この家の猫になりたい。奄美の“猫の楽園ハウス”

この家の猫になりたい。奄美の“猫の楽園ハウス”
この家の猫になりたい。奄美の“猫の楽園ハウス”
CULTURE 2025.12.17
「猫のために建てられたおうち」が奄美にあると聞きつけ、現地取材へ。保護猫まで含めると、つねに6匹ほどの猫たちと同居する小椋崇弘さん一家。猫が快適に過ごすための工夫を詰め込んだら、柱や梁を猫たちが自由に行き来する、猫にも猫好きにも楽園そのものの家ができました。
photo_Yoshikazu Shiraki illustration_Ryoko Yamasaki(inforab.) text_Sawako Akune
profile
小椋崇弘
会社員

ネルさん(13歳/♂)、ミルさん(8歳/♂)、シルクさん(2歳/♀)、さなえさん(2歳/♀)、ムニエルさん(2ヶ月/♀)、シイラさん(2ヶ月/♀)

考え得るかぎりの“猫の居場所”を取り入れる。

奄美の“猫の楽園ハウス”
土間スペースをリビングダイニングに引き込んだプランは空間に広がりを与え、猫の居場所も増えた。大屋根の下に家族全員が集まる。窓辺にいるのは最年長のネルさん。

麻縄をぐるぐると巻き付けた柱を軽快に走り上がって、その先の棚板へ飛び移るとトトトと屋根裏へ消える猫チャン。壁に開けた猫穴からひょこっと連れ立って出てくるきょうだいの子猫チャン。かと思えば土間下の空間で物言いたげに香箱座りしている猫チャン……!! 猫好きならば悶絶するような光景が同時多発的に起き続けるこの家は、小椋崇弘さんと結さんの夫妻と6歳になる朱峯ちゃんの住まい。元々複数の猫と暮らしていたこと、動物病院で働く結さんの仕事柄、猫をはじめとする保護動物を一時受け入れる期間があることから、動物たちと無理なく同居できる住まいが欲しかったそう。緑深い山とその間を抜ける小川、近くには海と、自然に恵まれた集落に購入した土地に、奄美拠点の建築家・小野良輔さんの設計でこちらの家を建てた。

奄美の“猫の楽園ハウス”
勾配がきゅっと変わる三角屋根と濃赤の壁がシンボリックな外観。台風の多い奄美大島の風土に合う、風を切る低めの斜め屋根が、集落の中で目印になる佇まいを作る。

塗料にベンガラを混ぜた濃赤の壁と、三角のとんがり屋根が印象的な一軒は、通常は玄関などにある土間を、家の中央部分に引き込んだ正方形のプラン。この土間を取り囲むようにリビングダイニングを、壁やドアを隔てて水回りや寝室を配している。面白いのは、20坪弱の正方形の空間の上部外周と屋根の間に、天井の低いロフト空間を設けていること。人間にとっては物置としても活用できるこの空間は、猫たちにとっては格好の居場所。壁に複数設けたキャットウォークや、リビングダイニングの柱や梁など、“猫なら行ける”ロフトへの動線がたっぷりと用意されていて、今は6匹いる小椋家の猫たちが、自由自在に闊歩する。

人間には20坪、猫たちにはロフトも含め30坪の家。たくさんの居場所を気ままに選びながら誰もが居心地よく暮らしている。

猫と人間が居心地よく共存する一軒。

奄美の“猫の楽園ハウス”

土間スペースをぐるりと囲むような平屋に、広々としたロフトがつくつくり。

※猫の年齢などの情報は、2025年10月時点のものです。

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