食のプロのセンスをインテリアから学ぶ。 CASE43 山本亜由美
やまもと・あゆみ/埼玉県生まれ。会社員を経て、アクセサリーブランド〈マーダーポーレン〉を立ち上げる。2026年5月、初めて料理のレシピ本を出版予定。詳細および展示会、イベント情報などはhttp://www.murderpollen.jp/にて
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創作・日常の境目なく、“ワクワク”を形に。
必要なものをそろえるより、そばに置いておきたいものを集めて、活用できる空間を作る。自然と動物、頭の中で描かれるメルヘンの世界を作品にし、一部を暮らしに持ち帰る楽しい家づくり。

本職はアクセサリー作家だけれど、活動領域はその肩書をはるかに超えている。作品の展示会は空間インスタレーション込みの演出で、構成から制作まで自ら手掛ける。さらに料理!「好きが高じて」なのだが、フランス料理の中でも高い技術を要するパテ・アンクルート作りに挑み、創作春巻きは専用のインスタグラムアカウントのフォロワーが3万人超え。間もなく初のレシピ本も刊行されるとのことで、もはや趣味とはいえない創作活動の一カテゴリーだ。
絵本の世界を具現し、作品に、暮らしに生かす。

東京都江東区のマンションに住み始めて12年になる。それまで10年暮らした中目黒とは、町の雰囲気から都心へのアクセスまで何もかも違うけれど、わずかな家賃アップで2倍近い広さの部屋に住めるのが魅力だった。3LDKの間取りは一人暮らしならばゆとりがあり過ぎるくらいあっていいはずだが、実際はモノにあふれたラビリンス。住居とアトリエに加え、展示会に使用した、あるいはする予定の巨大なペインティングや丸太、木の枝などの倉庫機能も兼ねているからだ。いや、「倉庫」という言葉さえ適切でないほど、創作と生活の境界なき山本亜由美さんの頭の中を、この世に映したような空間である。

花や木の枝などに加え、野菜や果物もランダムにディスプレーされている。さまざまな動物、鳥、魚などのオブジェやアートピースの多さも特筆すべき点。室内の至るところに配され、どこか幻想的な景色を作っている。自然にあるものをモチーフに作られる〈マーダーポーレン〉のアクセサリーに同じ。そう伝えると「そもそもアクセサリーを作ろうと思って作っていないんです」との衝撃発言が。
「私が作りたいのは、童話や絵本の中のワンシーンのような一つの世界。展示会という形で具現したその世界を訪れ、楽しんでいただいて、体験や時間のお土産にアクセサリーを、よろしければ、という気持ちで」
永遠の憧れは、人気絵本シリーズ『ぐりとぐら』の世界。森の中、動物たち、おいしそうな食べ物、平和で優しい時間。そんな空間に暮らし、新たなシーンとしての作品を生み出し、展示が終わればその断片を持ち帰って生活の場に加え……の繰り返しで、世界はより深く、鮮やかに進化していく。
楽しさ重視のキッチンを好きな家具とDIYで自作。

まるで土を思わせるような、濃い色合いの木の家具も、彩り豊かな〝シーン〞のよきキャンバスになっている。
「引っ越し後間もなく、ベッドさえない頃にトルソーや縁に飾りのついた鏡を買って(笑)。〝必要だから〞より〝欲しいから〞が優先。好きなもの、心が動いたものは全部そばに置いておきたいから、飾ったり活用したりする方法を考える。そんな感じで部屋を作っています」
料理好きはキッチンにもこだわりが強く、「キッチンだけはリノベーションを」という人も多いが、「全然、考えなかった」と、きっぱり。棚などの収納は自作、しかも「ざっくり、目分量で」と、驚く言葉が飛び出す。
シンクの上に〝目分量DIY〞で作り付けた棚には調味料やスパイスが、打ち付けた板とフックを組み合わせただけの壁付き収納にはフライパンや鍋がずらりと並ぶ。モノは多いが、見せるもの、仕舞うものを振り分け、整理整頓されている。
室内に入ってすぐの壁際に設けられたカフェコーナー、パーテーション代わりの鏡のキッチン側に整えられたミニパントリー兼作業台など、小さな一角ごとに同じ絵本の違うページのような表情があるのが楽しい。アクセサリーの創作同様、料理や食べることへの、クリエイティブな愛着が伝わってくる。

【TODAY’S SPECIAL】ビジュアルはビビッド、
味わいはシンプル。

「マイブーム」に支配される食卓。毎日寝かせ玄米のときもあれば、近所によいパンの店が出来ればパンへと移行し……という具合。撮影時はパンのターンで、ハムとスプラウトでサンドイッチに。食卓の上にも気分が“アガる”仕掛けは欠かせず、スパイスを効かせた赤大根の鮮やかなすり流しと共に。味付けは塩だけが基本。
【MY ESSENTIALS】木や生き物と共に。作品世界と共通するしつらえ。
(FISHBOWL)花器を台座にした金魚鉢。

花屋で見つけた真鍮製の花器を逆さにして、金魚鉢の台座に。デコラティブな雰囲気をまといながら、水中と土に根ざす花の世界が溶け合う。
(ANIMAL)窓際に設けた「動物コーナー」。

好きな動物たちをいつもそばに。木彫りのクマは安田ジョージの作品、フクロウはボロ市の掘り出し物。シロクマは5歳から一緒のぬいぐるみ!
(BATHROOM)ドライリーフをトイレに。

展示会で使った植物は、ドライにして室内の彩りに。ユーカリなど香りのよいものは、トイレにまとめ「自然の消臭剤」に。真似したい。




















