神田愛花さん×銀座、ドライブ旅行など新連載まとめ12選|ひとりで見るべき映画、子連れカフェほか
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連載〈HOME SWEET HOME〉 食のプロのセンスをインテリアから学ぶ。 CASE26 中川たま

LEARN 2024.10.29

おいしいものを作る人、おいしい場所をプロデュースする人。
食に関わるプロフェッショナルのセンスを、プライベート空間のインテリアから学びます。

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恵みをもたらす庭と、愛する家具や道具に囲まれて。

自然をすぐそばに感じられる逗子に移り住んで20年になる中川たまさん。念願だった庭とアトリエを備えた家に使い慣れた家具を配し、仕事も暮らしも、四季の移ろいや恵みと共に。

ステンレスのシステムキッチンと、窓の外の緑とアンティーク家具が調和する台所。中が見えるビール用冷蔵庫は仕事専用。「食べちゃダメと家族にもわかる(笑)」
ステンレスのシステムキッチンと、窓の外の緑とアンティーク家具が調和する台所。中が見えるビール用冷蔵庫は仕事専用。「食べちゃダメと家族にもわかる(笑)」

東京・世田谷から神奈川県逗子市に移住して20年になるという。逗子の魅力を尋ねると「ほどよく田舎で、ほどよく都会。鎌倉のように人が多すぎず、葉山ほどお洒落じゃなくて、マイペースで過ごせる。海も山も近くて四季の移り変わりが感じられるのもいいんです」と、すらすら、答えが返ってきた。暮らすほどに愛着がわく逗子で、これまでに4回、引っ越しをしている。
「決して引っ越し自体が好きなわけではないのですが、娘の通学だったり住環境のことだったり、その時々の理由があって」
5年前から暮らす家は、3LDK、2階建ての一軒家。夫と、逗子で育って社会人になった娘との3人暮らしだ。

庭が決め手で選んだ、逗子で5軒目の我が家。

白に白が映える一角。棚は比呂樹さん作。右下のポスターは、ジャムなどを不定期で販売する中川さんのオリジナルブランドのもの。
白に白が映える一角。棚は比呂樹さん作。右下のポスターは、ジャムなどを不定期で販売する中川さんのオリジナルブランドのもの。

中川たまさんが現在の家を選んだ最大のポイントは、広い庭だった。キッチンと庭がつながる生活が、憧れだったのだ。元々敷いてあった砂利を取り除き、コツコツと果物の苗木やハーブを植えて、今や50種近くの〝食べられる植物〟を栽培している。
「レモンや柚子、湘南ゴールドなど柑橘いろいろ。梅は毎年20キロ穫れるし、ハーブももりもり育つんです」
無農薬、無化学肥料だから果皮ごと安心して食べられる。ハーブ類も、摘みたての新鮮な香りごと食卓に。四季の恵みと楽しみ方を『たまさんの食べられる庭 自然に育てて、まるごと楽しむ』(家の光協会)という著書にまとめている。
一角に、アトリエも建てた。
「夫がほぼセルフビルドで完成させました。とても小さな空間ですが、自宅の敷地内にあることで、格段に仕事がしやすくなりました」
リノベーションをDIYでという話はよく聞くが、一棟をセルフビルドとは驚きである。白で統一したアトリエは、窓から見える木々の緑が映える清々しい空間。料理教室や撮影に、小さなイベントにと大活躍だ。
夫の比呂樹さんは、長年勤めたアパレルメーカーを5年前に退職し、現在は鉄で家具や暮らしの道具を作る仕事をしている。自宅やアトリエで使うスツールなども、比呂樹さんの作品だ。

手を使い、丸ごと大事に。家具も、食べるものも。

アトリエの室内。約6畳とコンパクトだが、展示にワークショップと様々に姿を変える。
アトリエの室内。約6畳とコンパクトだが、展示にワークショップと様々に姿を変える。

夢のハーベストガーデンとアトリエを現実にした物件だが、家自体は理想からほど遠かったという。直近の住人はアメリカ人で「強烈な柔軟剤の匂いが第一印象。壁のペイントや装飾も、私たちの趣味とはかけ離れていた」から、一大リノベーションを敢行した。壁を白く塗り、床をナチュラルなフローリングに張り替え、吊り戸棚付きの昭和なシステムキッチンは、オールステンレスのものに替えた。大きな窓のすりガラスを透明なガラスに替えると、外の緑も鮮やかに、室内が格段に明るくなった。リビングも「まるでうちの緑みたいでしょ」とうれしそうに話す、お隣の庭木の借景付きだ。
「家具はほぼ買い替えたり、買い足したりしていないんです」と言う。アンティークのダイニングテーブルは10年選手。リビングとの境に置いた収納家具も2度の引っ越しを共にしている。娘さんはベッドを買い替えたが、成長期を共にした先代はリビングに場所を移し、中川さんがくつろぐスペースになっている。経年でくたびれた家具は、表面を削ったり磨いたりと、クラフトマンシップに優れた比呂樹さんがメンテナンスしてくれる。リビングの棚やキッチンの作業台も、比呂樹さんの自作だ。
ないものは作る、なるべく捨てない、手入れをして長く使う。エコだとかサステナブルだとかいう言葉を、中川さんが口にすることはない。けれど、それらが意味するものの核が、家族の暮らしに自然に備わっていて、それは「育てて、食べる」食の営みにもつながっている。

ダイニングテーブル用のスツール2脚も〈ieth ironthings〉のプロダクト。窓の外にアトリエが見える。
ダイニングテーブル用のスツール2脚も〈ieth ironthings〉のプロダクト。窓の外にアトリエが見える。
1階と2階を合わせて100 m<sup/>2 の広さがあり、ウォークインのクローゼットもある。敷地面積は50坪、逗子の住宅地は斜面が多いが、平地なのもポイントなのだとか。
1階と2階を合わせて100 m2 の広さがあり、ウォークインのクローゼットもある。敷地面積は50坪、逗子の住宅地は斜面が多いが、平地なのもポイントなのだとか。

サラダで、スープで欠かさずフルーツを。

桃とプラム、イチジクで作る夏と秋のあわいのサラダ。バルサミコとオリーブオイルをかけ、ミントを散らして。

「一日のどこかで、必ずフルーツを食べる」という大のフルーツ好き。ブルーベリーや柑橘など、庭の実りが主役になることも多い。ハーブも添えてサラダ仕立てにしたり、スープやスムージーにしたり。写真は桃とプラム、イチジクで作る夏と秋のあわいのサラダ。バルサミコとオリーブオイルをかけ、ミントを散らして。

ESSENTIAL OF -NAKAGAWA TAMA-

作り、食べて、くつろぐ。一人でも、家族とも。

( PERSONAL SPACE )
一日の多くを過ごすお一人様席。
小さなテーブルと娘さんのお下がりのベッドで“パーソナルスペース”。一人なら食事も仕事も昼寝もここで。元地域猫の愛猫・シロコもお気に入り。


( IRON TOOL )
夫の作品を、日々の調理に。
鉄工職人の夫・比呂樹さんのブランド〈iethironthings〉のキッチンツールは、家族の食卓でも大活躍。今や大人気で、受注の受付を待つ人多数。


( TABLEWARE )
“揃えず”に揃った白の器。
「同じ白はない」と、洋食器はアンティークの白が中心。「揃えるより、気に入ったものを都度」買い、統一感とバラエティを併せ持つコレクションに。


photo_Norio Kidera illustration_Yo Ueda text & edit_Kei Sasaki

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