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伝えたかった、言葉たち。 山崎怜奈の「言葉のおすそわけ」第42回

LEARN 2023.05.05

乃木坂46を卒業し、ラジオパーソナリティ、タレント、そして、ひとりの大人として新たな一歩を踏み出した山崎怜奈さんが、心にあたためていた小さな気づきや、覚えておきたいこと、ラジオでは伝えきれなかったエピソードなどを自由に綴ります。

photo : Chihiro Tagata styling : Chie Hosonuma hair&make : Ayumi Nakaitsu

「思い立ったが吉日旅inイギリス」

今年のゴールデンウィーク、皆様いかがお過ごしでしょうか。休日と祝日の間に挟まれた5月1日と2日を休みにすると、4月29日から最長9連休。しかし個人的には、祝日は99.9%お仕事です。ゴールデンだろうがシルバーだろうが関係ない。ミッキーマウスの繁忙期は私の繁忙期でもあるのだ、彼らも頑張っているのだからと、自らを鼓舞するのが毎年のお決まり。メディア業界だけでなく、接客業やエッセンシャルワーカーの方々も右に同じでしょう。もう本当にお疲れさまです。くれぐれもご自愛ください。

ただ世間の連休期間は旅先への道中でカーラジオを聴いてくださる方も多いので、昼帯のパーソナリティ的にはありがたい気持ちもある。半蔵門のスタジオから舞浜のディズニーランドに思いを馳せて、昼から『ジャンボリミッキー!』でもかけたいところ。渋滞中に機嫌を損ねたお子様たちにも、これで少しでも元気を取り戻していただきたい。もちろん私は全力で踊りますよ。ラジオなので、誠に残念ながらその姿を皆様にお見せすることは叶いませんが。いやあ本当に残念です。

冗談は程々に、今日お送りするのはヨーロッパ放浪の拠点でもあったロンドン編。というのも最近、私は人生で初めて映画『ハリー・ポッター』シリーズを観た。ファンからしたら気が知れないだろうけど、実は一作も観ないまま訪英してしまい、帰国後の勢いで『賢者の石』と『秘密の部屋』を観て、胸が熱くなっている。ロンドン動物園の爬虫類館も「最近行ったばかりのあの場所が映画に出ている!!」という、作品の聖地に対する一般的な向き合い方とは真逆の体験をした。友人に連れられて何となく入ってしまったけれど、もし友人が私を喜ばせようと思って連れてきてくれていたのだとすると申し訳ない。でも私にとっては、ハリーが特殊能力で会話していた大蛇よりも、友人が解説してくれた「クロコダイルとアリゲーターの違い」の方が印象深い。あと、ロンドン動物園はおよそ200年前に科学的な研究目的を持って開園した由緒正しい動物園であるにもかかわらず、ライオン、トラ、ゴリラといった猛獣たちが揃いも揃って来園者にお尻を向けて爆睡していたのも面白かった。いやむしろこれが大英帝国の貫禄と言うべきだろうか。

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次に向かったのは大英博物館。世界四大文明はもとより、世界各国の歴史的遺物や美術品など、歴史的・文化的に価値のある展示が、常設だけでも15万点を超える。ちゃんと知ろうと思ったら丸一日かけても観きれないけれど、教科書にも必ず登場する世界の至宝に一度にお目にかかれると思うとドキドキする。世界中のものがひとつの建物に集まっているということは、誰がどこから来ても自分のルーツがあるということでもある。これらを保管・管理してきた文化行政もすごい。

しかし留意すべきなのは、戦争や動乱のどさくさに紛れてジャイアン方式で収拾した品々も、我が物顔で置かれているということ(すべてではないにせよ)。もちろん略奪品の返還は世界各国から求められている。だがイギリスをはじめとする欧州各国には「拾ったモノは自分のモノ」という植民地法があり、国立博物館が保有する文化財が盗品であっても手放さないのだ。法の改正はもちろん必要。エジプトにロゼッタストーンが、ギリシャにパルテノン神殿の大理石彫刻の一部が、イースター島にモアイ像が、返還される日は来るのだろうか。この規模の展示品を入場無料で見せてもらいながら「でもこれって……」と思い始めると、どういう気持ちで観たらいいのか分からなくなってしまった。

ロンドンには2日ほど滞在したので、バッキンガム宮殿、ビッグ・ベン、ナショナル・ギャラリー、タワーブリッジ、バラマーケットなど、有名な観光地はいくつか訪れたが、文字に起こすほど記憶に残ったのがロンドン動物園と大英博物館になるとは当初思っていなかった。ほかに何かあったかといえば、最終日の夜。市街地から離れたホテルに向かう電車で、3歳くらいの女の子がトコトコと近づいてきた。ジャンパーの中に半分入れ込むような形で抱えたユニコーンのぬいぐるみをこちらに向けて、くりくりおめめで微笑んでくる。初めてずくめで刺激的すぎる今回のヨーロッパ放浪で、唯一の癒しと言っていい、絵に描いたような天使ちゃんだった。

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