言いたいコト、書きたいコトバ…混じり気ナシ! 弘中綾香の「純度100%」~第108回~言いたいコト、書きたいコトバ…混じり気ナシ! 弘中綾香の「純度100%」~第108回~

言いたいコト、書きたいコトバ…混じり気ナシ! 言いたいコト、書きたいコトバ…混じり気ナシ! 弘中綾香の「純度100%」~第108回~

LEARN 2023.09.22

ひろなかあやか…勤務地、六本木。職業、アナウンサー。テレビという華やかな世界に身を置き、日々働きながら感じる喜怒哀楽の数々を、自分自身の言葉で書き綴る本連載。

photo : Yasutomo Sampei styling : Kaori Kawasaki hair&make : Miyuki Nakamura

「食べさせないと」

最近、母が「これパパに食べさせないと」とよく言っていたことを思い出す。「これ」の部分はその時々で違う。ワカメだったり、ブロッコリースプラウトだったり、大麦若葉だったり、乳酸菌のドリンクだったり。正直なところ、そこに一貫性や確固たる背景があるわけではなく、テレビで見たとか口コミで聞いたであろう健康に良いとされるものを母なりにキャッチして、スーパーで色々と買ってきては台所でそんなふうに言っていた。色々とブームがあった中でも長く続いて出されていたのは、小松菜などの生野菜と季節の果物をこれでもかとふんだんにブレンダーに入れて撹拌し、スムージーにして(ここまではものすごくおいしそうだし、実際おいしい)、そこにこれでもかと、いわゆる自然食品と呼ばれる類であろうきな粉風の粉末やどろどろとしたシロップ?みたいなものを入れて、綺麗な緑から何だかよく分からない色になったものを父に出していた(この状態になったものは味見したことがない)。

その光景を覚えているということは、もう私は学生か何かの頃である。となると父はバリバリの40代か50代かそこらで、社会人としてはそれなりのキャリアがあり、部下がいて、娘も2人いるような分別のある大人の男である。そんな人に向かって「食べさせないと」って。パパ子どもじゃないんだから、食べたいもの食べるでしょ。と心の中でツッコミを入れていたことを含めて、よく思い出すシーンである。父がそれを言われるがまま黙って飲んでいたことも。

なんでそんなことを急に思い出したのか。私もいま夫に対して、同じことをして、同じように思っているからである。私にもこんなことを思う瞬間が来るのかと、びっくりした。スーパーで「体脂肪が気になる方に」の売り文句が目に飛び込んで来たら「あ、買って帰ろうかな」と思う。夫の好きな納豆を見つければ、「これ出してあげないと」と思う。父と同じように外食が多いことを気遣って、家でごはんを食べるときは「野菜をとにかく沢山食べさせないと」と思う。

「食べさせないと」には家族の健康を願う気持ちが込められている、といったら陳腐な表現であるが、それも間違いではない。加えて一家の台所番としての気概も含まれている。「パパ(夫)の健康は私が守らないと」という心意気。別に頼まれたわけではないけれど、相手のために自分に出来ることは冷蔵庫の中身をいつも絶やさず、体に良いと信じるものを(有無を言わせず)食べさせることなのだという責任感である。

相手を思う気持ちをワイシャツのアイロンがけに込める人もいるだろうし、ふとしたタイミングのプレゼントに込める人もいるだろう。この努力が実を結ぶのかは正直よく分からないし、相手方に伝わっているのかも怪しいけれども、自分の出来る範囲で気遣えることをやろうという気持ちが家族にとって大事なんだろうと思う。二人家族になってまだ1年の出来たてほやほやの私たち。これから3人になってどんな家族になっていくのか。子どもに対しては、もっとダイレクトな意味の「食べさせないと」でてんやわんやになるに違いない。バタバタ&オロオロの日々が待っているに違いないけれど、それはそれで楽しめたら…いいな(自信はない)。

【弘中のひとりごと】
妊娠後期、腰痛に悩まされています…。ひい~

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