【池袋から10分】創業3ヶ月で大人気店に。平成レトロを愛する人々がこぞって通う〈喫茶小雪〉。
この連載では、名喫茶、話題の人気カフェにインタビューし、お店の歴史と、そこで働く人がつむぐ思いを発掘していきます。今回は平成レトロを愛する人々がこぞって通う〈喫茶小雪〉の店主、倉田小雪さんにインタビューしました。
東武東上線池袋駅から5つ先にある、ときわ台駅。板橋区にあり、池袋の雑踏を感じつつも、どこか整然とした印象を受けるときわ台。そこから徒歩10分、落ち着いた住宅街の中に〈喫茶小雪〉はある。2023年12月の開店から3ヶ月後、お店の名が広がり、平成レトロを愛する人々の間で話題となった。今では行列のできる大人気店に。海外からもわざわざ来店する人がいるほど、お客さんが絶えない。

店内には3つのテーブル席とカウンター席。
豹柄の椅子に、赤紫のベロアの壁。一番目立つのは、今ではなかなか手に入らないであろう、中森明菜の大きなポスター。そしてカウンターの隅にはハローキティが大量に集まり、テーブル席の後ろには、螺鈿(らでん)細工が施された置床の上に、ギャルメイクをしたダルマがある。日本のポップカルチャーと伝統文化が混在し、その量と多様さに圧倒される。
店主は板橋育ちの倉田小雪さん。ファッションビジネスを学んだ後、神保町の〈さぼうる〉など複数の有名喫茶店で修行し、〈喫茶小雪〉を開店した。
店は、元々喫茶だった造り生かしつつ、豹柄の椅子や赤紫のベロアの壁などは新調した。開店して2年ほどだが、店には40年前にタイムスリップしたような香りが漂い、幼少期に友人の家に遊びに行った時のような、ほんの少しの緊張感と、家である安心感を同時に思い出させる。

当初は殺風景な店内だった!?お客さんと作ってきた店の個性。
カウンター奥にある、大量のハローキティ。何十年分のグッズが集まっているのだろうか。
「高校生のお客様の中にカウンターが苦手という人もいて。なので、その子たちがカウンターに座りやすいように、ハローキティを置き始めたのがきっかけです。カウンターって最初は殺風景だったんですよ。実は全て私が集めたものじゃなくて、近所の人やお客さんが、“小雪ちゃんが好きそう”と言ってくれたものがたくさんあるんです。他にも近所の方からの頂き物、たくさんありますよ。この明菜ちゃんのテレフォンカードとか。メルカリとかにも出品されてないくらいレアなものなんですけどね。」
最近の店作りのトレンドは、シンプルでミニマル。物が少なくて、整然としていて、無駄なものを一つ一つ削ぎ落としていき、合理的で洗練されているデザインが好まれる。対して、〈喫茶小雪〉は頂きものを一つ一つ店に置いてきたことで、お店の個性を作ってきた。けれども、その頂き物の堆積を雑に感じさせず、多くのお客さんが写真に納めたくなるのは、倉田さんのファッションビジネスや喫茶店などで培った妙技があるからこそだ。
実は店主は器の目利き!?
倉田さんの修行は喫茶店だけではなかった。
「喫茶店で働いた後に、日本の伝統工芸に惹かれて、盆栽の仕事と和雑貨屋の仕事をしていたので、陶器など器の勉強もしました。その経験が今すごく活きていると思います。」
店内で使用されているカップやお皿は、一皿一皿表情が違うオーダーメイドのものや、倉田さんがこだわって選んだブランドのもの、今は手に入らないものなどが使われている。倉田さんは「好きだから選んだ」と、理由を答えるが、この一皿一皿は、職人の手仕事の知識や、大量の作品を見て触ってきたからこそ、得られた審美眼によって集められたものだ。
店内にある盆栽は、見頃のものを倉田さんが手入れして飾っている。
「盆栽は、和室の床の間に飾るっていうのが正しい飾り方なんです。でも、床の間はお店にないので、こうやって“置床”を置いて、盆栽を飾って、“なんちゃって床の間”を店内に作っています。特注して作ってもらったダルマや好きなキャラクターも一緒に置いちゃってます。」
幼少期、友人の家に行った時に、自分の家とは違うものが置いてあったり、自分の家とは違う匂いを感じたりして、家庭の文化の違いに心おどったことはないだろうか。家だから安心感もあり、でも自分の家ではないからちょっぴり緊張を感じたり。友人の家族が出すジュースとお菓子は、自分の家だったら選ばれないお菓子だったりして。家庭の文化というものはそこに住んでいる人、一人一人の好みと習慣が集まっていてていてできていて、生活の息遣いを感じる。〈喫茶小雪〉に行くと、そんな感覚を思い出す。
この店は各家庭から持ってきた”頂き物”が個性を作っていた。その頂き物は、持ってきたお客さんの家の一部を形作っていたものだ。そんな日本のいろんな時代のいろんな家庭のものが、「ハローキティ」と「中森明菜」という共通点だけを持って、一つのお店にギュギュッと集まると、時代の厚みと物の量の厚みに圧倒される。けれども、ただの”家っぽい喫茶”じゃなく、どこかお店として、洗練された印象を与えるのは、倉田さんのファッションビジネスの勉強や、盆栽の経験などで培った妙技がそうさせているのだ。
どこか家っぽくてどこか店っぽくて。どこか雑然としてどこか整然としていて。日本のポップカルチャーもあって伝統文化もある。そんなアンビバレントなものが共存し、重なっていく面白さに、国内外から多くのお客さんは惹きつけられているのかもしれない。

東京都板橋区前野町2-2-5
営業時間:10:00~18:00
定休日:水木休
Instagram:@kissa_koyuki
















