言いたいコト、書きたいコトバ…混じり気ナシ! 言いたいコト、書きたいコトバ…混じり気ナシ! 弘中綾香の「純度100%」~第92回~
ひろなかあやか…勤務地、六本木。職業、アナウンサー。テレビという華やかな世界に身を置き、日々働きながら感じる喜怒哀楽の数々を、自分自身の言葉で書き綴る本連載。
photo : Yasutomo Sampei styling : Chie Hosonuma hair&make : Aya Murakami「ベビーシッター・前編」
その日は帰宅すると、頭の後ろの方がジンジンと響くように痛かった。そういえば帰りの電車から何かに後頭部を引っ張られているかのような感覚がした。ソファに腰かけると、静かなことがとても気持ちいい。人出の多さに面食らってしまったのかもしれない。昨日までの仕事の疲れ? いや、慣れないことをしたからだろう。とりあえず横になり、目を閉じて深呼吸を繰り返す。
今日一日を思い出してみる。といっても答えはシンプルで、何かコレといったことをしたわけではない。いつもより早く起きて電車に乗り、姉の家へ行き、朝8時から夕方に姉が帰宅するまで、ベビーシッターをしていた。それだけである。ああ、あの二人と別れたあとだから、静かなことがこんなに気持ちいいのか。
姉から相談というオファーを受けたのは2カ月くらい前。私と違いどんなことにも慎重派な姉は(はたまた私への信用度が低いのか)、ベビーシッターの依頼も「〇月〇日〇時から」と細かく丁寧に、仕事ばりの進捗頻度で伝えてくる。近くに住んでいない私はいざという時の機動力に欠けるため、こんな時にしか手伝うことが出来ない。その日は頼りの両親も出かけてしまうということで、二つ返事で引き受けたのだった。
ちなみに言っておくと、6歳の甥と4歳の姪は本当に目に入れても痛くないほど可愛いし、私はこの二人が大好きだし、間違いなく、とてつもなく、いい子たちだ。叔母眼鏡をかけなくても、こんなに聞き分けのいい子どもっているんだっけ?というくらいお利口さん。きょうだいで仲も良くて、私の前ではダダをこねたことも泣き叫んだことも一度もない。なのに、この疲れ具合。どうしたもんだか。
朝8時に姉の家に着くと、目をランランと輝かせた二人がもう着替えも朝ごはんも終えてスタンバイしていた。対する私は行きの電車でも寝かけたくらい、まだ頭も体も起きていない。玄関先で姉が「何て言うんだっけ?」と二人に水を向けると、「きょうはよろしくおねがいします」と声を揃えて言ってくれた。その後バタバタと姉が出ていくと、ここからが本番である。まず10時までが一区切り。というのは、二人の大好きな大型商業施設が開店するのが10時なのだ。それまで家で時間を潰し、とりあえずそこへ行って遊ばせるというのが姉の教えてくれた作戦だった。
その前にやるべきことは終わらせておこうと、公文の宿題をまずやらせる。とにかく褒めて褒めて気分を乗せるというのが叔母流なので、ボキャブラリーをフル稼働させて褒めちぎる。どうにかプリントを終わらせて、そこからお絵描きやカルタをしたり、プラレールで電車の名前を教わったり(何両の何系とかを逐一教えてくれるのだけれど、まったく頭に入ってこない…何度も聞いてしまう…ごめんよ…)、ポケモンの名前を教えてもらったりして(基本的にすべて教えてもらうスタンスで挑んでいる)時間を使う。アニメや何かを見ても良いのだけれど、預かったのにコミュニケーションを取らないのはなんとなく罪悪感があるのでやめておいた。二人は2歳離れているので、成長の差もあるし、性別の違いもあるし、一緒に遊べるおもちゃというのがあるようでなくて、同時に二人の相手をする大変さを知った。上の子のパズルに付き合うと、下の子が難しくてつまらなそうにするし。早く○○(商業施設)に行きたいようというリクエストを何回かなだめて、どうにか10時を迎えた。
【弘中のひとりごと】
もうすでに自分への誕プレは買い終わりました(笑)。
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