『#山崎怜奈トークライブ「信頼できない語り手」』| 「山崎怜奈の『言葉のおすそわけ』」第78回
一人喋りのトークライブ『信頼できない語り手』の初演が幕を下ろした。90分間ノンストップ、ノンフィクション、マイク一本で話し続けるスタンダップ形式。舞台から一度もはけない。ほかの演者も出てこない。漫才でも漫談でもない。私がやろうとしたことは、トークライブ、という言葉が一番しっくりくる。
なぜ始めようと思ったか。二十代のうちに、どこでもできる芸を身につけ始めたかったからだ。

「舞台に立って人前で喋る」という粗い解像度で見れば、その機会は年間で数十本ある。企業や団体が主催しているイベントにゲストとして呼んでいただくほか、番組に紐付いたイベントにも定期的に出演している。さらにそのうちの数本は冠番組の自分が座長として関わっているので、ただ楽しく出演するだけでは終われない。どんなに本放送を楽しみにしている人がいたとしても、局やスポンサーが納得感を持ちながら続けていけるようにマネタイズしていく必要があるからだ。席がちゃんと埋まっていると安心するし、次第に規模が大きくなっていることに達成感もやり甲斐も得てきた。
しかし、始まりあれば終わりあり。何らかの不可抗力で番組が終われば、残念だがイベントもできなくなる。何かに紐付いたイベントというのはそういうもの。今ある居場所を大切にしながら、自分の人生が続き、自分が辞めると決めない限り、積み重ね続けることができる興行を持ちたい。そうして行き着いたのが、今回のトークライブだった。


今回は初演なので、自分に関係のある内容にしよう。たとえば、これまでの人生で大切にしてきたもの。小学生にして人間不信に陥り、子役引退や中学受験を経てもう一度芸能界に入り、大学卒業まで学業と両立し、働き方の変化を何度か経験してきた中で、軸としてきたものは何か。当初は明確に言語化できていなかったが、一緒に作っていった演出家さんや作家さんと喋りながら風呂敷を広げて出てきたエピソードを濾過、という工程を繰り返していった結果、「信頼」というテーマが浮かび上がった。
でも、信頼とは何なのか。何によって生まれ、何によって失われるのだろうか。史学、社会学、脳科学、あらゆる学問で「信頼」はどのように扱われてきたのだろうか。現代の政治経済や社会問題、あるいはエンタメ業界のコンテンツ作りに、「信頼」はどのように作用しているのだろうか。そういったことを、自分の人生と照らし合わせながらトークライブとして落とし込んでみることにしたのだ。
そして今回のトークライブは、最後に歌う場面が設けられていた。しかも既存の曲ではなく、シンガーソングライターのヒグチアイさんに作詞作曲をお願いし、三時間半ヒアリングしていただいた上で、今回のトークライブのためだけに提供していただいた特別な曲。ヒグチさんから送られてきた楽曲を拝聴してから、歌に美しく違和感なく入れるようなトークの導線を引いていった。


かつて曲がりなりにもプロとしてステージに立ち、何時間も歌い踊っていた人間が言うには全く説得力がないと思われるかもしれないが、私は人前で歌うことに昔から一抹の恥ずかしさがある。衣装をまとい、ステージに立ってようやく職業として割り切ることができていたが、普段はもっぱら聴く専。友人とカラオケに行ったり、自発的に道端で踊ってTikTokに載せたりしたいと思わないのは、そういうことである(それを楽しんでいる人たちのことを揶揄しているのではなく、あくまで自分が、という話)。
しかし尊敬するアーティストに作っていただいた曲を前に己の恥などもはやどうでもよく、かつてお世話になったボイストレーナーの方にレッスンを依頼。スタジオでズシッとした重さのあるマイクを持って練習し、別日に慣れないカラオケにも足を運んだ。自宅の浴室でペットボトルを持って声を響かせるのとでは訳が違う。

本番。打ち合わせを重ねて練った台本通り進行しつつ、客席の反応を見て言葉を継ぎ足したり、話す順番を入れ替えたりしながら進めていく。そう、人間は土壇場で、今の自分だからこそ出てくる言葉を出す。昼帯のラジオパーソナリティに就任したばかりの頃、坂上みきさんに「生放送は10準備したら9捨てるくらいの感じで臨んだ方がいい」と教わったことを思い出す。その場の流れを掴んで紡いでいかないと、ゲストとの会話を楽しむ余裕がなくなって窮屈になるのだ、と。


終わった後の清々しさは、いつも生放送を終える瞬間に感じる、安堵に似た感覚だった。次回以降はどんな構成になるか確定していないが、いくつかやってみて分かったことがある。まず、90分間ノンストップのスタンダップ・トークライブ+歌はストロングスタイルすぎて、1日2公演も繰り返すものではない。しかしそれをやり切ってしまった時の解放感もまた一入(ひとしお)。それから、タイトルと日時しか公開されていないのに「面白そう」と思ってチケットを買ってくださる方が想像以上にいてくださったこと。そして、年に一回は必ずやり続けたい、ライフワークが見つかったということ。
もしあなたが人前で90分好きに喋っていいと言われたら、何について語りますか?
シャツ 6,600円(フリークス ストア×フルーツオブザルーム|フリークス ストア渋谷 03-6415-7728)/スウェットパンツ5,445円、肩にかけたスウェット 4,048円(共にユナイテッドアスレ|キャップ https://united-athle.jp )/ソックス 2,860円(ワンデルング・マルコモンド|ドロワー 03-6805-0812)/ピアス 17,600円(AGU https://agu-acce.com )
本連載をまとめた初の書籍『山崎怜奈の言葉のおすそわけ』が絶賛発売中!
ご購入はこちらから。

















