東大特任教授のAI開発者・三宅陽一郎さんに聞く、「私たちがAIと歩む未来」
みやけ・よういちろう/京都大学、大阪大学大学院、東京大学大学院を経てデジタルゲームにおける人工知能開発・研究の第一人者に。博士(工学)。現在は東京大学等の特任教授を兼任。
技術の進化についていくためには今後、どんな考えを持てばいい?

「もうすぐ主体性を持つAIエージェントの時代になる」とAI開発者の三宅陽一郎さんは断言する。ChatGPTのような生成AIは、こちらからアクションを起こさなければ何も返さない。けれどAIエージェントは「メールの返信をしましょうか?」「資料作っておきましたよ」という具合に、自主的に人間をサポートしてくれるという。
「AIエージェントは自ら必要なアプリと連携できるので、道案内も翻訳もメール返信もまるっと対応してくれる。それらはAIエージェントひとつで完結できるため、スマホの画面上からアプリのアイコンがすべて消える可能性もあります」
そして、そんな未来は遠い先の話ではないと三宅先生。2025年は「AIエージェント元年」といわれ、大手IT企業がこぞってサービス提供に乗り出したという。
「AIエージェントを普及させようという挑戦は、実は過去にも何度かありました。例えば2000年代初頭までMicrosoft Officeの画面上にいたイルカ。エージェント機能を果たすために誕生したが姿を消した。なぜなら当時のAIの精度は、今よりはるかに低かったからです。最新の技術があれば、あのイルカも復活できるかも。AIエージェントの実質的なムーブメントがはじまるのは、おそらく2026年中。そして4、5年のうちにみんなのスマホの中にそれぞれの〝イルカ〞がいるような状況になるはず。さらに人間を介さずイルカ同士がやり取りをするといった新たなコミュニケーションも生まれそうです」
AIはドラえもんのような存在に?

AIエージェントの存在は、人間とAIの関係性をどう変えるだろうか。「今、AIは未成熟な過渡期。完璧に使いこなせるのは専門知識のあるエンジニアで、一般向けの生成AIもプロンプトの入れ方などで使い勝手が変わります。しかしAIエージェントはひとつの対象に話しかけるだけ。コンピューターだって1980年代には特殊なコマンドを覚える必要があったけれど、のちにマウスが普及して、音声操作も可能になった。AIも必ず使いやすい民主化の道を辿ります。もし今、苦手意識があるのなら無理に駆使しようとしなくてもいい。ただ、知っておくことは大事なので、便利だなと思う範囲で生活の一部に組み込むくらいの意識がいいと思います」
民主化が進めば、AIとの距離はより近づくことになる。「日本は『鉄腕アトム』や『ドラえもん』など多くのアニメや漫画でAI的な存在を〝仲間〞や〝相棒〞として描いてきた。プログラムとわかっていながら仲良くしたいという意識が根付いているんです。このユニークな距離感は、AIエージェントの発展に良い影響を与えると思います」
これから先、ますます生活から切り離せなくなるAIは頼れる相棒となるのか、自分を監視する存在になるのか…。
「AIの判断が正しいのか、そうじゃないのか、見極めるのは結局、人です。最後に大事になるのは一人ひとりの考え方。AIにすべてを委ねるのではなく、自分の中に問いを持ち、思考を続けることは、変わらず必要なこと。いいパートナー関係をAIと持てたらいいですね」



















