「東京駅イーストエリアは、1980年代SOHOのよう」 USAで生まれ育った同級生が“NIPPON”と世界の架け橋に。日本茶カフェ〈ShiZen Tea〉、現代美術ギャラリー〈KOKI ARTS〉の繋がり。
下町情緒が残るオフィスエリアだった東京駅イーストエリアを活気づけ、よりクリエイティブで居心地のいい街へと導く注目スポット。人形町の日本茶カフェ〈ShiZen Tea〉、馬喰町の現代美術ギャラリー〈KOKI ARTS〉のオーナーに、世界からの視点でこのエリアを語ってもらいました。
USAで生まれ育った同級生が“NIPPON”と世界の架け橋に。
ニューヨーク近郊で生まれ育ち、慶應ニューヨーク学院で学んだギャラリストの石橋高基さんと食材貿易業を起業した麻生陽介さん。
「自分たちが子供だった1980年代はイチロー以前。日本人=カラテという反応でした」と麻生さん。「家に遊びに来た友達が夕食を食べて帰ったら、友達の親が慌てて『生魚食べさせてないよね?』と電話してきたことも」と石橋さんも笑う。武道を広めていた師匠との出会いもあり、高校時代、麻生さんは剣道、石橋さんは空手に打ちこんだという。その後、大学に進み東京で暮らすことに。「友人と山梨に旅行した時に食べた桃がもうおいしくって…!!」と麻生さん。ギフトになるクオリティの日本の食材に可能性を感じ、それを世界に届けたいと思うように。
日本茶が産地や淹れ方によって全く違うことにも驚いた。「お茶を担いでアメリカへ売りに行っていたんですが、ちょうどそのころ、サードウェーブのコーヒーが広まり、日本にもじっくりスローダウンするような場があってもいいんじゃないかと思うようになりました」という麻生さんが昨年人形町にオープンしたのが、日本茶に特化した〈ShiZen Tea〉。
麻生さん自らがレクチャーする英語でのワークショップには多くの外国人観光客も参加する。
一方、NYと日本のアートの架け橋となってきた石橋さん。「強制収容された日系アメリカ人の肖像画を通じてアイデンティティを考察する中村亮一さんの作品も扱っています。自分は彼が問題提起したテーマを投げかける側。米国と日本での反応の違いも興味深いですね」と語る。そういう背景を知るきっかけになるのもアート。日本の若手作家を海外に紹介する機会も増えた。
麻生さんの〈ShiZen Tea〉がオープンし、「ご近所」となった今、カフェに〈KOKI ARTS〉で扱う作品を展示するなど、学生時代以上に交流も広がった。
新旧がミックスされたEATSは1980年代のSOHOのよう。
二人がスタートアップの地に選んだのが東京駅イーストエリア。〈KOKI ARTS〉がある馬喰町は清澄白河からアートシーンが拡大し、カフェなども増えてきた。「最初アクセスのよさから惹かれたのですが、古いビルや問屋街があったり、新しいものと歴史が共存している雑多な感じが、自分が子供時代を過ごした80年代のSOHOと共通し、何かが始まりそうな息吹を感じます」と石橋さん。「人形町は老舗から革新的な専門店まで、日本の今のグルメを網羅した街」と麻生さんもここから発信する意義を確信している。
〈ShiZen Tea〉/人形町
古民家を改造したカフェ。
■東京都中央区日本橋人形町3-4-11
■050-5806-2824
■10:30~19:00(日~18:00) 不定休
■12席(2階座敷席あり)/禁煙
〈KOKI ARTS〉/馬喰町
篠田守男や中村亮一など幅広い世代の現代美術作品を扱う。
■東京都千代田区東神田1-15-2 ローズビル1F
■03-3565-8650
■12:00~19:00 月火水祝休
(Hanako特別編集『East Area of Tokyo Station Magazine』掲載/photo : Junko Yokoyama text : Noriko Maniwa)
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