「連載が再び本になります!!」| 「山崎怜奈の『言葉のおすそわけ』」第71回

この連載が始まって4年が経ち、2度目の書籍化が決まった。ウェブ連載が長く続くのは当たり前ではない。読者さんがいなかったら普通に終わる。現在やらせていただいているレギュラー番組もほとんどが3年以上続いており、ライフワークである昼のラジオ番組『山崎怜奈の誰かに話したかったこと。』に至ってはまもなく6年目。放送1,000回も間近な今、年間で100件以上オーディションを受けて箸にも棒にもかからない年もザラであった子役時代や、周りと比べてしまい長らく自信がなさそうな顔で歌い踊っていたグループ活動時代に思いを馳せる。名指しで仕事のオファーをいただいたり、拙著の発売に向かって伴走してくださる担当編集さんや校正さんがいたりする、そんな今の環境に、どれだけ感謝してもしきれない。
そもそも芸能の仕事は不安定さの中にある。自分の意思とは関係のないところで判断が下され、あらゆる不可抗力で露出の機会を失うことも少なくない。先々のスケジュールを押さえられていたとしても関係なく、終わるとなったら呆気なく終わる。別れを惜しむ機会もなく、挨拶すらできずに終わることだってある。何も言われず自分だけが呼ばれなくなっていく現実からその背景を察することもある。そういうのを覚悟の上でやっていないと心がもたない。

この連載に話を戻そう。半年に一度の挿入写真の撮影では、カメラマンさん、スタイリストさん、ヘアメイクさん、SNS担当さんなどなどいろんな人のリソースを割いていただいていることも踏まえると「は〜〜〜書けないよ〜〜〜」なんて言っていられないのだが、生意気にも筆が乗らないときはちゃんと自己嫌悪に陥って消えたくなる。以前所属していた事務所に「エッセイの連載をやってみたい」という旨の企画書を出したところから始まった連載(詳しい経緯は連載書籍化1冊目の『山崎怜奈の言葉のおすそわけ』の「おわりに」で綴っています)だが、書き始めてから4年経ってもやっぱり難しい。
文章を書くのは筋トレに近しいと思っている。何度も書いているうちに少しずつ文章の方向感覚が培われ、脳内にぼんやりと浮かんでいる記憶や感情を言語化できるようになっていく。ラジオも一括りに「言葉を扱う仕事」と言えなくもないが、性質は全く異なる。生放送中に話す内容は秒刻みの瞬発力によるものが大きいし、リスナーからのメールや作家さんによる構成、ディレクターさんによる選曲、スポンサーコーナーやCMなど様々な要素の影響を受けた上での言葉なので、自分の口から出ているとはいえ、純粋な「個」というよりも「団体芸」である。だが今お読みいただいているエッセイは違う。全て、にぎやかなスタジオからの帰宅後、もしくは現場の合間に立ち寄った喫茶店で、iPadで1文字単位で消したり足したりしながら、ひとりで黙々と紡いでいる。文筆は一旦書き切るまではたったひとりの作業、なかなかの孤独である。

それでも、読者さんからの感想をSNSで目にしたり、ほかの現場で出会った方々から直接「あの連載好きです」と言っていただけるたび、本当に、本当に書いてよかったと、思う。

前作も素晴らしい皆さんのお力をお借りして世の中に送り出すことができたが、個人的な反省点も多く見つかった。たとえば、B5判変形というサイズで作った結果、一部の書店では写真集コーナーに置かれてしまったこと。写真メインの本だと思って手に取ったお客さんに小さな文字が多くて驚かれてしまったり、すでに本のジャンルを理解している人がエッセイコーナーに探しに行ったら置いてない、というややこしい事案が散見された。ちなみに数年前に出した別の拙著では、サイズ的には読み物扱いしてもらえたものの、封入特典のしおりを付けた結果本体にシュリンク(ビニール包装)が掛かり、店頭で立ち読みできなくなってしまうという事態に。何を隠そう、私も頻繁に書店を訪れてはフィーリングで立ち読みを繰り返すことで、面白そうな本に出会ってきた人間だ。だからこそ、立ち読みからの出会いを求めて書店を訪れる人も、なるべく手に取りやすい設計の本にしたい、と常々思っていたのに。なんでもやってみないと分からない。

などという細かい学びを活かし、今回は書籍に直接挟み込む形式の特典は付けず(代わりに予約限定の特典があります!!!)、今作はエッセイ集によくある四六判で制作した結果、「文章もまあまあ載ってま〜〜〜す! 試し読みも大歓迎で〜〜〜す!」という顔をすることに成功した気がする。ちなみに、私がこれまで手に取ってきたエッセイ集はどれもイラストとテキストのみの表紙だったので、自分の姿が入ることへの戸惑いもなくはなかったが、連載時より文章の間に挟まる写真にもご好評をいただいていたので、周りの意見を尊重することにした。用意していただいた衣装やヘアメイクに対して「もっとこうしたい!」と言ったことは連載開始以来ほとんどない。今回の表紙撮影もされるがまま、なぜレースを頭から被っているのかは(そういうファッションが流行っているということ以外に)皆目見当がつかないが、スタイリストさんが似合うと思って持ってきてくださったものは何だってうれしい。

ウェブ連載がせっかく“本”という物質になってこの世に生まれ直すなら、部屋に置いておきたくなるような、本棚に並べておくだけでもテンションが上がりそうな装丁にしたかった。書店で平置きされているところにたまたま通りかかった人の目に留まるには、著者自身の知名度や熱心な宣伝、純粋な文章の面白さ、引っかかるタイトルなどのほかに、本そのものの見た目も大切だと思う。ということで、今回の装丁は数々のグッズやパッケージのグラフィックデザインも手掛けている、𦚰田あすかさんにお願いした。自分がゼロイチで書いた言葉が束となり、本の形になって普通にその辺に置いてあるのを見て、「かわいい!! 持っておきたい!!」と思えることがうれしい。

そしてまだ公開されていないが、今回はそんな2つの仕事を長きにわたり続けているジェーン・スーさんが帯にコメントを寄せてくださった。初稿への感想がそのまま帯になっていると事前に知らせてくださり、ドキドキしながらその文言を目の当たりにした途端、愛以外の何者でもなくて言葉を失った。嬉しすぎるので私だけの宝物としてそっと胸にしまっておきたいくらいなのだが、𦚰田さんが作ったかわいい装丁に、おまもりのようなスーさんの言葉を巻いてこの本を世に送り出す。鬼に金棒、虎に翼、獅子に鰭、駆け馬に鞭、私はここに「𦚰田あすかにジェーン・スー」を並べたい。

まっすぐ生きてきたがゆえに負ってきた傷と荒療治の数々を恥ずかしげもなく明かしている今作が、誰かにとっての絆創膏になったら。そんな願いを込めて送り出します。各ネット書店で予約できます、そして予約状況によって初版の数が決まるそうです。何卒よろしくお願いします!!!
ベスト57,200円(Waltz(AKIRANAKA×STUNNING LURE)|スタニンングルアー 青山店 03-6421-0933)/ブラトップ (参考価格) 45,000円(リンダ ホップ)、パンツ39,900円(フェイブル アンド フェイラー | 共にoffice.koizumi. contact@officekoizumi.com)/ピアス 19800円(バックレス|バックレス https://baqless.jp/)/サンダル79,200円(ペリーコ|アマン 03-6418-5889)/パール付きリング 31,900円、ゴールドリング 26,400円( 共にスクア info@suqua.jp)
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