【第9回】イタリア(ベネチア、アレッサンドリア、ミラノ) 写真家高野ユリカの「だれかの住む街と菓子」/イタリアの菓子、全部好き!
2023年春のヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展リサーチのため、プロジェクトのメンバーでイタリアの数都市をまわることになった。
久しぶりの渡伊、初めてのベネチア!
写真と文 高野ユリカイタリアのジェラート
飛行機を乗り継いで18時間、空港から船に乗って上陸。街中に水路が張り巡らされているのも、海を渡るゴンドラも、綺麗すぎる夕暮れも、街全体で“ベネチア”という演技をしているのかな? と思うくらい、全部が作り物みたいで笑ってしまうね。でもどこか既視感がある。あぁ、ディズニーランドだ。こんな嘘みたいな街、存在するんだな。広場を歩いていると人が思いがけないところに座って休憩している。井戸だ。
そして井戸に座って食べているのは<Rosa salva>のジェラート。ピスタチオとショコラのダブルをカップで注文する。濃厚でクリーミーな本場のおいしさ。入れ替わり立ち替わり、みんなが広場の井戸の周りに集まってくる、井戸と菓子屋が作り出す愛すべき風景。イタリアはジェラートの国なので、行く先々でおいしいジェラート屋さんがすぐに見つかる。
アレッサンドリアの老舗<Gelateria Cercenà di Marsaglia Stefania>もずっと昔から街の人に愛されるジェラート屋さん。レトロな黄色のタイルを背景に、お店のお母さんがちゃきちゃきと動き回って「どれ気になる?」って小さいスプーンに試食をすくって食べさせようとしてくれるのが本当に可愛い。店内のカラーに合わせてレモン味を食べる。爽やかに鼻に抜けていくレモンの香りと少しサクサクした食感。ジェラートって味によって全然食感が変わるから、ついダブルにしたくなる罠にはまりがち。
<FANCIOT>のレモンタルト
アレッサンドリアでもオープンしたばかりの新しいお店<FANCIOT>は地元の若者たちが立ち上げた人気店。お揃いのブルーとブラウンのバイカラーのエプロンをしたかっこいい店員さんたち。ツンと立ったメレンゲがのっかったレモンタルトとイタリア伝統菓子カンノーリ。筒状のサクッとした生地にピスタチオクリームがたっぷり入っていて、小口にピスタチオがトッピングされていて食感も楽しい! 一口サイズなのでひょいと食べれてしまう。
調べていたらカンノーリは映画のゴッドファーザーにも毎回出てくるお菓子らしいけれど、私はまだゴッドファーザーをきちんと観たことがない、、マフィアも好物のお菓子っていいな…。(作中では毒殺に使われるらしいです)
<Princi>のティラミス
ミラノのDuomoの近くには、何を食べてもほっぺたが落ちてしまうおいしいパン屋さん<Princi>があって、行くときは必ず奥のカウンター席に座って工房で粉をひく職人さんを眺めながら朝ごはんを食べるのだけれど、ずっと
食べてみたいと思っていたティラミス(すごい量なので、本当はシェアしたり持ち帰って食べる用なのかも…)を今回は堂々と一人で食べた。とにかく大きいトレーの中から、その場で雑に正方形に切り取られ、皿に盛られる贅沢なティラミス。クリームとスポンジの比率に好みが出ると思うけれど、私はほぼクリームだけみたいな、でも弾力があるティラミスが好きなので、<Princi>のティラミスは本当に理想かもしれないな。その上にかかっているココアパウダーも、フって吹いたら飛んでいくような感じ。あぁ、おいしい…全部溶けてなくなる。