食のプロのセンスをインテリアから学ぶ。 CASE44 小林孝延

食のプロのセンスをインテリアから学ぶ。 CASE44 小林孝延
連載〈HOME SWEET HOME〉
食のプロのセンスをインテリアから学ぶ。 CASE44 小林孝延
LEARN 2026.04.02
おいしいものを作る人、おいしい場所をプロデュースする人。食に関わるプロフェッショナルのセンスを、プライベート空間のインテリアから学びます。
photo_Tetsuya Ito illustration_Yo Ueda text & edit_Kei Sasaki
プロフィール
小林孝延
編集者

こばやし・たかのぶ/『天然生活』など料理と暮らしの雑誌の編集長を歴任。石田ゆり子著『ハニオ日記』などを編集。著書に『妻が余命宣告されたとき、僕は保護犬を飼うことにした』(風鳴舎)がある。
instagram:@takanobu_koba

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動物たちと共に、自然豊かな都市の“離れ”で。

買い物や電車移動にはやや不便だけれど、豊かな緑に囲まれた環境は、東京にいながらにして「別荘感覚」のくつろぎがある。保護犬1頭、猫4匹の、動物ファミリーと穏やかに暮らす、光あふれる家。

編集者小林孝延の家
パーケットフローリングはオリジナルを残した。家具の陰に隠れた福ちゃんと。この家で迎えた保護猫も4 匹。写真左はキャットステップを活用した“横取り防止”型の猫ごはんハウス。

体は大きく、もうすぐ10歳という年齢に思えないほど毛艶は美しく若々しいのだけれど、人並み、いや犬並み外れた怖がりで、初めての人は大の苦手。保護犬だった福ちゃんを家族の一員として迎え入れ、生活のスタイルを変えるべく越したのが東京都内の閑静な住宅街に立つマンションだ。大型犬が飼えて、静かな環境は自然も豊かで、散歩する場所にも事欠かない。

「小さな部屋くらいの広さがある玄関周りも気に入っているんです」と話す小林孝延さん。趣味のアウトドアも生活の一部で、ギアをメンテナンスするガレージ代わりの場になっている。

元の魅力を極力生かし、暮らしながら修繕を。

マンションだけれど、ご近所とは距離感のある分棟型。大きな窓の外には木々の緑しか見えない三面採光のリビングダイニングは、一軒家でもなかなか叶わない贅沢な空間だ。

転居の際、オリジナルの内装を生かしたい部分と手を入れたい部分を分け「暮らしながらリノベーションする」ことにした。最初に着手したのがトイレだ。

「ナーバスな福ちゃんが安心して暮らせるよう、まずは小さなところから変えていこうと」変化そのものに慣れることに加え、色味や材質などがストレスにならないか確かめるにはうってつけ。DIYで木の壁を張ったトイレは、結果、小林さんお気に入りの場所になった。

編集者小林孝延の家 キッチン
ステンレス製のラックに食器類をディスプレー収納。
編集者小林孝延の家 キッチン
キッチン。コーヒーマシンは〈デロンギ〉、クラシックな佇まいだが食器洗浄・乾燥機も完備。

プロに依頼し、大改修したのがキッチンだ。古いシステムキッチンにラフな無垢材を張り、床はモールテックスに。トップは大理石にし、壁のタイルは白か茶か、最後まで悩んでターコイズブルーにした。食器収納は、クラシックなカフェなどでポピュラーなステンレス製のラックをフランスから取り寄せた。取り出しやすく通気もよい。器などが並んで完成する見せ収納で、土や木の器やツール、絵つけの彩りなどが景色をつくっている。

編集者小林孝延の家 リビング
〈USMハラー〉のキャビネットはロボット掃除機が下に入れるようカスタマイズ。ライトは〈FLOS〉の「アルコ」。

リビングダイニングは、ともするとノスタルジックに見える壁紙をはがし、天井と合わせ白に塗り替えた。ここはDIY。

「もう大変で、業者さんに頼めばよかったと後悔した」と、振り返るが、たっぷり差し込む光と相まって、明るく清潔な印象を10年経った今も保っている。

名作家具が並んでなお優しい生活感がにじむ。

編集者小林孝延の家 イームズチェア
玄関ホールの一角。入浴後のひとときや読書タイムに活躍。

家具は「前の家のものだとサイズが合わない」という理由で、ほとんど買い替えた。〈ハーマンミラー〉の「イームズ ラウンジチェア&オットマン」を筆頭に、名作家具のオンパレードだが、〝ドヤ感〞がないのは小林さんと福ちゃんの柔和なお人(犬)柄ゆえ? 「便利なものは、取り入れる派です」と、猫の自動給餌器なども配されていて、ヴィンテージファニチャーの世界の中で、センスのよい生活感を醸している。

以前は長く吉祥寺に暮らしていた。「便利さで言えば吉祥寺が圧倒的。でも、自然と動物に囲まれて家に引きこもって過ごす時間が心地よくて、ちょっとした別荘感覚ですね」と、笑いながら話す。

転居のきっかけの一つが福ちゃんだったが、福ちゃんを迎えることになった経緯は、プロフィールに記した著書に詳しい。その時々でのベストを探った暮らしの選択は、ヒット作連発の敏腕編集者の仕事のペースも少しずつ変えてきた。最近は、学生時代に魅力にとりつかれて以来、探求を続けてきたスパイスカレーを商品化するなど、その枠組みまで変わりつつある。

「でも肩書きは編集者のまま(笑)。そうありたいという気持ちを込めてね」と話す表情には、人にせよ動物にせよモノにせよ、周囲全体を温かく照らす眼差しがある。自称〝引きこもり〞の拠点から、何かと何かを結び付け、人の心をつなぐ、新しい〝編集〞が生まれるのだろう。

編集者小林孝延の家 間取り
約22畳のリビングダイニングを中心とした150 m2 の3LDK。ポーチからホールまで含めるとかなりの広さがある玄関周りも贅沢。廊下の突き当たりの先がオフィス、その奥がゲストルーム。

【TODAY’S SPECIAL】キャンプ、そして旅。カレーがいつもそばに。

編集者小林孝延の家 カレー

若き日のアルバイトがきっかけでスパイスに魅了され、アウトドアからバックパックでのインド放浪の旅まで、人生はカレーと共に。写真は自作のチキンカレー。念願だったオリジナルカレースパイスミックスが完成、2026年4月5日に三軒茶屋〈スタンドカフェジャンクション〉のポップアップストアで販売予定。後日通販も。

【MY ESSENTIALS】広々とした家で、すみずみまでおろそかにせず。

(COFFEE)コーヒー愛あふれるツール。

編集者小林孝延の家 エスプレッソマシン

毎日飲むコーヒーは、気分でツールを選ぶ。欲しかったイタリア〈ビアレッティ〉の直火式エスプレッソマシンは、離れて暮らす長女からの贈り物。

(ART)アートを、暮らしの中に。

編集者小林孝延の家 アート

ダイニングに飾られた、夭折(ようせつ)の画家、黒坂麻衣の角の肖像シリーズの作品。居室だけでなく玄関、トイレなどいたるところにアート作品がある。

(REST ROOM)ついくつろぎたくなるトイレ。

編集者小林孝延の家 トイレ

リノベーション第一弾、DIYで修繕したトイレ。木の壁、アーティスト〈はいいろオオカミ〉の作品に古いシンクと、一つの世界が完結している。

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