「正直な人」| 「山崎怜奈の『言葉のおすそわけ』」第63回
「正直な人」
『ABEMA Prime』の生放送が終わって夜遅く帰宅した日、いつか暇ができたらやろうと思って購入したLEGOの箱が目に留まってしまい、つい出来心で組み立て始めてしまった。また別の日、トークイベントを2回やってから『Mr.サンデー』に出演し、頭も体もくたくたの状況で帰宅したというのに、そこから大河ドラマの続きを見始めてしまった。忙しいときほど“別に今やらなくても良いこと“に気が向いてしまうのは、単なる現実逃避ではなく、頭と体しか使っていないとバランスが悪いから、心を動かしたいんじゃないかと思っている。
ほかにも、私は仕事が立て込んでいる時期ほど、仕事以外の理由で人に会いたくなる。大人数で集まるよりも2人が好き、多くても4人くらいがベスト。今年は特に新しく人と知り合う機会が増えて、一緒にごはんやお酒を楽しみながら少し気の緩んだ状態で話すうちに、思考が穏やかに整理されていった。だからこれまでは「頑張り続けるモチベーションは?」と聞かれてもモニョモニョとしか返事ができなかったけど、最近になって「人に出会うことです」と答えるようになった。とりわけ心地よく会話できる人、具体的に言うと“自分が正直でいられる人”に出会うと、まっすぐにまた会いたいと伝え、ポジティブな反応が返ってきたら早めに日程調整を持ちかけている。仕事でも恋愛でも友人でも、誰と一緒にいたいか考えるとき、好き嫌いではなく、自分が正直でいられるかどうかで決めるのは、案外良い基準のような気がしている。
自分も正直でありたいし、正直な人が好きだ。それは何でもかんでも包み隠さず、思ったことを全部口にしてしまう人のことではない。身勝手なわがままを通して周りをコントロールしようとする人でもない。私が好きな“正直な人“とは、新たな知見に耳を傾ける柔軟さを持ちつつ、他人にどう思われるかによって自分の本音を歪めない人のことだ。それはつまり、人に嘘をつかないことの手前として、自分に嘘をつかないことでもあると思う。誰かの意見に乗っかってそれが自分の意見だと思い込んだ方が気楽かもしれないけれど、結局は言行一致のために必要な努力が大きすぎるし、相手に合わせて思ってもないことを言って嫌われるのは本末転倒すぎる。
今年の5月、小倉智昭さんが私の番組(『ダレハナ』)に出演してくださったとき、「みんな『こういう感じじゃないかな?』って勝手に配慮して、自分のバランスで物事を判断しちゃうけど、あまり空気を読んではダメ。特に若い人たちは自分の考えていることを積極的に発言した方が僕はいいと思うよ」と言っていた。「ただ、批判されても大丈夫なように自分を構築しておくことが大事」と続けていたが、その構築手段は自分で考えろと笑っていた。
「(病気の治療中で)何かあっちゃいけないから仕事もたくさん受けられないんだけど、今日は、怜奈ちゃんの番組だから受けたの。一度話してみたいなと思っていたから」というのが、小倉さんとの初めての会話だった。それから何度か小倉さんは別の仕事でTOKYO FMにいらしており、私が生放送をやっているスタジオにも立ち寄っては、「朝の番組(『ウェークアップ』)の方はどう?」「見てるよ、あなたはそのままブレずにいれば大丈夫」と言葉をかけてくださった。出会ったのが最近すぎて、まだまだお聞きしたいことはたくさんありましたが、会いに来てくださり本当にうれしかったです。心から感謝しています。自分に正直に、愛と信念を持ち、学ぶことをやめず、頑張ります。どうか、ゆっくり休んでください。
オールインワン 82,500円、チェーンアームネックレス 45,100円(共にフミエタナカ | ドール■03-4361-8240)/スカーフ 19,800円(ビリティス・ディセッタン|ビリティス■03-3403-0320)/サンダル 49,500円(マービンポンティアックシャツメイカーズ|オーバリバー info@overriver.com)
本連載をまとめた初の書籍『山崎怜奈の言葉のおすそわけ』が絶賛発売中!
ご購入はこちらから。