「赤べこ」や「会津塗」など、職人さんの手仕事が光る福島の工芸品5選
1. 会津の厳しい風土が育んだ木綿布を、モダンで身近なアイテムに。〈HARAPPA〉の「会津木綿」
肌触りがよくハリがあり、洗って使って乾かすたびに、とろんとやわらかな自分だけの布に育っていく。一度使ったら手放せなくなる会津木綿は、かつて野良仕事の服に使われた堅牢(けんろう)な生地だ。
「夏は暑く冬は凍えるほど寒い会津で、400年前から愛されてきたのがこの木綿。夏は涼しく冬は温かく、一年中使えます」
そう語るのは、糸の染めから織りまでを手がける唯一の会津木綿工場〈HARAPPA〉の矢作和歩さん。伝統を守りつつ今の暮らしに合う服や小物の同名ブランドも展開する。
「一番の魅力は風合いです。手間はかかっても綿本来の質感が残りやすい〝かせ染め〞で染色し、昔ながらのシャトル織機(しょっき)で生地を織る。節のある糸を緯糸(よこいと)に使い、ザラッとした昔の木綿の肌触りにも近づけています」
会津木綿の特徴でもある、簡素で洒落た縞模様を生かした、モダンなデザインもたまらない。毎日使いたくなるものを作ることが、伝統を未来へつなぐこと。そんな想いが伝わってくる。

会津若松で120年続いた〈原山織工場〉。その技術を継ぐ形で設立された工場が〈HARAPPA〉。工場併設の直売所は第4金・土曜のみ営業。
住所:福島県会津若松市日吉町4-25
TEL:0242-36-7903
2. 懐かしい古民家で出合ったのは、思わず笑みがこぼれる素朴な手仕事。〈橋本広司民芸〉の「三春張り子」

「高柴デコ屋敷」と呼ばれる集落が郡山市にある。デコとは方言で張り子のこと。木型に紙を張って乾かし、型を抜いて中空にしたところへ色や柄を付ける手仕事だ。和紙の産地でもあった旧三春藩領では、約300年前に縁起物の張り子人形作りが始まった。
以来、ほとんど変わらぬ製法で、ダルマや干支人形を作ってきた集落には、今も4軒の工房が残っている。その一つが〈橋本広司民芸〉。17代目の橋本広司さんは、「いい張り子っていうのは、作った人の我(が)が見えないのよ」と言いながら、淡々と絵付けの筆を動かしている。
「ご先祖さんの作った張り子にも自我はない。空っぽの心になるのは難しいんだけど、自分が出ないように我を捨てて、ご先祖さんが続けてきたことを、そのまま次につなげるんです。ありがたいなあってね、感謝だけを思いながら作ってる」
ひとつひとつ手作りされる張り子は、眺めるだけでうれしくなるほど素朴で温か。ちょっとずつ表情が違うのもご愛嬌だ。
住所:福島県郡山市西田町高柴字福内41
TEL:024-971-3900
営業時間:9:00~17:00
定休日:不定休
縁側や土間のある古民家が工房兼販売所。製作風景も見学できる。併設の資料館には県重要文化財指定の木型も。
3. 〝人の生活とともにある漆〞の魅力を、アーティストとのコラボで表現。〈関美工堂〉の「会津塗」

「漆は日常的に使ってこそ。触れた時の温かみや、使い込んだ色の美しさを知ってほしくて、カジュアルに使える会津塗を考えました。漆は、軽くて強くて、万が一割れても継いで使える。昔の人の知恵が詰まった手仕事なんです」
江戸時代から続く会津の伝統工芸・会津塗。その魅力を伝えてきた〈関美工堂〉の関昌邦さんが差し出したのは、小ぶりでかわいい〈NODATE Mug〉。屋外で行う茶事「野点(のだて)」に由来する名前からもわかる通り、アウトドアでも使える会津塗だ。
「首から下げたりバッグに付けたりしたくなるものを、と思い、サブカルチャーのアーティストにデザインを依頼しました」
そんな関さんが4年前に始めたのが、木地師(きじし)・塗師(ぬし)・蒔絵師(まきえし)といった若手漆職人の自立を応援するシェア工房。ローカルハブ〈ヒューマンハブ天寧寺倉庫〉内にあり、建物には地元の食品や漆器が並ぶショップやカフェも。多様な目的をもつ人が訪れることで、会津塗の魅力がもっと広がれば、と願っている。
住所:福島県会津若松市天寧寺町7-38
TEL:0242-27-3200
営業時間:10:00~17:00(カフェ11:00~)
定休日:無休
会津で漆器業を営む〈関美工堂〉が自社倉庫を改装。会津塗職人のシェア工房やカフェも。
4. ベコベコと頭を揺らす姿が愛くるしい、会津張り子の郷土玩具。〈野沢民芸〉の「赤べこ」

会津地方では、牛をべこと呼ぶ。約400年前、会津柳津町(やないづまち)にある福満虚空藏菩薩圓藏寺(ふくまんこくぞうぼさつえんぞうじ)の虚空蔵堂が地震で倒れた際、再建のために最後まで働き通したのが赤い牛だった。そんな伝承から生まれたのが、首をゆらゆら揺らす「赤べこ」。江戸時代から続く会津張り子の代表的なモチーフで、「忍耐強く壮健に」という願いが込められている。
「伝統工芸は、姿かたちの背景にある物語や想いとともに愛されてきた存在だと思うんです」
こう語るのは、父娘二代で張り子を作る〈野沢民芸〉の早川美奈子さん。桃色やミルク色など福島にまつわる色の「カラフルべこ」や伝統文様の「青海波(せいがいは)べこ」など、新しいデザインにも挑戦し、張り子ファンを増やしてきた。表面がなめらかで形がきれいなことも特徴。色を塗る前の段階で、表面に凸凹がないよう丁寧に磨き、貝を砕いた胡粉(ごふん)を塗って整えているそうだ。
「きれいに作られたものは、古くなっても品がいい。長くかわいがってもらえる気がします」
住所:福島県会津若松市七日町9-1
TEL:0241-45-3129
営業時間:10:00~15:30
休みは@nozawamingeiで確認
赤べこなどの郷土玩具を手作りする工房〈野沢民芸〉の直営店。店舗限定商品も。
5. 種から育てたホウキグサで編み上げる。糸の色もかわいいミニぼうき。〈ぬん|おやまかな〉の「ほうき」

「飾りたくなるほどかわいいほうきを作る職人がいる」という噂を聞いて、やってきたのは中通りの川俣町。畑を耕してホウキモロコシ(ホウキグサ)というイネ科の植物を育て、自らの手でほうきを編み上げているのが、おやまかなさんだ。「ぬん」という屋号の下、木桶職人や写真家としても活動中。10年前に栃木県の鹿沼箒(かぬまぼうき)と出合ったのを機に、ホウキグサの種を譲り受け、各地のほうき職人や農家の人々に支えられながら、オリジナルのほうきを完成させた。
種から育てたホウキグサは柔らかさとテンションの強さの両方を備え、小さな埃もスッと絡めとる。「身近に置いて毎日使うことで、ほうきのある暮らしの心地よさや、長く受け継がれてきたほうき文化を知ってほしいんです」とおやまさん。編み上げる際の糸をホウキグサの種や自然のもので手染めしたり、「貴重な材料を無駄にしたくなくて」と、ホウキグサの切れ端を用いた小ぼうきを作ったり、隅々にまで愛情が込もっている。
住所:福島県須賀川市中町39
TEL:090-9511-0467
営業時間:13:00~20:00(営業は第2土~月、第4土~月)
心地いい暮らしを作る家具や小物を扱うインテリアの店。「ぬん」のほうきの形や糸の色の注文も可能。
















