ピカソを筆頭に50点以上が日本初出品。 記憶や感情を刺激する作品との出会いを求めて。キュビスム展を女優・夏子さんと巡る。
およそ50年ぶりとなる本格的なキュビスムの展覧会『キュビスム展―美の革命 ピカソ、ブラックからドローネー、シャガールへ』が、2024年1月28日(日)まで国立西洋美術館で開催されている。会場にはキュビスムの生みの親、パブロ・ピカソとジョルジュ・ブラックはもとより、主要作家約40人による絵画を中心とした約140点の作品が一堂に会する。趣味は「美術館巡り」という女優・夏子さんとキュビスムの変遷を辿りながら独特な魅力を放つ世界観に浸ってみた。(PR/日本経済新聞社)
由来は「キューブ(立方体)」から。
それまでの伝統な手法であった遠近法や陰影法から逸脱し、幾何学的な形によって画面を構成するキュビスム。その名は、1908年にブラックの風景画が「キューブ(立方体)」と評されたことに由来する。ピカソとブラック、ふたりが生み出した斬新な画風は「芸術の大革命」とも呼ばれ、西洋美術の歴史にかつてないほど大きなインパクトをもたらすこととなる。
当時の人々の間でも激しい論争を巻き起こした芸術運動だけに、初心者はやや難しく感じてしまうかもしれない。写実画よりも抽象画を好むという夏子さんは、「具体的な絵ではないので、たしかにパッと見ただけだと『なにが描かれているんだろう…』ってなっちゃいますよね。だけど、色彩だったり形だったり、そういうイメージで捉えてもいいと思います」とキュビスムの楽しみ方を教えてくれた。
『Hanako Web』でちいさな美術館を巡る様子を連載していたこともある、夏子さん。そもそも、美術館巡りにハマるきっかけはなんだったのか。
「もともと父が美術館好きで、よく連れていってもらっていたんです。自分でも積極的に巡るようになったキッカケは、中学生か高校生くらいのときに行った『ゴッホ展』でした。ゴーギャンがゴッホの訃報を聞いて描いた『ひまわり』が展示してあったんですが、ひまわりを挿している花瓶が黒く塗りつぶしてあって。それを見たときに、ボロボロって涙が出てきて。『ああ、絵を見ることでこんなふうに感情が揺さぶられることもあるんだ』って知りました」
作品を通して、いろんなことを思い出す。
今回の展覧会では、「キュビスム以前―その源泉」から「キュビスム以後」まで、14のセクションを通じてキュビスムの変遷を辿ることができる。なかでも、夏子さんが心惹かれたのは13番目の「キュビスムと第一次世界大戦」だった。
「特定の絵が好きというよりも、“第一次世界大戦”っていう文字がふっと入ってきて。ちょうど、10月7日から始まった舞台が第一次世界大戦に巻き込まれた作家の話なので。舞台を通して歴史に触れているタイミングだからこそ、その時代を経て残った作品なんだなと思ったら、より引き込まれました。自分が演じる時代の作品に触れることは、同じ時代の空気を吸っていた人たちに触れることでもあるから、とてもいい経験をさせてもらいました。困難な情勢のなかでも創作を続けた人がいて、その過程でもさらなる進化をし続けている。それって、本当にすごいことですよね」
夏子さんにとって、美術鑑賞は「どこか匂いにも似ていて、記憶を見ているような、作品を通していろんなことを思い出す」行為でもあるのだとか。「だけど、私は美術に詳しいわけではないですから」とも言うのだが、女優として創作に携わる立場だからこそ、記憶や感情を刺激する作品に出会うと強い眼差しで見入ってしまう。その姿が印象的だった。
事前に鑑賞希望リストを挙げてもらっていたが、資料と実物でとくに印象が異なる作品はどれだったのだろう。その問いに迷わず出てきたのは、ジャン・メッツァンジェの『自転車乗り』。
「すごい疾走感があってびっくりしました。作品としてもキャッチーだし、スタジアムにいる観客も具体的に描かれているわけじゃないのに、熱狂する様子が伝わってくるんです。これは生で見ないとわからなかったことですね」
「なんとなく、この絵が好き」でもいい。
ピカソは知っているけど、キュビスムをどう見ていいかわからない。そんな人は多いかもしれない。
「私も直感で楽しんだり、絵からなにかをもらったりするために美術館に足を運んでいます。そのなかでも、キュビスムはより感じやすいジャンルでした。だから、『なんとなく、この絵が好き』くらいでもいいと思いますよ」
キュビスムをはじめ、セザンヌやルソーといった著名な画家の作品や「キュビスム以前―その源泉」と題されたセクションではアフリカの美術品が展示されるなど、キュビスムに影響を与えた幅広い作品に触れられるのも本展の魅力。また、国立西洋美術館のある上野エリアには展示を見終わったあとにセットでまわりたいスポットも数多くある。
「美術館巡りって、意外と体力を使うんですよね。私も終わったあとは不忍池に行ったり、喫茶店に行ったりします。そこで、ふうって整理する時間も楽しいんです」
今回、人気イラストレーター・WALNUTさんによるオリジナルステッカー付きチケットや、フォトスポットも用意されている。オリジナルグッズも豊富で、ミュージアムショップを覗く時間も長くなりそう。芸術の秋に「芸術の大革命」に触れてみるのもいいかも。
INFORMATION
『パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展―美の革命 ピカソ、ブラックからドローネー、シャガールへ』
会期:2023年10月3日(火)〜2024年1月28日(日)
会場:国立西洋美術館
住所:東京都台東区上野公園7-7
時間:9時30分~17時30分(毎週金・土は20時まで)
※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日 ※ただし、1月8日(月・祝)は開館
12月28日(木)~2024年1月1日(月・祝)、1月9日(火)
トップス42,900円、キャミトップス53,900円、スカート53,900円(全てエボニー、問い合わせ先:info@ebony00.com)、リング37,400円(リューク、問い合わせ先:info@rieuk.com)、シューズ23,980円(ARTESANOS|ローズ バッド ルミネエスト新宿店、問い合わせ先:TEL:03-5368-2767)