食のプロのセンスをインテリアから学ぶ。 CASE42 二部桜子
にべ・さくらこ/東京都生まれ。ニューヨークの大学で学び、アパレル関連企業に勤務し、計10年滞在。帰国後もバイヤーとして活動し、2017年〈SHUNNOKITCEN〉を立ち上げ料理家に転身。心と体、地球に優しい食のあり方を提案。
本連載「HOME SWEET HOME」の記事一覧はこちら。
母から娘へ、受け継ぐ思い、叶える家の形。
幼少期の体験から、家や住環境、暮らしについて、ちょっとやそっとでは語り尽くせぬ話を持つ。 親との同居を機に住み替えた都心の一軒家で、バリアフリーとサステナビリティを同時に実現した。

10年暮らしたマンションを手放し、都心に一軒家を持つ決意をしたのが5年前。きっかけは「「父が他界した後、母を一人にするのが心配だったから」と、二部桜子さんは話す。の間取りをスケルトンにし、夫婦二人暮らし仕様のにリノベーションしたマンションはとても気に入っていたけれど、二世帯同居には窮屈だった。高齢のお母様に優しいのはもちろん、自分たちの老後も見据え「長く暮らせる、暮らしたいと思うのはどんな家?」と考えたという。

〝シュウマイ〞でバリアフリー、高いハードルを越えて。
2年がかりで見つけた鉄筋4階建ての一軒家。一階がガレージ、2階がLDKで3階にふたつの寝室とバスルーム。ロフト付きの四階で民泊を営んでいる。「収益型マイホーム、略して〝シュウマイ〞と言うらしい。住み替えを決めたときから、プランに組み込んでいました」
東京都台東区に構えるアトリエからも好アクセスな立地は、観光客に高いニーズがあり、結果、大正解。でも、玄関から室内動線まで住居と分けること、加えて住居側にエレベーターを付けることが条件だったから、物件探しは困難を極めたのだ。

「当初はエレベーター付きで探したけれど、なかなか出てこない。結局、エレベーターを作れる物件に広げて探してようやく」
限られた内装工事予算の大半は、民泊の設備投資とエレベーター新設で消えることに。住居は、二階に絞ってリノベーションをした。
元は独立型のキッチンとダイニング、和室という間取りだったが、壁と段差を取り払って一続きの空間に。キッチンは壁際に火口を、新たに設けたアイランドの作業台にシンクを振り分けた「火に向かうより、洗い物をしたり、材料を切ったりする時間が長いから、その作業中に視界が開けていたほうがいい」というのが、その理由。169cmの身長に合わせて高めに設計した作業台は、壁面が国産材のチップになっているのもこだわりだ。「日本の林業や山林の環境保全などを考えたら、できるだけ国産材を使いたい」と、ダイニング、リビングのフローリングも国産材にした。「サスってるでしょう」と、笑って話すけれど、「サスる」、つまりサステナビリティを考えることは、仕事・私生活の別なく料理を作り、食べること、生きることの軸になっている。ベランダにフローリングの端材でのプランターを作り、野菜やハーブを育てる。傍らにはコンポストを置き、ゴミの削減と都会の小さな循環を実践している。

自然との繋がりを暮らしに都心でも、楽しみながら。
お母様は、挿花家・文筆家の二部治身さん。「わかりやすく言うとナチュラリストの走りですね」と説明する。二部さんが子供だった昭和50年代に「自然のある暮らし」を求め都心から「東京の山奥」に移住し、野菜を育て、天然酵母でパンを焼き、と時代を先駆けてきた人。「世の中バブルだっていうのに、うちのおにぎりは竹の皮に包まれていて、子供心に何なの?って」とは、今や鉄板の笑い話だ。
が、10年に及ぶアメリカ生活とアパレル勤務を経て食を仕事にしたとき、幼い頃に経験した食の本質が蘇る。季節を愛でるありがたみ、食卓と自然との繋がりを感じることの豊かさ。「季節の循環はそこかしこに。田舎でなくても、都心の家でもできることを証明したくて」
二部家にはもう一人(?)大事な家族、愛犬アズキちゃんがいる。食卓を彩る落ち葉や木の枝の収集は朝の散歩中だし、森での採取を兼ねたキャンプにも同伴する相棒。「アズキのごはんを作る時間が一番幸せ」と、野菜や鹿の骨を丁寧に炊き、命を余すところなくという〝サスった〞日々を、楽しんでいる。

【TODAY’S SPECIAL】彩り豊かな旬の野菜を余すところなく食す。

多種の野菜をスライサーで薄切りにして合わせ、オリーブオイルと塩が基本の軽い味付けで食べる「名もなきサラダ」が、ここ数年の食卓の定番。「いくつか火を入れることもあるし、肉の付け合わせにしても最高」とのこと。基本、皮ごと使い、それでも残るヘタや茎、硬い葉は、水で炊いてベジブロスに。
【MY ESSENTIALS】都心でも関われる、循環とサステナビリティ。
(COMPOST)ゴミを作らず、生かす仕組み。

新居で絶対に導入したかったコンポストは、ビギナーにも人気の「キエーロ」をDIY。臭わず、油もOK。ベジブロスのだしがらが分解を促進。
(TEXTILE)布も「再生と創造」で選ぶ。

下・残糸を活用する〈loomer〉のシェットランドウール100%のブランケット。老舗機屋の三代目が立ち上げた〈Watanabe Textile〉の布はカーテン等に。
(PLANTS)自然からの「賜りもの」が宝。

収集、採取する葉や枝、木の実。針葉樹やイチジクの葉は安全に洗浄し、森林浴をするように味わえる森のハーブのコンブチャに。採取は森の再生の一助にも。



















