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たとえばこんな東京のお正月。
クラシックと過ごす一日。今日、サントリーホールで。 |塩谷 舞
「何か豊かなものに触れて気持ちを切り替えたい。美術館で何かいい展示してないかな、映画館は……」。そんな日常の選択肢に加えて欲しいのが「コンサートホール」。クラシックといって構える必要はありません。純粋に音を楽しむのはもちろん、目を閉じてゆっくりと息を吸いながら、最近の自分のことを振り返ったり、あるいは遠くの場所や知人のことを思い出したり。ホールを出るころには心と体がふわっと軽くなる。文筆家・塩谷舞がサントリーホールで体験して綴る、「コンサートホールのある日常」(PR/サントリーホール)
写真 竹之内祐幸着付け 枝 比呂子
ヘアメイク 池田奈穂
出演・文 塩谷舞
衣装協力 THE YARD
たとえばこんな東京のお正月。文・塩谷舞
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東京はいつだって多数派の顔をしているけれど、年末年始だけはその様相が変わる。多くの人がここを離れている間、街は大都市として必要な機能を残しながらも、しんとした静寂に包まれる。私はこの時期の東京が好きだ。
いつもと違う空気が流れる都心で、人々はどう過ごしているのだろう。この街を故郷とする友人に「お正月はどうするの?」と尋ねると、「毎年家族でホテルで食事をして、それからコンサート」という答えが返ってきて驚いた。私にとってのお正月といえば、実家でお節やお雑煮を食べて、テレビを観て過ごすもの。ここ数年は帰省を控えていたこともあり、東京で過ごす機会があったのだが、それでも実家の風習を引き継いで家の中で過ごしていた。
だからお正月から街に出るだなんて想像外ではあったのだけれど、でもそうした都会的な過ごし方には、幼い頃からささやかな憧れもあったのだよな。
というのも、毎年元日に欠かさずテレビで観ているニューイヤーコンサート。音楽の都、ウィーンから世界中に生中継されているそのコンサートは、『美しく青きドナウ』などの華やかなワルツはもちろん、優雅に舞うバレリーナたち、そして客席の来場者の姿を観るのも楽しみの一つだった。「ほら、あの人お着物で来てはる」と母が客席の中に日本から来ているであろうご婦人の姿を見つける。着物でニューイヤーコンサートに参加するだなんて、夢の出来事だと思っていたけれど、どうやら都会ではそうして過ごす人もいるらしい。
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ホール近くの赤坂氷川神社は、震災や戦火を免れ今も江戸時代の姿を残す。
AM9:30
赤坂氷川神社で初詣まずは赤坂の氷川神社へ。小さな、けれども生命力の溢れた杜の中にある、とても気持ちのいい神社だ。江戸時代の姿を今も残した貴重な社殿に、来る1年の健康と平和を祈祷したい。
ラグジュアリーなホテルの印象から一転、滝の流れる静かな日本庭園でゆったり。
AM11:00
ANAインターコンチネンタルホテル東京
日本料理「雲海」でおせちをそしてコンサート前にお腹を満たしたい。「ホテルであれば新年から落ち着いた空間で食事が出来るのよ」と、東京育ちの友人からのアドバイス。ホールのすぐお隣にあるANAインターコンチネンタルホテル東京の「雲海」は、よく手入れされた日本庭園を前に、会席料理のプロフェッショナルが手塩にかけて作ったお節料理がいただける。
入り口上の壁は「響(ひびき)」をテーマにしたモザイク壁画が。
PM1:00
「キユーピー スペシャル
サントリーホール ニューイヤー・コンサート2024」を観賞そしていよいよ、サントリーホールへ。まずはクロークに荷物を預け、ドリンクコーナーでお酒を少々。ビール、ワイン、ウイスキー……選択肢が多いのはさすがサントリーというところだけれど、この日は特別なシャンパンを。
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そしてついに始まる、新年のコンサート。
シュトラウス家の楽曲を中心に、バレエやオペレッタまで楽しめるプログラム。アンコールはきっと、例年の定番のあの行進曲だ。マエストロが客席の拍手まで指揮をしてくれること間違いなし。自分が楽団の一部になれるという経験は、きっと2024年の幕開けを晴れ晴れとしたものにしてくれるだろう。(文・塩谷 舞)
音の余韻
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キユーピー スペシャル
サントリーホール ニューイヤー・コンサート 2024
ジルヴェスター・コンサート 2023
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キユーピー スペシャル
サントリーホール ニューイヤー・コンサート 2024
2024年1月1日(月・祝)、2日(火)、3日(水)
ジルヴェスター・コンサート 2023
2023年12月31日(日)
ともにウィーン・フォルクスオーパー交響楽団の演奏に、一流の歌手、バレエとウィーンの空気が楽しめるコンサート。ニューイヤー・コンサートは1988年から続く歴史あるコンサート。ジルヴェスターは陽気で優雅な名曲が流れ、年末歌謡祭のような趣が。
サントリーホール
1986年 、「世界一美しい響き」をコンセプトにヘルベルト・フォン・カラヤンら世界的指揮者や演奏家の助言を取り入れ造られた、日本を代表するコンサート専用ホール。
住所:東京都港区赤坂1-13-1
☎0570-55-0017(10:00~18:00✳︎休館日、年末年始を除く)