一度行ったらハマる!京都に根付く“会館飲み”おすすめスポット4選

一度行ったらハマる!京都に根付く“会館飲み”おすすめスポット4選
FOOD CULTURE
一度行ったらハマる!京都に根付く“会館飲み”おすすめスポット4選
FOOD 2025.09.19
神事やお祭りが多く、おもてなしの心を大切にする京都には独自の食文化がある。今回は京都の「会館飲み」を識者とともに深掘りしました。
photo_Elephant Taka text_Shiho Yoshida
教えていただきました
加藤政洋
立命館大学文学部教員

かとう・まさひろ/専門は文化地理学、都市研究、沖縄研究。独自発展を遂げた京都の食堂も研究テーマのひとつで、近著に『京都食堂探究』(筑摩書房)。会館へは「隙間時間にサクッと」。

1. 〈たかせ会館〉

たかせ会館

表通りではなく裏通りに多く存在するのも会館の特徴のひとつ。現存最古で今なお現役のこちらも歓楽街、西木屋町の路地に位置する。2階建ての片側に店がずらりと並ぶ独特の造りは、火事で残った部分を会館にしたためとか。音楽専門のバーなど、趣味人が集うカルチャー系の会館でも。

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2. 〈四富会館〉

四富会館

加藤さんも「初心者を案内するならここ」と太鼓判。通路の両サイドにカウンターのみの酒場が連なるレイアウトで、最深部にある蔵も店舗として活用。日本ワインをテーマにしたバーから小料理屋まで、店のジャンルも様々。店主も気さくな人物が多く、会館内でハシゴもおすすめ。

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3. 〈湯浅会館〉

湯浅会館

実力店オーナーの旗振りにより、2024年にオープン。街なかの人気店が多く出店したことも話題に。「あるから使うという従来の会館とは違い、若い世代が町家という空間に価値を見出して上手に活用している。メンタリティとしては、2000年頃に増えた町家再生系のカフェなどが近いように感じます」。

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4. 〈折鶴会館〉

折鶴会館

「真偽は定かではないですが、東京オリンピックの年に路上の屋台を収容したのが起源とも」。京都の会館では唯一の平屋。実は複数の建物で構成されているため、加藤さんの言う「ひとつ屋根の下」の条件は満たさないが、レトロな雰囲気は昭和の会館そのもの。焼鳥の人気店をはじめ、会館らしい酒場が揃う。

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京都の「会館飲み」とは

近年、よく耳にするようになった「会館飲み」というワード。これは現在、京都市内に50軒前後ある「○○会館」と呼ばれる場所で飲酒することを指す言葉であり、そのムーブメントはこれまで会館とは無縁だった若い世代にも浸透しつつある。

話を進める前に、そもそも京都における「会館」とは。京都の都市研究を通じ、2013年頃から、会館なる異形の存在に着目してきた加藤政洋さんによると、「大阪の会館に見られるような鉄筋コンクリート造ではなく、〝木造〟であること」が京都の会館の最大の特徴という。調査によると、現存する最古の会館は木屋町にある「たかせ会館」で、誕生は戦後の昭和30年前後。空襲の被害が少なかった京都には町家に代表される木造の住宅建築が多く残っており、それを飲食テナントに転用したのがはじまりだ。ひとつ屋根の下、廊下を隔てて複数の店舗が軒を連ねる独特の間取りは、町家という出自に由来する。会館という名称については「戦前、祇園に登場した『祇園会館』(現在は閉館)の影響が大きい。5階建ての全フロアに酒場が入居するという革新的なビルで、それに憧れた人たちが真似をして命名し、広まったと考えられます」。

あるものを壊すのではなく、活かして遺す。京都人らしい知恵から生まれた「会館」は時を経て、京都の日常の風景になった。会館の楽しみといえば、個性的な店主と安くて早くて旨い酒肴。狭小の店内と呼応するように集まる客もなかなかにして濃い。どの会館も表からは店内の様子が分かりづらい構造のため敷居が低いとはいえないが、「四富会館」と「折鶴会館」は観光客も多いため、事始めにはぜひこの2軒を勧めたい。興が乗ったなら、会館内でハシゴもいいだろう。老朽化等で減少の一途を辿る会館だが、うれしいニュースもある。加藤さんも熱視線を送る「湯浅会館」に代表される新世代の台頭だ。深化する会館飲み。これもまた、未来に遺したい京都の食文化だと思う。

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