日本最大級とも称されるこの屋根は、創業時にも携わった御年89歳の棟梁を中心に、全国から集まった職人の手仕事によって黄金色の輝きを取り戻した。

この茅葺きの原点は〈伊豆本店〉にある。〈久原本家〉の社主が〈伊豆本店〉で目にした葺き替えの光景。その記憶と感動が、〈御料理 茅乃舎〉に生きている。
毎日、営業後には「いぶし」を行い、手間を惜しまず屋根を守り続ける。大きな節目を超え、新たな時間を刻みはじめたまさに今が、最高の訪れどきだろう。
住所:福岡県糟屋郡久山町猪野 字櫛屋395-1
電話:092-976-2112
時間:11:00〜16:00、17:00〜21:30(火曜は昼営業のみ)/茶舎11:00〜21:30(火曜は〜16:00)
定休日:水曜日
公式サイト:https://www.kayanoya.com/shop/restaurant/
※予約はtablecheckから。
※無料送迎サービスも。詳細は予約時に要確認。
足を延ばして…〈久原本家 総本店〉で感じる迎える心。

帰りは〈御料理 茅乃舎〉からほど近い場所にある〈久原本家 総本店〉へ立ち寄りたい。同社が手掛ける各種ブランド「茅乃舎」や「椒房庵」の商品が一堂に並び、旅の味わいを自宅へ持ち帰ることができる。
おはぎや肉饅頭、だし玉子焼きなど、その場でいただきたい絶品グルメもチェックして。
ここではスタッフが店外に立ち、来客を迎え、送り出す。そういった所作に宿るおもてなしの心。宗像の旅から、さらに少しだけ足を延ばしたくなる理由がここにもある。
住所:福岡県糟屋郡久山町大字久原2527
電話:092-976-3408
時間:10:00〜18:00
定休日:元日
公式サイト:https://www.kayanoya.com/shop/sohonten/
















