俳優・佐藤 菫さん「制約の中にある自由に、挑戦心を刺激されて。」
さとう・すみれ／1995年、東京都出身。2014年にモデルデビュー、2018年より俳優活動をスタート。出演作に、映画『リバーズ・エッジ』、ドラマ『階段下のゴッホ』など。アーティストとしてはSUMIRE名義で活動。絵画個展の開催やアパレルコラボなど、幅広く活躍中。
「制約の中にある自由に、挑戦心を刺激されて。」
約2年前、〈渋谷PARCO〉でのライブペイント中に偶然居合わせた絵本作家・長田真作さんとの出会いから、初めての絵本制作がスタートした。長田さんの紡いだ物語に合わせて絵を描くという作業は未知の領域だった。
「長田さんから届いた文章には、私のために脚本のト書きのような補足が添えられていました。
ここは朝ですとか、このシーンはこんなイメージ……と。それを自分なりに汲み取って、制作が始まってから完成まで約1年かけて描き上げた一冊です」
試行錯誤の連続だった。最も苦心したのは、限られた枠の中で最大限の表現をすること。
「主人公リリアの存在感を伝えるため、キャラクターのサイズ感、構図で伝わるように、何度も練り直しました。私は絵の具を混ぜて色を作っていくので、全ページで同じ色を保つことも苦労のひとつ。同時に、枠、サイズ、締切―制約の中で自分がどれだけできるんだろう？その挑戦にワクワクしました」
動物たちのふかふかした質感、木目の細密な描写がある中で、菫さんがこだわったのは、〝リリアの髪の毛〞。
「裏テーマとして、リリアの髪の毛は感情に呼応して変化させています。髪が生きているような躍動感が伝わるとうれしい」
役者業と絵を描くこと。二つの表現活動は、彼女にとって明確に異なる意味を持つ。
「役者のときは自分が表に立つので自分を大事にするけれど、絵を描くとき私は裏方なので、作品をいかに輝かせるか。自分が主役ではない創作には新鮮で特別な楽しさがありました」
絵本というジャンルには特別な力がある、と信じている。
「絵本の世界は、いい意味でずっと同じ時間が流れている気がして。時代が変わっても色褪せず、世代を超えて読み継がれていく。分け隔てなく〝共通の話題〞になるってすごいこと。音楽でありがちな『この曲、知らないの？』みたいな変なマウントや気まずさは絵本にはなくて、みんなに等しく優しい。また、いつか絵本に携わるのが目標のひとつになりました」
記憶のなかの旅・食
「この秋に、親戚が住む岡山へ3泊4日の旅行へ。叔母が連れて行ってくれた丘の上にあるカフェで飲んだコーヒー、その道のりで立ち寄ったおいしいうどん屋は景色も含めて素晴らしかった。子供の頃から大好きなタコス料理にも行けて、目一杯“食”を満喫しました」
文：長田真作、絵：SUMIRE／もみじの落ち葉
から生まれた“こびと”リリアは、サルビアの花畑を探す中、仲間からはぐれてしまう。タカに襲われたところをモモンガに救われ、大樹の中の動物を癒す秘密の診療所へ導かれる。
1,650円（303BOOKS）
サイズ：横210×縦200㎜ ページ数：32ページ
No. 1251
